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第23羽:Facebookと鈍器(上)

last update Tanggal publikasi: 2026-05-02 23:59:28

【2019年8月】東京都・中野区

午後1時。ユキと共に暮らすマンションで、キヨミはユキのベッドで、裸で寝転がったままスマホを眺めていた。クーラーの風が弱く、汗が首筋を伝う。

「ぷはっ……おいしー」

そう言って、冷蔵庫から出したばかりのアクエリを飲むユキも裸だ。肌は汗でテカり、豊満な乳房の先で、乳首はわずかに勃起している。ユキはキヨミの尻を見るなり、急に片手で揉み始めた。

「アカリさん、いいお尻してますねぇ~」

「ちょっと、ヤメてよ……ってか、何のキャラ?」

「あんらぁ? たまにはネェ、お店のお客さんになりきっちゃうプレイなんかも面白いのかなぁ、なんて思いましてネェ~?」

「ちょっ……マジでそういう喋り方の人いるの? キモいんだけど!」

と、ユキの手を払いながらもキヨミはキャッキャと笑う。

今日は珍しく、キヨミもユキも休みの日が重なった。前日から、どこかに出かけようかなどという案も一瞬上がってはいたが、まずはヤッてから決めようと言い、気づけば一晩またいで、もうこんな時間だ。まるで13時間、ぶっ続けで繋がっていたような感覚さえある。

男性側が射精すれば終わりの男女とは違い、女性同士の行為
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  • シルヴァア・スワロウ   第23羽:Facebookと鈍器(上)

    【2019年8月】東京都・中野区午後1時。ユキと共に暮らすマンションで、キヨミはユキのベッドで、裸で寝転がったままスマホを眺めていた。クーラーの風が弱く、汗が首筋を伝う。「ぷはっ……おいしー」そう言って、冷蔵庫から出したばかりのアクエリを飲むユキも裸だ。肌は汗でテカり、豊満な乳房の先で、乳首はわずかに勃起している。ユキはキヨミの尻を見るなり、急に片手で揉み始めた。「アカリさん、いいお尻してますねぇ~」「ちょっと、ヤメてよ……ってか、何のキャラ?」「あんらぁ? たまにはネェ、お店のお客さんになりきっちゃうプレイなんかも面白いのかなぁ、なんて思いましてネェ~?」「ちょっ……マジでそういう喋り方の人いるの? キモいんだけど!」と、ユキの手を払いながらもキヨミはキャッキャと笑う。今日は珍しく、キヨミもユキも休みの日が重なった。前日から、どこかに出かけようかなどという案も一瞬上がってはいたが、まずはヤッてから決めようと言い、気づけば一晩またいで、もうこんな時間だ。まるで13時間、ぶっ続けで繋がっていたような感覚さえある。男性側が射精すれば終わりの男女とは違い、女性同士の行為には終わりがない。どちらかが飽きるまで行為は続く。片方が途中で疲れて寝落ちしてしまうと、もう片方が寝ている相手にイタズラをし続ける。互いに睡魔でホワホワとした状態になりながら行為を繰り返すのは、これが恐ろしく心地よい。互いの境界もあいまいになりながら、どちらがどちらを攻めているかもわからなくなってくる。本当にひとつになってしまうような感覚だ。魂で繋がるという、キヨミがかつてアズサに求めたものに最も近い行為なのかもしれないと思う。ふと、スマホの通知音が鳴った。Facebookの友達申請。送信者は——「オカダトモヨ」。キヨミはハッとした。高校時代の同級生——一時期、親しくしていたクラスメイトだ。共通の知人がいたような気がするが、記憶はぼやけている。アズサと付き合い始めてから、自然と距離が遠くなった相手でもあった。スルーすべきか、と思ったが、何か気にかかるものがあった。今スルーしてしまうと、一生後悔してしまうかもしれないような、何か――。とりあえず承認ボタンを押すと、すぐにメッセンジャーが届いた。『久しぶり! 元気? 私、今東京の広告代理店で働いてるよ。キヨミも今東京に住んでるっ

