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第664話

Author: リンフェイ
理仁は無理やり笑顔を作って言った。「これは妻から俺への文句かな?でも、食欲がなくて、あまり食べたくないんだ。それに、こんなに必死になってるのは早く仕事を終わらせて、君のもとに帰りたいからなんだよ」

「焦る気持ちはわかるけど、体を一番に考えて。今どこに泊ってる?ホテル?食欲がなかったら、お粥でもさっぱりしたもの食べてみて。

それに、理仁さん、もうちょっとスマホを高くして、ちゃんと顔を見せてちょうだい」

理仁は動かなかった。

唯花は怒りだした。「理仁さん、三つ数えるから、顔を見せなかったら、今年はもう口を聞かないし、電話も出ない、メッセージも返さないからね。一……」

彼女が「一」と数えた途端、画面に理仁の顔が現れた。

彼は明らかに具合が悪そうで、普段から冷たくて無表情な顔が不自然に赤く染まっていた。それを見た唯花はびっくりして声を上げた。「お医者さんに行かなかった?今きっと高熱よ。理仁さん、どれだけ私を心配させたいの!」

理仁は手で頭を支えながら、強がって言った。「薬は飲んだ、薬局で買った風邪薬なんだが、あまり効かないようだ……たぶん、症状に合ってないかも」

「今会社にいる?」

「会社にいるけど、オフィスじゃなくて、会社のマンションだね。会社はいくつか社員用の部屋を持ってるんだ。出張する社員のために用意された部屋なんだ」

彼が泊まっている部屋には書斎があり、今ちょうどその書斎のデスクの前に座っている。

風邪薬を飲めばすぐ治ると思っていたが、時間が経つにつれ熱が上がる一方だった。

ますますきつくなった。

普段、健康そのものの理仁はいつもは風邪も引かないのに、風邪を引くと、すぐこじらせて重症になってしまった。

彼は自分の体質を過信していた。

ちゃんと持ちこたえられると思っていた。

「今すぐ病院に行って、自分で運転しないで、タクシーで行って!」

唯花は命令するように言った。「聞いてるの?今すぐ病院に行きなさい!」

心配でたまらなかった。

大の男なのに、風邪を甘く見過ぎている。

体温がどんどん高くなって、つらくないのだろうか。

「俺はちょっと……唯花さん、すまん、一旦電話を切る」

理仁はこれ以上耐えられないと感じて、急いで電話を切った。気を失うところを彼女に見せて、驚かせたくなかったのだ。

そして、子会社の社長に電話をかけ、病院へ連
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