ログイン香港での新しいリゾート施設のオープンに向けて、周辺の観光協会、公的機関を招いての会食が行われる中、窓の外に沈む夕日を見ながら、綾香とのことを思い出していた。
綾香と自分とでは、互いを想う気持ちに温度差があるのはわかっている。綾香にとって自分は、幼馴染の憧れのお兄さんの延長で、自分を男として意識していたかどうかもわからない。でも、それは構わなかった。綾香と通じ合えた今、彼女が自分ほど強い思いを持っていなかったとしても、ゆっくりと気持ちを育てればいい。少なくとも、好意があるからこそ、こうして愛し合うことができたのだから。
本当は、こんな場所で仕事などせずに、彼女と一緒にずっと
あの日、綾香が、ベッドで手を広げて、自分の名前を呼んで、抱きしめてくれたことに、恐ろしいほどに舞い上がっていた。思春期をこじらせすぎたせいか、まるで初めての行為に夢中になる10代のように欲求が収まらず、いくらでも彼女が欲しくなった。盛り過ぎないように、どれほど心の中で自分を戒めたか。
2度目に愛し合った時、最初に比べて柔らかくなったとはいえ、狭く熱い綾香の中に入ると、背筋を快感が這い上り、すぐにも精を零してしまいそうだった。彼女が快感に頬を染めて、自分の首に縋り付き、腰を揺らし始めると、子宮が下りて自分の物がその入り口を叩いているのがわかった。押しつぶすように、そこを突くと
強く首にしがみつき、細い嬌声を上げて達する姿に、あぁ、いつか自分の全てをこの奥に放ちたい、と強く感じた。
二人でシャワーを浴びて、綾香に自分のスウェットを着せて、その可愛い姿を抱きしめてソファで二人で映画を見た。
「あ、これにしようよ。これ、映画館に一緒に見に行ったよね。孝くんが私のワンピースにコーラこぼして、最後まで見れなかった奴」
「俺も結局、最後まで見て無いから、リベンジだな」
ピザを頼み、互いにソースのついた指をなめ合う。
もし、アメリカに行っている間に綾香が来ることがあって、二人がこういう関係になっていたら、それはそれで幸せな妄想なのだが、恐らく自分は早々に日本への帰国を検討しただろう。離れて過ごすなんて、到底無理な話だ。そう思えば、距離を取ろうと頑張ったことにも意味はあった。
「水無瀬さん。どうですか? このサンセットがこの場所の売りなんです。ぜひ、あなたに見ていただきたかった」
観光協会の会長が、ニコニコと話しかけている。
「えぇ、素晴らしいですね。ホテルは湾に沿って、湾曲して作られる予定です。どの部屋からもこのサンセットが見えるようにするつもりですよ」
目の前の男は、素晴らしい!ありがとうございます!と喜んで手を叩き、自分の手を握った。
本来は、夜に行われるはずだった会食だったが、観光協会の会長からの提案もあり、少し時間を前倒しにして、サンセットを見ながらに変更となり、予定より早めに終わった。だから、今夜は、いつもよりゆっくりと話ができると綾香にメッセージを送った。
エリカと食事に行くので遅くなるという返事を見て、眉間に皺が寄る。こういうところに気持ちの温度差を感じてどうしようもない。クリスマスのこともそうだが、本当は、綾香をどこかに閉じ込めて、誰にも見せず、自分だけの物にしたいとさえ思う。
綾香を誰かに取られてしまうのでは、と必死になっている自分を彼女は知らない。これからも知ることは無い。きっと、彼女が好きなのは理性的な大人の男のはずだ。
帰宅したら連絡が欲しいとメッセージを送ったが、なかなか返事が来ず、自分ばかりが焦らされているようで、苛立つ。しつこく連絡をすれば、
『綾香をあまり夜遅くまで連れまわすなよ。嫌われるぞ』
すぐに返事が来た。
『さっき、別れました。少し距離は縮まったと思う』
エリカと一緒でないなら、誰と飲んでいる? エリカに、別れ際に誰かと出会ったか、と聞いたが、そんなことは無いという。こんな遠い場所では、どうにもしようがない。イラついて部屋の中をウロウロと歩き回る。
誰と、どこで飲んでるんだ。あぁ、気持ち悪がられてもいいから、GPSを共有させてもらえば良かった。高辻社長は綾香のGPS情報を持っている。それを知って、いつか脅しに使ってやろうと思っていたが、今は、社長に電話して、綾香の居場所を教えてもらいたい。
