Share

30. 神槍

Auteur: Mr.Z
last update Dernière mise à jour: 2025-04-20 11:36:41

 朝食後、車内から戻ってきたユエさんによって、急遽原宿へと移動する事になった。なんでも、UnRuleモンスターに詳しい国家研究員の裏部さんをそこで見かけたという情報があったという。つまり、ここでこの高級ホテルとは一旦離れる事になる。それはヒナとの別れも表していた。

「もう行くんですか!?」

「すぐ行かないと、また移動されるかもしれないしな」

「そうですか⋯⋯」

「まぁ、次何かあったら飯原さんが対処してくれるはずだ。最悪、こっちに連絡くれてもいい」

「はい⋯⋯」

 ヒナに感謝し、背を向ける。またどこかで会えるはず、そう思いながら。すると、急に後ろから抱き着かれた。

「っ! ヒナ!?」

「私も一緒に行きますッ!」

「いや、でも」

「だろうとは思ってたぜ」

 振り向くと、謎に待っていたシンヤ。こいつさっきユキと一緒に車へ行ったんじゃ⋯⋯。

「ひなひーさ、昨日ずっとお前の事聞いてきてたんだよ。だからなんとなく、こうなるとは思ったわ!」

「でも原宿は絶対危険だ。ヒナじゃさすがに」

「戦えますから! 私もッ!」

 そう言うと、ヒナは三叉の黄色い槍を出現させた。先端から小さな電気が一定間隔置きに走り、ただの槍ではない事を示している。全長は2メートル近くあるだろうか? ユキの持っている鎌と同じくらいの大きさがあった。

「うおぉ! なんかでっかいの持ってんなぁ!」

「はい。ELの方ほどの強さは無いんですけど、迷惑かけないように頑張りますから!」

「だってよ、ルイ。いいじゃねぇか! ひなひーが一緒にいてくれるなんて、普通じゃありえねぇ凄い事だぜ!?」

「まぁそうかもだけど」

「なんだよ、なんか不満あんのか?」

「⋯⋯アオさんの事、頭に過って」

「んだよ! いつまでも引っ張んなって!」

 そんなの分かってんだよ。でも俺はあの時知ったんだ。人はいとも簡単に死ぬ。

 ⋯⋯謎の空撃だった、それでアオさんはバラバラにされた。それがヒナにされたらと思うと⋯⋯考えるだけで吐き気がする。

「ひなひーがここにいたって、いつまで安全かなんて分からないぜ?」

「そ、そうです! 一緒にいた方がむしろ安全だと思います!」

「な? それに、お前は同じミスはしない、そうだろ?」

 シンヤは挑発するように言う、まるで試しているかのように。こいつ、勝ちたくてずっと俺の事を見てやがる。

「⋯⋯わかったよ」

 言った瞬間
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • フォールン・イノベーション -2030-   65. 同僚

    「改めて、2階の捜索を開始する。しっかり付いてくるように!」「は!」 その掛け声でまた4組に分かれ、私たち3人は"あの赤い影の跡近辺"を探索する事にした。ニイナに続いて、また崩れた書類まみれの一室へと入る。 ⋯⋯タバコ臭い ヒナも「うっ」と鼻をつまんでいる。最近は禁煙室しかないのもあって、慣れないこの臭い。もちろん臭い、最悪。 にしても、警察署なんて普段入る事無いから、見る物全てが新鮮というかなんというか。 この【最新警戒人物リスト】なんて書類も、ここでしか見られないかも。 他にも【パトカー担当日割】や【交番担当日割】など、日によってパトカーによる巡回や、交番へ出向く人の名前が記載されている。 へぇ、交番への勤務は1ヵ月毎で変更なのね。 月毎に歌舞伎町、新宿駅東口、新宿駅西口、大久保とつらつらとある。壁には詐欺防止や交通安全、痴漢や盗撮への注意、イベントコラボやアニメコラボなどのデジタルマッピングポスターがある。これらはどの部屋にも似たようなのが張ってあったっけ。 「中はこんなふうになってるんですね~」 周りを見渡すヒナの手には、謎の書類が持たれていた。「なに持ってるの?」「これですか? 【リストラ予定表】ってのがありまして」「へぇ~、見せて」 最近は警察にリストラってあるんだ。公務員にもリストラ制度が入ったって聞いたけど、ここにも皺寄せが来てるのね。 読むと、"AIの超高性能化により人員の削減を行います、ご了承下さい"のような事が書いてある。その代わり、"家でAI監視のような形で給料を出す"とされている。 でも、給料は結構減るみたい。新しい形の仕事が増えてはいるけど、まだまだ待遇が微妙みたい。「⋯⋯ユキ先輩ッ! 下がってッ!!」「?!」 突如、目の前に"赤く透明な何か"が落ちてきた。ニイナが叫ばなかったらこれに飲まれていた。「これ⋯⋯さっきの⋯⋯!」 "小野田さん?"の首から伸びていたアレだった。「ユキちゃんッ!!」「先輩ッ!!」 不意に私へ向かって飛んでヤツをなんとか薙ぎ払うと、分裂するようにして地面へと溶けていった。 全身の鳥肌が凄い、生理的に無理すぎる。「さっきの、ですよねぇ」「⋯⋯そうね。キモすぎでしょ」「あいつ≪天魔神の超重力≫の効果をすり抜けてました。次はよく見ておかないと⋯⋯」 言いながら

