分享

修行という名の拷問

作者: 一一
last update publish date: 2025-06-20 21:00:00

 レイの意識が宇宙へと飛び立った翌朝、4人は1階に集まっていた。

「おはようございます、レイ。身体の調子はどうですか?」

「お、おはよう。魔力は回復したし普通に動くだけなら大丈夫、よ……?」

 と言いつつ、昨日魔力切れになれとあんな事を言われたばかりである。

 死刑宣告は流石に言い過ぎにしても、本当に死ぬんじゃないかと不安であまり寝れなかったのは秘密であった。

 その様子に笑いながらニイルは言う。

「昨日は脅す様な事を言いましたが、ちゃんと理由が有ります。後ほど説明しますよ」

 その言葉に、完全に安心出来ないながらも頷くレイ。

 今日から行われるのは本当に修行なのだろうか。

(師事する相手、間違えたかしら?)

 と、思わなくもなかったレイなのであった。

 朝食を済ませた一行が向かったのは、昨日と同じ場所だった。

 当分は、ここで修行をする事になりそうだと思うレイ。

 軽く準備運動を済ませたレイに、ニイルは言う。

「ではこれから始めますが、まず先程の発言の真意を説明しましょう。先日貴女が言った通り、魔力を増やすのは容易ではありません。ただ容易でないからこそ、あまり知られていない方法が有るのです。それが魔力切れになります」

 その言葉に、やはり理解が及ばず首を傾げるレイ。

 ニイルは続けた。

「筋肉と同じ様なものだと理解すれば分かりやすいでしょうか?激しい筋肉痛の後、筋肉はより強靭になる。それが魔力にも言えるのです。死ぬ寸前まで魔力切れを起こしそれを繰り返すと、体内で作られる魔力量と、それを蓄える容量が増すのです。まぁ、一般的にそれを繰り返す人間はほぼ存在しないので、この方法が認知されないのでしょうね」

 それはそうだろう。

 そんな自殺行為を常日頃繰り返す人間が、そうそう居て良い筈がない。

 普通の冒険者でも激しい戦闘の後に稀になる程度で、普通の人間はそうなる前に対処する。

 何故なら、魔力切れを起こせば基本的に戦力低下を引き起こし、最悪動けなくなるので致命的な隙を晒す事になるからだ。

 後は単純に、心身共に負担が掛かるので辛いからなりたくない、というのが大半の理由だろう。

 なのでそんな方法がある事など思い付きもしなかったが、しかし筋は通っている。

 故に昨日の発言だったのかと、ようやく理解するに至ったレイであった。

「1回や2回魔力切れを起こしたところでほとんど変わりません。なので基本的に、これからほぼ毎日魔力切れを起こし回復させる、というのが1つ目の課題です」

(これで1つ目か……)

 と、早速のハードレッスンに、またも意識が宇宙に旅立ちそうになるレイ。

 そんな、頻繁に宇宙旅行へ行こうとするレイを引き止める様に、ニイルは質問した。

「2つ目ですが、魔法への知識と理解を深める事ですね。ところで貴女は、魔法についてどれだけ理解していますか?」

 というニイルの質問に、魔法についての知識を思い出すレイ。

「えっと……魔力を制御し変化させる事で、世界の法則を書き換え事象を改変する、だったかしら?」

「ふむ。ではどうやって魔力を制御し、変化させるのでしょうか?」

「それは魔法陣を使って、じゃないの?」

 そう、魔法を使用するには、基本的に魔法陣が必要になる。

 魔法陣を使用する事により魔力を制御、変化させ事象を改変させる。

 それ故に強力な魔法を扱おうとするならば、魔法陣は細かくなり、それに伴い魔法陣も巨大化していく。

 だからこそ、必然的に発動までの時間が掛かる、というのが一般的な常識である、のだが。

「残念ながら不正解です。魔力の制御とは、自身の精神的イメージで行うのです。魔法陣はその補助的な役割に過ぎません。この魔法陣を描けばこの結果が生まれる、と覚えてしまえば、イメージするより分かりやすいですからね。なので、きちんとイメージさえ出来れば、魔法陣など必要無いのです。この様にね」

 と、説明しながらニイルの横の何・も・無・い・空・間・か・ら・、突・然・火・の・玉・が・現・れ・た・。

 それは世間的に、高等技術とされている略式魔技であった。

 一流の魔法師でも一部の、それも簡単な魔法しか出来ないと言われる、魔法陣無しで魔法を行使する技術。

 それが略式魔技、又は略式と呼ばれている技術である。

 何故高等技術なのか、それは単純に複雑で覚え辛いからというのが理由に挙げられる。

「略式を行う為に必要な情報は効果、持続時間、範囲など多岐に渡ります。それらの構成を全て記憶し、咄嗟に実践で使うとなると、普通の人間には出来ないものなのですよ。故に一流でも慣れ親しんでいて、簡単な魔法しか使えないのです。逆に言えば、それら全てを記憶して咄嗟に使えるなら、魔法陣は必要無いのです」