心配だから家に帰り着いたら連絡が欲しい、としつこく送った。自分の理性がかなり崩れているのはわかる。しかし、そんな余裕がない。到底、
しばらくして綾香からきたメッセージには、酔って寝入っていた、とあった。誰と飲んでいたのか、どうして帰ってすぐに連絡をくれなかったのか、メッセージでは無くて電話で声が聞きたい、今、本当に部屋にいるのか? 無数に彼女に聞きたいことが胸に湧いて、メッセージをどう書けばいいか、何度も打ち直す。いっそ電話しようか。いや、彼女の文面の最後は、おやすみなさい、だ。
結局、自分も短くおやすみ、と送ったあと、腹立ちまぎれにベッドに携帯電話を放り投げた。
はは、しょせん、彼女の気持ちはこのくらいなのだ。自分が思う気持ちとは大きく隔たりがある。わかってはいても、むなしくなり、そして無性に悲しくなった。そして、どうしようもなく自分の気持ちを揺さぶるくせに、自分と同じほども思いを持ってくれない彼女が少し憎くもあった。
別れた場所から、そう遠くない場所にあるセルリアン系列のホテルのスィートにいると連絡があった。『着物を直してもらえる? 』というメッセージに、すべてが理解できた。もう、まったく‥‥一瞬、孝也に呆れそうになったが、さっきまで自分がどういう状況にあったかを思い出すと、そんなことを言える立場ではないと思い直した。手早く着物を着直して、廉の車でホテルに向かう。「悪い、綾香。その‥‥着物って脱いだら簡単に着れないのな‥‥」恥ずかし気に照れながら部屋から孝也が顔を覗かせる。孝也には廉と一緒にロビーで待っていてもらうように言って、部屋から出て貰った。部屋から放り出された孝也に、廉が『お前はいつまで盛ってんだよ。ホント、懲りないね‥‥』と説教をしていたが、どの口が言ってるんだか、と思って目を合わすと、片方の眉を上げて、黙ってエレベーターへと向かっていった。「ごめんね、綾香‥‥着物って難しいのね」エリカが襦袢の襟元を握って申し訳なさそうに言って項垂れる。 正直、兄の情事の痕跡のある部屋に入るのは、非常に複雑ではあったけれど、シュンとしているエリカに大丈夫だよと伝えてあげたくて、孝也には出て貰ったのだ。「大丈夫。エリカも良かったら今度、母に着付けを教えてもらうといいよ。たぶん、母はすごく喜んで教えてくれるから」襦袢を着つけていると、綺麗なうなじや肩甲骨の辺りに点々と痕が残っていて、さすがに少し恥ずかしくなってしまう。「‥‥綾香は、私が家族になるのは、嫌じゃないの?」エリカのうなじが薄赤く色づいている。「その‥‥私、女性の友達を作るのがあまり上手じゃなくて‥‥なんて言うか、たぶん、可愛げがないから」あぁ、そうか。完璧に見えるエリカは、その容姿でも才能でもきっと妬まれてきたに違いない。実際、綾香もエリカと自分を比べてどうしようもなく妬んでいた。エリカがここまで優秀な経歴を持つには、それ相応の努力を重ねたはずなのだ。そして、その努力と外見の美醜とは全く関係が無い。綾香は、改めて、問題は、自分自身の卑
尻にあたる机の冷たい感触が、体の内の熱さを際立たせる。割り開かれた足の間に廉が体を埋め、内腿の白い肌を優しく撫でさすりながら、その中心へと唇を這わせる。舌でその先の膨れ上がった花芯を突くようにされると、腰の辺りから強い痛みに似た刺激が体を貫いた。「ん‥‥あっ」机に後ろ手をつき、首をのけぞらせて腰を突き出すようにして体を開いた。廉は、舌で花芯を可愛がりながら、隘路に指を挿入してその中の窪みをさぐる。「最初は、1本しか入らなかったのに。綾香、見てごらん俺の指がいくつ入っているかわかる?」くちゅくちゅと中で指が蠢いているのを、ぼんやりとした視線で見つめていたが、廉が膨れ上がった蕾をキュッと吸い上げた刺激で、再び強く目を瞑って体をのけぞらせた。「あぅ‥‥」「すごい、溢れてくるな‥‥」廉が、うっとりとした口調で呟く。零れ落ちた蜜が太ももだけではなく、執務机の下の絨毯にもシミを作っていた。「廉、ん‥‥もう、お願い」指と口で刺激を受け続けて、体中を火照らせながら、指ではないものでその空間を埋めて欲しくて仕方なかった。「何を、お願いしてるの?」廉が意地悪な顔をして、体を火照らせながら、腰を揺らす綾香を見上げる。襞を大きく指で開き、中をなめ上げると、舌を突き入れてあふれ出る蜜をすすり上げる。