  • フォールン・イノベーション -2030-   64. 赤影

     あれから、私たち担当部分は見終わって戻って来たけど、誰一人見つからずに今に至る。「おい、小野田はどうした?」 不意にカレンさんが竹チームを見て言うと、「⋯⋯ん? どこ行った? お前ら、見てないのか?」 竹の人の声に、誰も知らないと返事する。 確かに一人いない。「さっきまで後ろにいたはずなんですが⋯⋯」 もちろん私たちも見ていない。「⋯⋯仕方ないやつだな。なら俺たちは一旦、小野田を連れてから行く。カレンたちは先に上へ行ってくれ」「お前たちだけで大丈夫か?」「散々見ただろ、ここには何もいない」「まぁ、そうだが」 ここで竹チーム以外で2階へと行く事になった。エスカレーターへと、チーム順に乗っていく。下を見ると、「お前たちはあっちを探してくれ」と竹の人が指示を出している。 小野田さんはどこに⋯⋯? 2階へ着くと、上に大きく【地域課】と書いてあった。 ってことはここは普段交番や見回りなど、外で見る一般的な警察官が所属するところ、おそらくニイナも同じ。「ねぇ黒夢、ここも間取りが違うの?」「⋯⋯違う。私がいた時、こんなのじゃなかった。もっと個人まりしてるというか⋯⋯こんな区切られた区間は無かった。ちなみに、私がいつも座ってたのはあの辺りで」『緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください。緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください』 !? また全員のL.S.から【緊急地震速報】が一斉に鳴り、すぐにしゃがむ姿勢を取る。「なんなんだ!? さっきからこの揺れは!?」 お互いに無事を確認し合う。幸い、誰もケガはしていない。それにしても緊急地震速報のあの音、何回聞いても心臓に悪い。 また揺れたせいで、物が常に散乱している。棚の書類や机の物など、一気に散らばっている。横目にカレンさんを見ると、L.S.で誰かと通話を始めていた。「おい、揺れただろ。そっちは無事か?」「ん? こっちは揺れてないが?」「な⋯⋯」「揺れたのか? さっきみたいに」「⋯⋯」「おい、カレン?」「⋯⋯そういう事だ。それで、小野田は見つかったか?」「それがどこ探してもいない。アイツは一体どこに行ったんだ」 すぐ後ろから竹チームが上って来た。すると、『緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください。緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください』 さらにまた全員

  • フォールン・イノベーション -2030-   63. 受付

    「各位、覚悟はいいな?」 カレンさんの一言が新宿花伝へ響き渡り、部下たちが声を上げる。 実際の新宿警察署を前にして思う事、なんでこんなところにいるんだろって。犯罪したわけじゃないのに。 むしろ罪を犯してるのは警察側、東京から逃げようとした人々を無差別に殺していたのだから。正義の裁きを下すのは、今度は私たちの方なのかもしれない。「では、只今から行方不明者の捜索を開始する!」 代表のカレンさんを筆頭に、松と竹のチームが続いて入っていき、その後ろに私たち3人。 その途中、一つ深呼吸。大丈夫、ここに来るまでに準備はしてきた。 新宿花伝はここら辺りで有名らしく、道中でよく話しかけられていた。新宿花伝と七色蝶チームが手を組んだぞと話題になっているようで、それがとうとう新宿警察署へ入るって事だから、人だかりが出来ていた。「頼んだぞ~! 俺らはここら辺を守っとくから!」「"松竹梅の三銃士"と七色蝶のとこが組めば、ここもいけるだろ!」「俺もELになれたら参加できたのかな~。まぁでも死にたくねぇ~」 後ろで様々な声がする。"松竹梅の梅"って誰だろうと思ったけど、たぶんカレンさんの事かな。 そしてニイナは黒能面を付け、私たちもフードとお面を付ける。「いいですか、署内は私に続いてください。内部構造はよく知ってますから。一応その格好なら、最悪犯罪になっても逃げきれる可能性はあるでしょう」「やめてよ、入る前から犯罪者になる前提なの」「だって、私だけだと庇いきれませんよ。弁護士のアスタ様と探偵のカイがいればどうにかなりそうですけど」「え、アスタ君って弁護士だったの?」「ほぇ~!」 アスタ君は大学生で弁護士だそうで、特殊ルートでなったそう。警察、探偵、弁護士の三人が揃ってるって、どんなグループなのここ⋯⋯そういやアスタ君、胸元に弁護士バッジ付けてたかも?「さぁ行きましょう! ユキちゃん!」「あ、うん」 そして私たちは、"死人の赤巣窟"へと足を踏み入れた。「⋯⋯違う」「?」「⋯⋯知ってるのと違う」 なんかニイナの様子がおかしい。「こんな大きく【受付】なんて⋯⋯真ん中もこんなに広くない」 !? 突然、床が揺れ始めた。同時に【緊急地震速報】が全員のL.S.から鳴る。『緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください。緊急地震速報です、強い揺れに警戒