  • シルヴァア・スワロウ   第22羽:指名と疼き

    【2019年7月】東京都・新宿区歌舞伎町のソープランド『ディープ・ブルー』の待機室は、いつもより少し蒸し暑かった。エアコンの風が弱く、キヨミは着ている服の襟を軽く広げて休憩を取っていた。今日はゆったりとしたパジャマ姿だ。いつもはオフィス用のスーツなど、パリッとした恰好で接客することが多かったが、店のブログで客からリクエストがあり、それに応えた形だった。パジャマだと「仕事」という感じがせず、どこか落ち着かないが、先ほどまで応対していた客は「ギャップ萌え」と言って喜んでくれた。源氏名の「アカリ」として働くようになって数ヶ月。体は慣れてきたはずなのに、心のどこかがまだざわついている。仕事は仕事でも、風俗業。こちらが緊張してしまえば、癒しを求めてやってきている客は不安がる。最近では徐々に肩の力を抜けるようになってきたものの、もっと自然にやれるようになると良いのだが。テラダマコトの店外デートからは2週間ほど経っていた。あの夜の誠意のような言葉と、突然の別れ。キヨミは彼の白い顔を思い浮かべるたび、胸の奥が小さく疼くのを感じていた。奪われたはずの感情がほんの少しずつ戻ってきているような、そんな予感。「アカリ、ちょっといい?」ふと、明るい声が響く。ユキだった。同日出勤の彼女が、金髪を軽く揺らして近づいてくる。化粧の濃い目元が、いつものように底の見えない笑みを浮かべていた。「どうしたの?」「ちょっと今日、びっくりしちゃったんだけど……アカリのお得意さんいるじゃない。テラダマコトってお客さん。あの人、今日私を指名してきたよ」ユキの言葉は、まるで世間話のように軽やかだった。キヨミは一瞬、息を止めた。指先が無意識に膝の上で固くなる。「……彼とヤッたの?」声は淡々と出た。アカリの演技が自然に働いたのかもしれない。ユキは肩をすくめ、悪びれもせずに頷いた。「そりゃあね……だって、お客さんだもん。お客さんが望むならするわ……悪いけど、仕事だし」ユキの目は優しかった。けれどその奥に、プロとしての冷徹さがちらりと見えた。キヨミはゆっくりと首を振った。「べつに悪いことだなんて思ってないよ。お客さんは私たちが取り合うものじゃない。私たちは勝手に指名されるだけだし」自分でも驚くほど冷静に言葉が出た。ユキは一瞬目を丸くした後、大きく笑い出した。「あっはっは、安心した。店外まで

  • シルヴァア・スワロウ   第21羽:別腹とタバコの香り

    東京都・中野区 ユキの部屋のドアを開けた瞬間、キヨミは静かな溜息を吐いた。室内はまだ暗く、明かりはついていない。ユキはまだ帰っていないらしい。 靴を脱ぎ、廊下の湿った感触を足裏に感じながらリビングへ進む。ソファに鞄を放り、ベッドルームのドアを押し開けた。自分の部屋ではなく、ユキのベッドに腰を下ろす。シーツは少し乱れていて、昨夜の匂いが残っていた。キヨミは仰向けに倒れ込み、天井の染みを見つめた。 (今日は……何だったんだろう) テラダマコトの白い顔が浮かぶ。10万円を超える金を払って、映画と食事とカラオケだけ。ホテルを拒否され、「軽々しく体を売っちゃダメ」と諭された。あの傷ついた瞳。キヨミは掌を胸に当てる。まだ、ほんの少しだけ熱が残っているような気がした。 自然と、視線がベッドの上のユキの枕に移る。 このベッドの上で、何度ユキと肌を重ねたことか。ルームシェアを始めてからまだ2ヶ月ほどなのに、もう数えきれない。最初は「ごめんね、何だか騙したようなことしちゃってる」と言いながらキスをしてきた夜。キヨミが抵抗もせず受け入れた、あの夜から始まった。 ユキの指はいつも器用だった。ブラウスを脱がせ、ブラジャーのホックを外し、肌に直接触れてくる。乳首を指先で転がされ、軽く摘まれるたび、キヨミの体は勝手に震えた。ユキの舌は耳たぶから首筋、鎖骨へと滑り、胸の谷間を丁寧に舐め上げた。キヨミが「あ……っ」と小さく喘ぐと、ユキは満足げに笑って、さらに深くキスを落としてくる。 「アカリ、可愛い……もっと声出して」 あの甘い囁き。キヨミは目を閉じ、太ももを軽く擦り合わせた。思い出だけで、下腹部がじんわりと熱を帯びてくる。 ユキはキヨミの秘部を舐めるのも上手かった。最初は恥ずかしくて脚を閉じようとしたキヨミを、優しく押し広げ、舌先でクリトリスを優しく刺激する。ねっとりと、焦らすように。キヨミがビクビクと腰を浮かせると、今度は指を二本挿れ、ゆっくりと掻き回した。愛液が溢れ、シーツを濡らす音が部屋に響く。 そしてユキは、ペニバンを取り出すこともあった。黒く艶やかなそれで、キヨミの奥を突きながら、自分の胸をキヨミの胸に押しつける。互いの乳首が擦れ合い、汗と体液が混じり合う。キヨミが絶頂に達すると、ユキも背中を反らして声を上げた。二人の喘ぎが重なり、部屋は甘く