「あぅぅん‥‥お願い、あっあっ」時折、蕾をなめ上げられるたびに強い快感で腰が跳ね、尻が浮く。廉は、それを両手で押さえるようにしてさらに刺激を与え続けている。「ちゃんと言って、ほら、どうして欲しいの?」ひどい、わかってるくせに‥‥その意地悪に、なぜか興奮が高まりさらに体の奥から蜜があふれてくる。「欲しいの‥‥」綾香は、焦らされている興奮と、おねだりをさせられている羞恥とで体中が燃えているようだった。「何が欲しいのか‥‥ちゃんと言って」口を拭いながら体を起こし、綾香の体を抱きしめて耳元に囁く。「はっ、あぁ‥‥廉が、廉
人気のないオフィスは静かで、ビル全体の空調が効いているとはいえ、ひんやりとしている。「休日でも営業の誰かがいることが多いのに、さすがに年末年始の休暇には誰も居ないね」専務室に入ると、廉はコートを脱いで机の脇のハンガーにかけた。「とはいえ、この時期宿泊業はかきいれ時だからな。本社は休みでも、支社は皆忙しいよ」「廉も年末ぎりぎりまでものすごく忙しかったものね」肩にかけていたファーをソファーの背もたれにかけて、廉が入れてくれたラテに口をつける。「着物、良く似合うよ」隣に座った廉が、うなじを優しく撫でる。すぐに体が火照ってしまう。そっと手に持っていたカップをテーブルに置かれ、顎を掴まれて唇を奪われた。優しく唇をなぞるような口づけが、いつしか深く互いの舌を絡めとるようなものになっていく。「んっ‥‥ぁあ」廉の熱い手が着物の裾を割って中へ入り込もうとしている。綾香は、今日下着をつけていなかったことを思い出した。下着をつけずに外を歩いていたことを廉に知られるのは、かなり恥ずかしい。「あ、待って‥‥廉、ダメ」太ももの内側を撫で始めた手を掴む。「綾香、大丈夫だよ。誰もいない‥‥」廉はそう言いながら、唇を寄せて綾香の口を塞ぎ、内ももにある手を撫で上げるように中心へと滑らせる。その指が綾香の和毛に触れるとピタリと廉の動きが止まる。「‥‥綾香、どういうこと?」綾香は、恥ずかしさのあまり全身が燃えるかと思うほどカァっと熱くなった。「あ、その下着のラインが気になるから‥‥」視線に耐えられず、両手で顔を覆う。廉がその手を引いて立たせる。「綾香、机に手をついて」耳元で、低い甘い声が囁く。着物の裾を大きく捲り、後ろから臀部が見えるような格好にさせられる。「あ、は、恥ずかしい」「何も着けて無かったのか。なんて無防備なんだ。まったく。知ってたら部屋から出さなかったのに」専務室の執務机に手をついて、足を開き、あられもない姿を晒していることに羞恥
年末の休暇に入り、実家へ戻って慌ただしく正月の準備を手伝う。実家へ帰えるときは、前回と同じように廉に送ってもらったが、廉はその日のうちに都内へ戻って行った。一緒に年越しをするために、離れには、エリカが滞在している。「ねぇ、綾香。この飾りはどこに飾るの?」「あ、これは勝手口用だから、台所の出口と裏木戸の方ね」エリカに聞かれ、指示を出す。我が家は、会社を経営しているだけあって、年始の訪問客は多い。だから、家周りの準備は結構大変だ。母の教室の生徒さんたちの年始の挨拶もあり、昔ながらの慣習に従った正月準備は、マナー講師としては手を抜けないところもあるのだろう。この時期は、宮島さんだけでは足りないので、母の教室の卒業生も手伝いに来てくれる。年末からずっと人の出入りが多くとても賑やかだ。大晦日の夜には、廉も紫衣さんもやってきて、賑やかにカウントダウンをした。エリカは、大晦日の夜にこんな風に大勢と過ごすのは久しぶりだと言って、とてもうれしそうにしていた。新年最初の朝には、皆で食卓を囲み、父が新年の挨拶をする。「今年は、エリカさんを迎えて、家族が増えて嬉しい限りだ。良い一年にしていこう」昼過ぎからは、客がひっきりなしにやってくる。廉は、父とともに会社関係の新年の挨拶につきあっていた。翌日、孝也が『家にいると客の相手ばかりになる。初詣に行こう』と言い始めた。「そうねぇ。せっかくエリカさんもいるんだし、綾香と二人で着物を着ると素敵だわ。そうだわ、それで4人で初詣に行ってらっしゃいよ」母は、父に付き合って仕事をさせられている廉を、逃がしてくれようとしているのだというのもわかった。母がいつの間にか仕立ててあったエリカの着物を、綾香が着つけることになった。「私、着物を着るの初めてなの。凄く嬉しい。幸せ過ぎる」エリカが、箱から仕立てられた着物をうやうやしく取り出して、泣きそうな顔で見ている。「ねぇ、綾香。日本の人って着物を着る時、下着をつけな