  • フォールン・イノベーション -2030-   62. 決起

     ここに来る途中、聞いた話。 新宿駅にはさっきまで"大きいヤツ"がいたらしい。 私たちが新宿駅に着くちょうど10分ほど前、それが片付いたそう。あの時ヒナがXTwitterで見た写真は、"その解散する瞬間"だった。 この写真をアップしていたのが、このカレンさん。近辺で何があったかを、写真や動画で常にアップしているそう。その後に、新宿駅の地下は最近危険なのもあり、上がって来たヤツらを対処していたのがノノだった、というのがさっきまでの流れ。 今から新宿花伝との協力捜索になるわけだけど、時間が経って午後3時。「さて、そろそろ」 カレンさんがL.S.を見て言う。すると、左右から重厚感のある音が荒々しくし始めた。見ると、それぞれ"松と竹の派手な人?"の後ろにさらに数人、ゆっくりと歩いて来る。これは⋯⋯仲間って事でいいのよね? さっきカレンさんが仲間を呼んだって言ってたけど⋯⋯また変わった人たちがやってきた。L.S.を見ると、EL仕様の特別製。って事は、この人たちも選ばれた人。「歌舞伎町辺りはどうだった?」 カレンさんの声に、左の"松の人"が首を横へ振る。「御苑や公園の方は?」 続いて、右の"竹の人"が首を横へ振る。「なら、もう"あの場所"か」「!? 行くんですか!?」 驚くノノ。他の新宿花伝組も続いて声を上げる。 "あの場所"? 私は気になって割り込み、「どこですか?」 一言聞いた。すると、「⋯⋯"新宿警察署"よ」 呟くようにカレンさんは言った。「え、警察署?」「⋯⋯ユキ姉は何も知らない?」「う、うん、私は何も」「入った人たちが、まだ一人も出てきてない」「「一人も?!」」 ヒナと私の声がシンクロした。やっぱりヒナも知らなかったみたい。まだあまり出てない情報な気がする。「なんで警察署に? そこには何かあるんですか?」 続けてカレンさんに質問する。「まだよく分かってないわ、何があるのか。"相応の物がある"とだけ伝わってる」「そういや、警察の黒夢なら何か知ってるんじゃない?」 ノノが後ろにいるニイナへと話を振った。ニイナは険しい顔をすると、「⋯⋯知らない、何も」 ん? ニイナ? この後もどうするかの話し合いが続いた。新宿警察署へ本当に行くのかどうか。行けばどうなるだろう。警察を敵に回す事になるのだろうか。どっちにし

