「ねぇ松岡くん」
「何?」
「一つだけ聞いていいかな」
「仕方ない。一つだけだぞ」
「なんで嶋野さんがここにいるのかな?」
「やっぱそこ気になる?」
「気になりすぎるし、最初入ってきたときにびっくりしすぎて言葉失ったから」
「まぁそうなるよな。ここにいる嶋野愛さんは松岡瑞樹の彼女でございます」
「ええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
「そんなリアクションになるわな」
「ねぇみっちゃん。この人誰」
「愛さんや。それはいくらなんでも中村が可哀そうだろ」
「だってみっちゃんとさくら以外のクラスメイトの名前なんて覚えてないもん」
「俺としては喜んでいいようわからんが」
ちなみにさくらは春乃桜という女子生徒のことだ
「喜んでいいし、私のことをほめてほめて」
「はいはい。よしよし」
「へへへへへへ」
会って数分で中村の嶋野愛に対する印象が180度変わりつつあるのがわかる
「嶋野さんって本当はこんな感じの女の子だったんだね」
「そうそう。俺も最初はびっくりしたんだけどな。なんたってクラスでNO1の才色兼備の完璧な女の子ってイメージもたれているからな」
「そうだね。でも学校にいる嶋野さんよりこっちの嶋野さんの方が親近感が湧いていいけどな。ただ、学校では賛否がありそうだけど」
「そこなんだよ。だから俺たちは交際していることを隠しているんだ」
「私はいってもいいんだけど」
「愛のために言っているんだけどな」
「みっちゃんが私のことを考えてくれているだけで嬉しいよ」
「ならずっと考えておくね」
「へへへっ」
「中村にはこれからこんな感じになってもらうかなって思ってる」
「こんな感じ?」
「単純な質問なんだが、今のここにいる愛と学校にいる嶋野愛に感じることはなんだ?」
「ギャップ?」
「そう!!流石。中村はギャップ萌えとかするタイプだろ?」
「そ、そんなことないし」
「隠さなくていいから。中村がブックカバーつけてライトノベル読んでるの知ってるんだから。ラノベ読んでいる奴にギャップ萌えが嫌いな奴はいない」
「断言するな」
「それは置いといて、今から10分ぐらい待っててくれないか?」
「置いとくのね...10分?わかった」
「みっちゃんが部屋に行くなら私も行く」
「なら一緒にいこうか」
2人とも部屋にいってしまった。 松岡くんと嶋野さん部屋に行ってなにしているのかな? も、もしかしてラノベ的なエロいことをしてたりするのかな? あ~だめだ。オタクはすぐにエロいことを想像してしまう。 それにしても同級生の家に初めて来たな。 学校での松岡くんの印象は俺と同じおとなしい性格の男の子っていう印象ぐらいしかなくて、今日体育のときもたまたまお互い一人だったから組むことになって、ちゃんと話をしたのも今日が初めてだ。 初めて話した日に家に呼ばれて彼女を紹介されて、すでに僕の頭と緊張感はキャパオーバーになっていた。「中村お待たせ。ちょっと時間かかってしまった」
「いいよって松岡くんなの?」
「やっぱそんなに違うんだな」
「みっちゃんかっこいいよ」
そこにいたのはいつも僕がみている同じジャンルの男の子ではなくてイケイケの嶋野さんの隣にいても遜色がないイケメンだった。
「なんか別人みたいだね」
「俺も最初は妹がちゃんとすればかっこいいって言っていたんだが、髪の毛セットしたりするのもめんどくさいから普段はしないんだが、愛と遊びに行くときかはちゃんとしないとと思って髪の毛も洋服もちゃんとしたら愛からも好評だったから妹の言っていたことは本当だったんだなと思えたんだ」
「みっちゃんはどっちもいいけど、そのかっこいいモードは私といるだけにしてね」
「うん?なんで?」
「な・ん・で・で・も」
「それでこれをみせて僕に何を伝えたかったの?」
「俺は中村にもギャップを作れないかなと思っているんだ。これみたらわかるように髪の毛と洋服をちゃんとするだけで人間は印象も見た目もガラッと変わることができるんだ。幸いここには髪の毛のセットが得意な俺とファッションセンスが抜群な愛がいるから。中村にギャップを作ってもらう」
「なんでギャップ?」