 言うは易しだが、それが難しいから高等技術なのでは、と思ってしまうレイ。

 それが出来るなら魔法陣の内容を理解し、それを組み替えて新しい魔法を作り出す事も……

 事ここに至り、先日の言葉を思い出すレイ。

「昨日言っていた魔法の制御にも使えるって事?」

「正解です。覚えるのは後回しですが、まずは魔法陣について学び、その後どんな魔法も略式で発動出来る様になりましょう」

「そうして魔法を制御し装填魔法を使えば、昨日のように動けなくなる事は無くなる、という事ね」

「その通りです。昨日の装填魔法の弱点、と言いますか雷化の弱点ですが。あまりにも迅はや過ぎて、身体がついてこれていないという一点に尽きます。なので突進による突きしか行えず、方向転換もままならない。故に移動場所さえ分かれば、カウンターを置・い・て・お・く・だ・け・でそっちが勝手に突っ込んでくるのです。まぁ、昨日はそこに、ランシュの身体能力の高さと勘でアッパーを当てられた訳ですがね」

 つまりランシュは雷に対応したという事であり、改めて凄まじい実力が垣間見えた気がしたレイであった。

「では先ず、今日はこの魔法陣を覚えてもらいましょうか。内容は装填魔法に使用する雷魔法の威力を70%減らすというものです。威力が30%でも、使いこなせば大抵の人間には反応出来ないでしょう」

 そう言いながら魔法陣を描くニイル。

 その出来上がった魔法陣を真似してレイも描いてみたが、魔法は発動しなかった。

「やはりイメージがまだちゃんと出来ていないですね。魔法陣をしっかり覚え、イメージを固められるようにしましょう」

 中々のスパルタだが、強くなる為必死に覚えようとするレイ。

 しかし、そんなレイに追い打ちを掛けていくニイル。

「そしてイメージをしながら魔力切れを起こすまで、ランシュと実戦訓練もしていきましょうか」

 やっぱり師事する相手、間違えたかも……

 そんな事を思いながらこれから始まる修行じごくに、今度こそ意識が宇宙旅行に飛び立ったレイなのであった。

在 APP 繼續免費閱讀本書
掃碼下載 APP

最新章節

  • バケモノが愛したこの世界   『神性』とは

    「『柒翼』?仇?一体どういう意味……?」話に付いていけていないルヴィに、しかし誰も答えられない。特にレイには、そんな余裕が皆無であった。「そんな……だって……人違いという可能性も……」震える声でそう問うレイに、ニイルがかぶりを振る。「ディードが、北に居るのは『嫉妬』と言っていたでしょう?なら、この人物こそが『嫉妬』で間違いありません」「それは……他の『柒翼』じゃない『神性保持者』かも……」自分でも苦しいと分かりつつ、否定してみるレイだったが、更に決定的な言葉がニイルから告げられる。「『神性保持者』はこの世に7人しか存在出来ません。それ以下はあっても、それ以上は有り得ないのです。これは、説明してこなかった私にも落ち度が有りますが……」そうして、ニイルは『神性』について語り出した。「『神性』とは、とある『神』の力を7つに分割したモノです。故に『神性保持者』の人数は、それ以上になる事は無い」「か、神……?」レイとルヴィが驚愕を露わにするが、それを無視してニイルは続ける。「『神性』は適性のある者から無作為に発症する、病魔の様なモノ。適性が無ければ生まれる事は無く、仮にあったとしても、『力』に耐えられず自壊する可能性すら存在する。まぁ、その方が幸運なのかもしれませんが……」『神の力』は人の身に余る力だ。それを、ニイルは痛い程知っている。だからこそ自嘲気味に笑う。「そしてその『力』の強大さ故に、その『力』から逃れる事も出来ない。人から人への譲渡は出来ず、『力』が移るのは『保持者』が死んだ時……数|少《・