「で、今日は、お泊りはしないで帰るわけ? 綾香は」イブの夜、朱莉の家で朱莉の弟を入れた4人で鍋を囲む。フューシャピンクの部屋着を着てくつろぐ菱本が、半目で綾香を見つめる。「約束だから行っておいで、とは言ってくれたけど‥‥向こうは仕事で忙しいのになんだか申し訳ないなって‥‥思ったり、なんか、して‥‥ね」一応、昨日、会社で朱莉には直接伝えたし、グループメッセージであらかじめ連絡はしたのだが、菱本には、裏切り者っぽく扱われている。「まぁ、まぁ、いいじゃん。綾香もこの何週間かは、ニヤニヤする日もあれば目の下に巨大なクマを飼う日もあって、忙しかったんだからさ」朱莉が、ヨシヨシ、という感じでとりなしてくれる。「で、女になった感想はどうですか?」朱莉の(見た目は妹、戸籍上は)弟の聖がニヤニヤとしながら聞いてくる。菱本のことを知ったのは、この聖がきっかけだ。「ひ、聖ちゃん‥‥」あまりの直球に、綾香は口をパクパクさせるだけで、何も言葉が出てこない。「水無瀬専務、いい体してるもんね~。すごく良い仕事してくれそう」菱本がうっとりしながら鍋の中の餅麩をつついている。「すっごく、強そう」「あ、わかる、超強そう」「えー強そうな人なんだ。ワイルド系?」綾香が何も言わないのをいいことに、3人で好きに盛り上がっている。まぁ、このくらいはお泊りのドタキャンの贖罪として、良いことにしなくては。そう思って耐えることにした。菱本が『ワイルドって感じじゃないけど、もうずっと強そう。駅弁とかやりながら移動しそうな感じ』と言う言葉に、他の2人がキャー!と叫ぶ。残念なことに、綾香にはその意味がわからなかった。『駅弁』をする、とは何か、後で調べてみようと思った。12時近くまで、菱本の「目指せエリカ様ボディ計画」の話や朱莉の忘れられない元カレの話で盛り上がり、その後、深夜に綾香はタクシーを呼んでもらって帰宅した。タクシーの中で廉にメッセージを送る。『まだ、起きてる?』すぐ
「お帰り、綾ちゃん。廉くんも。孝くんと彼女さんもお待ちかねだったのよ」上機嫌の母が出迎えてくれる。廉はそっと綾香の腰に手を回してさりげなく寄りそう。「ねぇ、綾ちゃん、孝くんの彼女って誰だと思う?」玄関からリビングに向かう途中で母が嬉しそうに問う。さっき、答えを聞いてしまったの、ごめんね、お母さん。綾香は、心の中でそう呟いた。リビングに入ると、窓際の長いソファに、孝也とエリカが並んで座っていた。 エリカが、綾香の姿を目にして緊張した様子で立ち上がる。「あ、綾香、この間は夕飯に付き合ってくれてありがとう」非の打ちどころのないようなこの人でも、こんなに緊張して不安そうになることがあるのか、とそう感じた。ずっと勝手な勘違いで打ち解けられずにいたことが、本当に申し訳なく感じた。「こちらこそ、誘ってくれてありがとうございました。また、食事に行きましょうね」心からの笑顔を向けて、そう告げると、エリカの顔が明るく輝いた。「あら、綾ちゃん、声が随分と変よ。風邪? それで寝坊したの?」夕飯の準備ができたと宮島さんが教えてくれたので、ダイニングへ移動する。「俺は、綾香を送って来ただけだから、これで失礼します」「え、そんなこと言わないで廉くんも一緒に食べましょうよ。宮島さんにもそのつもりで準備してもらったし」結局、廉も一緒に食卓につき食事をすることになった。書斎から出て来た父がいつになく寡黙に食事を取っている。とはいえ、いつものように会話のほとんどを母が仕切っていて、エリカが質問攻めにされてアワアワしているのを皆で微笑ましく見ているという晩餐だったのだが。食後のコーヒーを運ぶ手伝いをしようと席を立つと、一緒に廉もついてきた。 台所の宮島さんに、あとはするから、と伝えて下がってもらう。「トレーは俺が運ぶから。無理しないで」コーヒーのトレーを廉に運んでもらい、リビングに足を踏み入れると、ちょうど孝也が真剣な表情で父に話をしていた。「結婚を前提にして、彼女と一緒に暮らしたいと思ってる」孝