「今日言ったように3人組に対して俺がやめてやれっていってもなんて効力はないし。むしろ仲間を連れてきたことで状況が悪化する可能性すらあると思う。あくまでこれは中村の問題であって第三者が解決できる問題ではないと思うんだ。もし第三者に頼むとしたら先生や警察などに介入してもらうことになるかもしれないが、俺たちみたいな陰キャはそういった大ごとは嫌いだろ?」
「確かに大ごとにはしたくないかな」
「なら中村の問題は中村が解決するしかないんだ」
「それがギャップ?」
「そう!!いきなり性格は変えることができないし、マッチョにはなれないけど見た目は変えることができるだろ。まずは今の弱そうな雰囲気を変えるところから始めようと思う」
「なるほど」
「これが解決に繋がるかはわからない。まず弱い見た目を変えてみないか」
これが解決につながるのかは実際わからない。ただ、俺も経験があるんだが見た目が変われば自身がつく。
そして何よりも強いやつは弱いやつをいじめる傾向がある。 強いやつが強いやつをいじめることはないし、弱いやつが弱いやつをいじめることはない。 だから中村が少しでも強くなって強者の差をできるだけ小さくしてやることが今の俺にできることだ。 俺の言葉を聞き終えるとは中村は少し考え込むとすぐに顔をあげた。「うん。頑張ってみるよ」
中村の目が少し輝いたように見えた。
やっぱり中村と俺は同じ人種なんだ。 殻は分厚いけど、本当はその殻を破りたいと思っているところがある。 あとは誰かが背中を押すだけ。 今回はその役目をおれがこなすだけだ。土曜日のお昼。 俺と愛と敬都と春乃さんはバスケットゴールがある近所の公園にきていた。 目的は愛の球技大会に向けての練習だ。 球技大会でなんで練習?と思う人もいるかもしれない。 あれは意識高い団結力のあるクラスの人たちがすることだし、かっこいいところを見せたくて練習している男子もいるかもしれない。 俺と敬都みたいな陰キャポジションの人間が球技大会では活躍よりも目立ちたくないが勝ってしまう。 むしろいつの間にかいなくなっていても気づかれないぐらいの存在感でいいと思っている。 しかし、才色兼備の完璧な女の子というイメージを持たれている嶋野愛はどうだろうか。 勝手に刷り込まれているイメージかもしれないが、幻滅されたときのがっかり感は俺たち陰キャの非にならないだろう。 だから春乃さんは中学の時からこうやって愛のために時間をかけて協力してくれている。 本当に春乃さんは良い人すぎる。 ちなみに俺も愛に対して運動神経が悪いという印象は全く持っていなかったのだが、実際にバスケットをしているところを見て思ったのは、力の制御ができていない主人公みたいな印象だ。 顔は確実に主役をはれるのに、バスケをしている姿は力任せなスタイルだ。 見た目は繊細、プレイはパワー系といったところでギャップに驚かされている。「瑞樹いくよ~~」「おう」そして俺は俺で見た目通り運動神経がそうでもない敬都のサッカーの練習相手をしている。 俺は小学生からサッカーをしていた分それなりに人に教えれるぐらいはできると思う。 まぁ本番は適当に流すつもりだけど。「敬都まっすぐ足を振って、ボールの真ん中を蹴るんだ」「わかった!!ってごめん変なところいった」「大丈夫」パスというよりは俺は球拾いに勤しんでいる 素人だとこんなのが当たり前。 逆に横でちゃんとバスケをするのが初めてなはずなのにバスケ部並みに上手な愛の方がすごいんだろう。「ごめん瑞樹へたくそで」「想定内だから大丈夫」「それは喜んでいいのかわから
「お母さん、僕は将来プロサッカー選手になってみんなのヒーローになるんだ」「瑞樹ならなれるよ」あの時は自分の夢に向かって一直線で頑張っていたし、自分はプロサッカー選手になるのが当たり前のように思っていたのかもしれない。 それがいつの間にか自分の中で「俺はプロサッカー選手にはなれない」と踏ん切りをつけていた。 踏ん切りをつけたのがいつだったのかはわからないけど、なんとなく相手チームに自分より上手な人がたくさんいるのを目の当たりにしてから子供ながら自分の実力を察したのかもしれない。 それでも中学3年生まではサッカーを頑張れていたと思う。 3年生になった時にはキャプテンに任命されたものの周りとの温度差で孤立して最後は中途半端に終わってしまった。 