  • シルヴァア・スワロウ   第21羽:店外デートと誠意

    【2019年6月】東京都・新宿区キヨミの誕生日だった。26歳。特別な感慨はなかった。25歳のときも、24歳のときも、同じようにただ一日が過ぎただけだった。アズサとの最後の記憶が残る18歳の誕生日以来、キヨミにとって「誕生日」はただの数字の増減に過ぎなかった。その日、待機室でスマホを見ていると、テラダマコトからメッセージが届いていた。『お誕生日おめでとうございます。今日は、店外でデートの日ですね。楽しみにしています』誕生日のことなんてキヨミ自身はすっかり忘れていたが、店のホームページに乗っていたのだ。「誕生日、店外デートの予約していいですか⁉ 二人で楽しみましょう!」そう熱く誘われ、断るわけにはいかなかった。待機室で待機していると、ユキがニヤニヤしながら近づいてきた。「へーっ、もう店外なんて! やるじゃんキヨミ。どんな魔法使ったの?」ユキの声はからかうような明るさだった。金髪の先を指でくるくる巻きながら、キヨミの肩を軽く突く。「知らない。魔法なんて使った覚え無い」キヨミは淡々と答えた。ユキは「えー、謙遜?」と笑うが、それ以上追及はしなかった。店外デートは、六時間で九万六千円に特別料金が上乗せされ、十万円を超える。食事代も客持ち。よほどの関係でなければ成立しない。テラダマコトに関して言えば、まさに「よほど」だった。午後1時5分前。店のボーイが呼びに来る。「テラダ様がお待ちです」キヨミはいつものように待合室を出ていく。「頑張ってね」そう声をかけてくれたユキを振り返り、キヨミは一瞬だけ笑顔を見せた。※テラダと初めて、店の外に出る。彼は白いシャツにチノパン、いつものように雪を思わせる肌が陽射しの中で妙に浮いている。最初に行ったのは映画館だ。映画は恋愛ものだった。キヨミはスクリーンに目を向けながら、内心でため息をついた。主人公の女が、過去の恋に囚われながら新しい恋に踏み出す話。皮肉なほど自分に似ている。隣のテラダは時折、緊張した息を吐きながら彼女の横顔を盗み見ていた。キヨミは気づかないふりをして、手をそっと彼の膝に置いた。客を安心させるための、いつもの仕草。映画が終わり、近くのイタリアンレストランで食事をした。テラダは前菜からデザートまで、丁寧にワインを注ぎ、キヨミの好みを覚えていた。パスタを巻く手つきも、以前より落ち着いている。会話は他愛もな