  • フォールン・イノベーション -2030-   61. 足枷

    「うわ~きれい~!」「こんな場所が」 隣の二人が周りを見渡す。つられて私も。「これ全部、私が植えたの」 ケースに入ってる青い花を前に、しゃがんで彼女は言う。「花も喜んでるように見えますね」「そう? なら頑張って植えた甲斐があるわね」 少し嬉しそう。この数は相当苦労したはず。下から上まで花だらけの一室。この1か所だけ、別世界のよう。 上に"Little Life Garden"と可愛らしい字で書いてある、自分で書いたのかな? こんな壊れた都会の小さな庭園。ほんの少し、癒しを感じられる。「そういえば、お互い名前を知らないわね。住吉カレンよ、ここのみんなには"代表"と呼ばれてる」「新崎ユキです、こちらが町田ヒナ、それであちらが」「⋯⋯黒夢⋯⋯ニイナです」 ニイナが一歩出て言う。「あなた、さっき"黒い能面"を付けていたわね。あの速さ、特別な能力が付いてる?」「⋯⋯身体能力を1.5倍にします。"弓の場合は1.7倍"ですが」 ヒナが「そうだったんだねぇ」と呟く。使用武器に応じて上昇具合が変わるなんてのがあるんだ、全然知らなかった。まだまだUnRuleには謎な事が多い、知らない事ばかり。「似てるわね。私の"これ"と。この鎧は"2倍"、ただし"接近戦の場合だけ"。その黒い能面みたいに常に、とはいかない」「接近戦だけ、ですか。限定的すぎて、弓では使いものになりません」「そうね⋯⋯だからこれは運命だと思った」 カレンさんが立ち上がる。「⋯⋯覚悟を決めて外に出た日の夜だったわ。それまで、本当はこのまま死のうと思ってたの」「意外⋯⋯です」 私が小さく言うと、「そうでもないわ、強がってるだけだから。未だに怖いもの、"アイツら"に近付く時は」 同じだった。ELの恩恵があろうと、怖い物はやっぱり怖い。安心なんて言葉はどこにもない。「初めてアイツを見た時、そこにいた人全員が倒れてた。そんな中で、ただ一人がこっちへ叫んだの、"コイツをやれ"って。どうせ死ぬんだったらと思って、走って剣で突っ込んでやった、そしたら」 カレンさんの視線は"花の鎧"の方へ向く。「私だけが手に入れて、他の人は死んでしまった。あの人たちのおかげで弱ったところをやれただけなのに。今でも考えてしまう、ELもこれも、私でよかったのかなって」「⋯⋯弱音はそこまでにしてもらえま

  • フォールン・イノベーション -2030-   60. 握手

    「こんな事やれと言ってないぞ」「(⋯⋯げ⋯⋯なんで代表が)」「お前たちも何やってる!」「す、すみません! もう止められなくて⋯⋯」「だろうな、ノノは言い出したら聞きやしない」 全身花だらけの鎧? その人は周りを叱り、ノノへと寄っていく。「だってこの女が」「黙れッ!!」 突然の怒声。辺りに一斉に緊張感が走り、萎縮してしまう。あのノノさえも黙ってしまった。 なんなのこの人は⋯⋯? 代表って言ってたけど、ここの代表ってこと?「それは喧嘩で勝つために与えたわけではない。これ以上、新宿花伝に泥を塗るなら次はクビだからな」「⋯⋯はい」 その後、花鎧の人は一瞬ニイナを見たかと思えば、今度はこっちへと視線を移した。「⋯⋯ん? ⋯⋯それ⋯⋯もしかして!?」 え⋯⋯急になに⋯⋯? L.S.を見られてる⋯⋯? 袖を見ると、隠していたL.S.が剥き出しになっていた。 見られると対応が面倒だと思って隠していたけど、さっきの二人の勝負にムキになり、いつの間にか袖を捲ってしまっていたらしい。 「嘘だろ?」と突然ざわつく周囲。 他のELと会うのがそんな珍しい事なのかな? この花鎧の人もELみたいだけど⋯⋯「死んだって聞いたけど⋯⋯生きてたの?」「⋯⋯え」 あれ⋯⋯? ELを見つけた珍しさで驚いたわけではなくて、そっち?「亡霊じゃ、ない?」「生きてます⋯⋯けど」 凄い足音で次はノノが寄って来た。「ガチ!?」「⋯⋯?」 ノノはまじまじと私の顔を見てくる。目を凝らしたり、胸を見たり、足を見たり。何されてんのこれ?「ねぇ⋯⋯もしかして⋯⋯ユキ姉?」「え?」「可愛くなりすぎだって! ほら、三船ノノ! 覚えてない!?」 ノノは緑のフードをゆっくり降ろし、よく見てと謎のアピール。 ん~⋯⋯ ん⋯⋯?「⋯⋯あ! え!? ルイの家によく来てた!?」「そうそう!」「え、あの!?」「うん! ユキ姉いっつも私の事ルイ兄の妹だと勘違いしてたよね~!」「あー、そうだったね」「苗字が同じだからってさ~」 うわ、やっば。見れば見るほど思い出してきた。 小学生の時、ルイの家にノノがよく来ていた。互いの三船家同士が仕事関係で仲良かったんだったっけ。さらには苗字が三船同士もあって、よく意気投合してた。 私が行った時にちょうどいる事が多かった

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status