あの時お母さんに子供ながらに約束した夢は春が終わると当たり前のように散る桜のようにいつの間にかなくなっていた。 「お兄ちゃん起きて」「うん...」「今度球技大会があるんでしょ」「うん...」「久しぶりのサッカーなんだから、愛ちゃんにかっこいいとこ見せなよ」「うん......」「起きろ馬鹿」「わかったわかった」流石にここまでされて起きないほど馬鹿ではない。 なんで滅多に見ない子供の時の夢をみたのかは言うまでもない。昨日球技大会の出場選手決めがあったからだ... 俺としては適当にドッジボールにでも出場して流そうと思っていたんだけど、敬都と二人人数が足りていないサッカーに入れられたのだ。 まぁサッカーは未経験ではないからドッジボールよりもうまくやれるかもしれないけど。 なんとなく憂鬱感が抜けない。 それよりも今日はある人に呼び出しを受けていた。なんとなく要件はわかっているけど憂鬱だ。 二つの憂鬱が重なってなおさらベッドから出たくない。「仕方ない。いくか。」 「松岡くん来てくれてありがとう」朝一いつもは人が少ない学校の屋上に俺は来ていた。 呼び出し人は愛の友達の春乃桜。
3人組に指定された日当日。 俺と愛は敬都のことが気になって、指定されたゲームセンターにきていた。 そこには見た目の印象がかなり変わった敬都が座っていた。 自分で「ギャップ」というのを提案したけど、多分誰の目から見ても今の敬都を陰キャと呼ぶ人はいないだろう。 そのくらい見た目が変わっている 髪型だけでそんなに印象が変わるのかと思う人もいるだろうが 洋服にも少しだけ手を入れている 俺たちみたいな陰キャは元々洋服にお金をかけるおしゃれさんではないから洋服の数が少ない。 そんな俺たちにとってキーアイテムになるのが「黒のパンツ」と「無地のシャツ」である。 一件地味というやつもいるかもしれないが、俺たちはおしゃれになる必要はなくて「ダサくない」を目指せばいい。 世の中見見渡せば無地コーデなんか腐るほどあるだろう。 それに前見たテレビでいけてない人たちが「黒なパンツ」をはくだけでましになるみたいな企画をみたことがある。 俺も実際にやってみたのだが妹の真紀からもお墨付きをもらった。 今日の敬都のコーデは黒のパンツに白の無地シャツである。 今の敬都はどこにでも恥ずかしくないはず「なぁ愛。今日の敬都はどうだ」「そうだね。最初にみっちゃんの家に来た時に比べたら別人って感じかな。まぁみっちゃんの方がかっこいいけど」 「うん。ありがとう」愛はいつもの調子で俺贔屓である「でも今日の愛も可愛いよ」「えへへ。みっちゃんと一緒にいるときは私も気合を入れるのです」「それは俺も頑張らないと」本当に頑張らないと愛だけが際立ちすぎて「隣の男ダサい」とか思われたら愛の評価が下がるかもしれない「みっちゃんは今のままでいいよ」そんなこんな話したいたら3人組の男たちがゲームセンターに入ってきた 改めて調べたのが3人組の男たちは リーダー?みたいな存在が 木村 他A 吉田 他B 浅野 という名前らしい。学校でも悪ぶって
とある記事で人の印象は 1 見た目(視覚情報) 55% 2 声の大きさやトーンに関するもの(聴覚情報) 38% 3 話の内容(言語情報) 7% これは「メラビアンの法則」といって1971年に、アルバート・メラビアンという心理学者が提唱したらしい。 要するに見た目の印象でその人の印象はだいたい半分以上が決まるという提唱である。 これは確かにそうだなと思う部分が多い。 例えば太っている人、がりがりな人、カッコい人、カワイイ人の印象は圧倒的に見た目からの印象で決まるのではないだろうか。 これは俺にも思い当たることがあって、先日愛とデートしていた時にお姉さん2人組から逆ナンされたときに、もしいつもの学校スタイルの松岡瑞樹だったら声をかけられたいただろうか。おそらくないだろう。 学校でも普段からぼっちの陰キャに話しかけてくれるイケイケのお姉さんはいない。 あれは身なりをばっちりしたときだからこその結果だと考えていい。 今回中村に「ギャップ」を提案した理由は主にこの印象操作にある。 おそらく3人組の男子生徒が中村に対して目を付けたのは「弱弱しい見た目」だからだ。 もしこれが強者のようなマッチョスタイルのやつには金をたかることはないだろう。 