  • シルヴァア・スワロウ   第19羽:消えた約束

    【2011年6月】静岡県・三島市 アズサとのやりとりは、その後も徐々に減っていった。 3月、4月のころは1日に何通も届いていたメールが、週に2、3通になり、やがて10日に1通、さらには2週間に1通へと間隔が開いていった。 キヨミも受験勉強に追われ、返信をためらう日が増えた。 アズサも東京の新生活に忙しいのだろう——そう自分に言い聞かせていた。 ある日の夕方、通っていた塾の自習室で問題集に向かっていると、突然ガラケーが鳴り出した。慌てて自習室を飛び出し、廊下の端で電話に出る。 「もしもし……?」 「イチノセキヨミってお前か?」 知らない男の声だった。低く、苛立ったような響き。 「私ですけど……」 「あのさ、アズサはもう俺のもんだから。二度とメール寄越してくんなよな」 電話は一方的に切れた。キヨミは壁に背を預け、その場に崩れ落ちそうになった。 耳の中で、男の声が何度も反響する。 その夜遅く、アズサから謝罪の電話がきた。 「あれはバイト仲間で。ぜんぜんそんな変な仲とかじゃないから……ごめんね、キヨミを驚かせちゃった」 キヨミは震える声で返す。 「嘘でしょ。彼氏だよね? もう私との関係なんてどうでもいいんでしょ……アズサから恋人になろうなんて言ってきたくせに、飽きたんだよね?」 「キヨミ、落ち着いて……まぁ、言い寄ってくる男はいるけど、別にキヨミのことどうでもいいなんて思ってな……」 「やっぱり! 言い寄られてるんじゃん! 何なの、自慢!?」 感情のタガが外れたように、キヨミは怒鳴り散らす。こんなに怒ったことがあっただろうか。しかも相手は、恋人以上の関係になりたいと、魂で繋がりたいとさえ思っていたアズサだ。嫌われまい、嫌われまいとしていたのに、こんなに感情的にぶつかってしまっては……。 「ちょっと、キヨミ……どうしたの、何か変だけど……」 さすがにアズサも違和感に気づくが、キヨミは止まらない。 「変? そりゃ、変にだってなるよ……私にとってはアズサがすべてだった! なのにアズサは、東京で私の知らない人たちと仲良くやってる!」 「え、何、キヨミ、友達いないの? そういう話……?」 友達……一瞬、トモヨの顔が浮かんだ。アズサと付き合ううちに、疎遠になってしまった。今はクラスも違うし、顔を合わせることもない。 だが、友達なんてどうだって

  • シルヴァア・スワロウ   第18羽:金髪頭とゴールデンウィーク

    夕方、家に帰ると、母親がテレビでニュースを流していた。 「本日午後2時46分頃、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生しました。東京は震度5強の強い揺れに見舞われ……」 画面には、津波警報が次々と出ている地図が映し出されていた。 「ああ、おかえり。学校、大丈夫だった? 何だか大変なことになってるけど……ずっと地震のニュースばっかりで」 母親はリモコンでザッピングしているが、その言葉の通り、どのチャンネルも同じ話題だ。 キヨミはその場に立ち尽くした。アズサは今、東京にいる。ガラケーを握りしめ、メールが来ていないか問い合わせてみたが、返事は何もない。電話をかけてもつながらない。 『アズサ、大丈夫!? 事故とか巻き込まれたりしてないよね? これ見たらすぐ返事して!』 そう書いてもう一度メールを送った。 だがその日、返事がくることはなかった。 ※ 夜、キヨミはほとんど眠れなかった。 ワンセグテレビでニュースを見続けていると、東京は電車が止まり、帰宅難民が深夜の街をぞろぞろと歩いている映像が流れていた。この群衆の中に、アズサがいるのかもしれない。しばらく凝視していたが見つかるわけもなく、画面は次の話題に移った。 千葉の石油コンビナートは炎を上げ、福島第一原発では「メルトダウン」が発生したという。「メルトダウン」なんて、昔遊んだ『シムシティ』という都市育成シミュレーションゲームでしか聞いたことがない。 布団の中で体を丸める。まるで世界が音を立てて崩れていくような気がした。アズサは無事なのだろうか。不安が胸を締めつけ、息をするのも苦しい。 やがて、カーテンの隙間から日の光が入り込んできた。いつの間にやら朝になっている。 ずっと起きていたような、少し寝ていたような。これが夢だという可能性もあるかと思って頬を叩いたが、残念ながら痛みを感じた。現実だ。流れた涙は頬で乾き、なんだか肌が突っ張っているような感触もある。 ふと枕もとのガラケーを見ると、アズサからメールが来ていた。 『ごめんね、充電切れちゃってて。ビジホもネカフェもどこも埋まってて、困ったよ。公園で一晩過ごそうかとしてたら、ナンパにも遭うし。危うく付いてっちゃうところだったけど、丁重に断ったから安心して。ともかくこっちは大丈夫。キヨミこそ無事?』 1時間前くらいだ。慌てて返事

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