  • バケモノが愛したこの世界   真相

    「貴方が……いや、お前が手こずるなんてよっぽどと思ったが。なるほど、彼女達なら納得だ。随分速い到着ですね」 そうして時は現在に戻り。 広場に入ってきたニイルが語る。 後半はレイ達へ向けて放った言葉だが、前半は明らかに違う。 いつもの敬語では無く、一瞬誰に対して言ったか分からなかったレイだったが。【ふぅ……もう良いか?流石の吾輩も疲れた……】「あぁ、悪いな。協力してくれて助かったぜ」 そんなやり取りをする2人に謎が解ける。 代わりに、別の謎が浮上した訳なのだが。「ちょっ!ちょっと待って!?どうして2人がそんなに仲良さそうにしているのよ!?貴方達、敵同士なんじゃないの!?」 代表して、レイがその謎を投げ掛ける。 しかし、当のニイルは疑問符を浮かべていた。「それか、ニイル!貴方騙されているんじゃない!?ソイツ、明らかに貴方に対して敵意を持っているわよ!?」 レイの脳裏に、これまでのやり取りが蘇る。 今までスルトはニイルに対し悪意しか見せず、ともすれば仇の様にすら語っていたのだ。 そんな本性を垣間見た後では、スルトを信じる事など到底出来ない。「ぷっ……ふふ……お前、一体どんな風に言ってたんだ?」 だが、それを聞いてもニイルは疑いもせず、寧ろレイの言葉に笑うのみ。 その態度に段々と怒りが込み上げて来たレイに、いよいよ不味いと気付いたのか、咳払いをしてニイルが言う。「いえ、申し訳ありません。全て私が頼んだ事なのです。貴女達に修行を付けてやってほしいと」「修行?」 一瞬呆けたレイに、今度はスルトが続ける。【いや、悪いのは吾輩の方だ。あそこまで悪し様に言われては、誰しも怒りに震えよう。吾輩が同じ立場なら、決して許さんであろうな】 そう語る間に、周囲の状況も落ち着いていく。 壁や天井の棘は消え、床から生えていた巨大な手も、ただ

  • バケモノが愛したこの世界   バケモノと巨神

     時間は少し巻き戻り、今から4日前。 レイ達と別れ、1人空を飛んで海を渡ったニイル。 1人での飛行という事もあり、速度を気にしなかったお陰で、日付が変わる前にセプテリオ大陸へと辿り着く事が出来た。 そこから更に飛び続ける事1日。 本来なら、もう少し早く到着出来ていたであろう距離。 しかしこの荒れた天気と、ニイルにしては珍しく緊張した気分を落ち着かせる為、直前の王都にて休息を取り、早朝。 レイ達が辿り着く2日前に、ニイルはニウス山脈へと到着したのだった。「なんだ?この異様な空気……認識阻害?いや、それだけじゃねぇな」 しかし、そのただならぬ雰囲気に眉根を寄せるニイル。 視ると山脈全体に、様々な魔法や『神性』すら使った結界じみたモノが敷かれていた。(遥か以前に来た時より警戒が厳重になってやがる。アイツはそこまで人間嫌いじゃ無かった筈だが、何かあったのか?) ニイルと出会ってからは特に、人間に対する悪感情が無くなっていた様に思う。 そんな人物がこれ程人間に対し、接近を拒絶する様にしている事に、違和感を覚えた。(まぁ、あれから長い年月が過ぎたんだ……変わっていくのも当然だよな) その一因は自分にも有るだろう。 今まで以上の罪悪感を抱きながら、慎重に山脈へ足を踏み入れる。 天気は少し悪いが、ニイルには支障が無い。 それよりも、相手が張った『神性』の方が厄介だった。『眼』と記憶を頼りに、目的の場所を探し続ける。 暫く歩き続けると、一段と視え難い場所を発見した。 魔法と『神性』によって隠されたその洞窟は、かつて目的の人物が住んでいた場所へ通じる入口だった筈。 懐かし

  • バケモノが愛したこの世界   抗いの果てに

     広い空間が静寂に包まれる中、しかし誰も動く事が出来ない。 皆、限界を迎えているのも有るが、何よりスルトが復活する恐れが有る為だ。 先程レイ達が見た通り、何事も無く新たな土人形を作り出し、復活されたならば。 最早全員に、戦う余力は残されていなかった。 しかしいくら警戒すれども、一向にスルトは姿を現さない。 暫く警戒心を最大にし、意識を周囲に張り巡らせていたが……「ハッ……ハッ……ハッ……!」 とうとう限界を迎え、レイが地面に倒れ込んだ。「レイ!うっ……」 その光景に、ルヴィも気が緩んでしまったのだろう。 剣を取り落とし、その場に座り込む。 ランシュだけはふらつきながらも歩き始め、フィオの元に辿り着くと、同じ様に座り込んでしまった。 全員が立ち上がる事すら出来ない、満身創痍状態。 しかしそれでも尚、スルトは姿を現さなくて。 つまりそれは、1つの結果を示していた。「終わった……のよね?」 息も絶え絶えに、苦しげな表情で言うルヴィ。 独り言の様なか細い声だったが、それにレイは答える。「ハァ……ハァ……ハァー……でも一応、何があるか分からないわ。急いで回復薬を使いましょう」 出発前に分配した、ニイルの回復薬を飲み始めるレイ。 身体を動かすのも辛い状態だったのだが、瞬く間に傷は癒えていき、魔力も回復していくのを感じる。 そんなレイを見て、同様にルヴィも回復薬を口にする。 見ればランシュも、倒れているフィオに回復薬を与えていた。 ランシュが冷静に回復薬を使用している事から、どうやらただ単純に気を失っているだけだろうと、レイは推察する。 とりあえず全員、無事生還出来た事に安堵し、ため息を吐