それに見た目が変われば中村も自信がつくかもしれないと思ったから。 俺にできることは多分このぐらいだろう。 「それで松岡くん、僕は何をすればいいの?」「ちょっと待った」「何?」「まず、その松岡くんをやめないか。せっかく腹を割って話せる同志みたいなみたいな存在なんだから」「そこで友達って言えないみっちゃんかわいい」「そこいじらない」「はぁい」愛にはバレバレのようだ。自分から「友達」って言葉を言うのは思っている以上に恥ずかしい。 しかも面と向かって「俺たち友達な」みたいなどっかの主人公キャラしか言えないだろう。「そうだね。僕たち同志みたいな存在だね。なんて呼べばいい?」流石オタク。同志
「ねぇ松岡くん」「何?」「一つだけ聞いていいかな」「仕方ない。一つだけだぞ」「なんで嶋野さんがここにいるのかな?」「やっぱそこ気になる?」「気になりすぎるし、最初入ってきたときにびっくりしすぎて言葉失ったから」「まぁそうなるよな。ここにいる嶋野愛さんは松岡瑞樹の彼女でございます」「ええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!「そんなリアクションになるわな」「ねぇみっちゃん。この人誰」「愛さんや。それはいくらなんでも中村が可哀そうだろ」「だってみっちゃんとさくら以外のクラスメイトの名前なんて覚えてないもん」「俺としては喜んでいいようわからんが」ちなみにさくらは春乃桜という女子生徒のことだ「喜んでいいし、私のことをほめてほめて」「はいはい。よしよし」「へへへへへへ」会って数分で中村の嶋野愛に対する印象が180度変わりつつあるのがわかる「嶋野さんって本当はこんな感じの女の子だったんだね」「そうそう。俺も最初はびっくりしたんだけどな。なんたってクラスでNO1の才色兼備の完璧な女の子ってイメージもたれているからな」「そうだね。でも学校にいる嶋野さんよりこっちの嶋野さんの方が親近感が湧いていいけどな。ただ、学校では賛否がありそうだけど」「そこなんだよ。だから俺たちは交際していることを隠しているんだ」「私はいってもいいんだけど」「愛のために言っているんだけどな」「みっちゃんが私のことを考えてくれているだけで嬉しいよ」「ならずっと考えておくね」「へへへっ」「中村にはこれからこんな感じになってもらうかなって思ってる」「こんな感じ?」「単純な質問なんだが、今のここにいる愛と学校にいる嶋野愛に感じることはなんだ?」「ギャップ?」「そう!!流石。中村
デートの次の日の1時間目、俺たちのクラスは体育だった。 しかも授業内容は2人1組という友達がいない陰キャにっては試練でしかない授業内容。 ちなみに授業内容はキャッチボール。 さて、相手はどうしようかな...そう考えていると中村敬都が一人で俺のことをみていた。 多分、あいつも一人だけど声かけるのか悩んでいるって感じだろ「中村も一人?」「うん」「なら組もうか」「うん」元々おとなしい印象だったけど実際に喋ってみると想像以上におとなしいな。 今おとなしいのは性格だけが原因ではないのかもしれないけど「なぁ中村」「何?」俺たちはキャッチボールを終えて隅っこに腰をおろした。 陰キャは隅っこ暮らしなのです。「昨日の夕方○○のゲームセンターにいなかったか?」「.....」中村は驚いた顔をした後、顔を下に向けた」「単刀直入に聞くけど、お前っていじめられているの?」「松岡くんってデリカシーないね」「いや、あの場面をみたうえで回りくどく聞く方がデリカシーなくないか」「確かにそうか」そういって中村はまた下をむいてうなずいた「いじめられているというか、金をあげるようになったのは最近で。たまたま○○のゲームセンターで遊んでいたら話しかけれれて、最初は一緒にゲームしていたんだ」中村の話は少し遡る...「あ~また負けた。って金もうねーじゃん」「僕がおごろうか?」「まぢ?サンキュー」最初は100円200円の話だったのが、次第に額が増えていき、いつのまにか昼ご飯をおごらされるようになって、今に至るそうだ。 もちろん中村は断りもしたらしいのだが、3人組のリーダーが暴力的なおどしをしてきたことによって1週間に1度お金を渡すことになったそうだ。 話をきいているうちに怒りがこみあがってきたがなんとか中村にばれないように平常心を保った。 陰