  • バケモノが愛したこの世界   巨神討伐

     いくら傷は癒えたといっても、完治には程遠く。 そして治癒魔法では魔力は回復しない。 仕切り直しとは程遠い現状に、しかし。 それでも心の奥から溢れ出る活力が、レイ達の身体を動かしていた。(誰1人諦めず、最善を尽くしてる!なら、この程度で諦める訳にはいかないわよね!) それはルヴィも同じで、今まで以上に燃え盛る意志で、無理矢理身体を奮い立たせる。 全身を襲う激痛を無視して、更に『力』を手繰り寄せるルヴィ。 それに競うかの様に、レイとランシュも『力』の出力が上がっていく。 そんな3人を眺め、普段はしない考えが脳裏を過ぎるスルト。(後ろの森娘は回復役でもあったか……ならばそちらを先に潰しておくか?) 相手が戦士であれば、同じ戦士として卑怯とも取られる戦法は考えもしない。 しかし今のレイ達はスルトすら脅かす脅威。 生き残る為にあらゆる手段を講じるのは、例え『神』とて同じ事だろう。 だが、それは最悪の選択であった。【何!?】 決して油断した訳でも、意識を逸らした訳でも無い。 一瞬だけ、後方に居るフィオに視線を向けただけであった。 しかしいつの間にか目の前に迫っていたランシュに、驚きの声を上げるスルト。(速いという訳では無い!視界に収めてすらいた筈が、気付けばここまで接近を許すとは!気配も、行動に出る際の起こりすら見えなんだ!) 慌てて防御しようとするが一足遅く、ランシュの鋭い拳はスルトの鳩尾を深く貫く。【ごはっ!】 表情には出なくとも、明らかに怒っていると分かる連撃を叩き込むランシュ。 その衝撃は凄まじく、鎧を着込んで尚かなりのダメージをスルトに与えた。(分かるわよ。大切な妹を狙われたら……お姉ちゃんなら尚更ね)【うっ……とおし……がっ!?】「私だって!怒っているもの!」

  • バケモノが愛したこの世界   ニンゲンの『力』

     ルヴィの身体の周りを、時折閃光が弾ける。 よく見るとそれは、小さくも青白い稲妻で。 その光を目撃した全員が、確かに確信していた。「あれは……『雷装』!?」 誰よりも使っているからこそ、驚きを隠せないレイ。 今、ルヴィが纏っているモノは、レイの『雷装』と全く同じであった。(いえ!でも一緒という訳じゃ無い!出力は明らかに少ないし、安定もしていない。あれじゃ精々『10%』以下……) だがしかし、真の問題はそこでは無い。 例え威力が低かろうと、他人が『雷装』を使える筈が無いのだから。(魔法陣を知っているニイル達ならまだしも!知っている筈の無いルヴィが使える訳が無いのよ!だってアレは!私達一族の秘術!) そう、かつてこの魔法の所為でルエルに目を付けられ、国を滅ぼされたのだ。 今や使える者は、レイを置いて他に居ない。 それはあのニイルですら、使っている所を見た事が無い程だった。 だからこそ、自分以外が使えている事に驚きと、そして強い違和感を感じるレイ。 それは、ルヴィを除いた全員が感じていた。(まさか!油断していたとはいえ、こうも易々と斬られる事を許してしまうとは!) これにはスルトも、驚きを禁じ得ない。 何せ今までのルヴィとは、明らかに違う動き、そして威力なのだ。 成長が著しいとはいえ、流石にこれは異常であった。(呼吸や気配すらも、あの雷娘と同一化しつつある……表面を真似るだけならまだしも、存在感すら同じになりかけているのはどういう了見だ!?) 相手の動きや、稀に思考すら読み相手の真似をする手合いは、少ないが居ない訳では無い。 人間にも技を見て盗み、同じ動きで戦う者も存在する。 そう考えれば動きや技術をコピーする存在など、数々の戦いを潜り抜

更多章節
探索並免費閱讀 優質小說
GoodNovel APP 免費暢讀海量優秀小說,下載喜歡的書籍,隨時隨地閱讀。
在 APP 免費閱讀書籍
掃碼在 APP 閱讀
DMCA.com Protection Status