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4 秋の訪れとあの人の影

Aвтор: けいこ
last update Последнее обновление: 2025-07-27 23:05:34

「みんな……どうしてこんな私にそこまで優しくしてくれるの?私のこと、本当は軽蔑してもいいのに」

「軽蔑するわけないでしょ?みんな、結菜ちゃんのおかげで幸せでいられるんだから」

「……幸せ?」

「そうだよ。結姉は俺達に幸せを与えてくれてる。美味しいご飯作ってくれるし」

「僕達のためにたくさんの家事をしてくれて、自分の時間も犠牲にしてくれてる」

「そんな、犠牲だなんて。私はみんなのために何かしたいって……」

「そういう気持ちがさ、俺達にはちゃんと伝わってるんだ。結姉がいてくれるから、ここにいることが心地よくて安心できる」

「俺は、今はもう自分の家よりもここが好きだよ」

「祥太君……」

「僕も……です」

「そういうこと。みんな、結姉が大切なんだ。だから、俺達でさっきの男から結姉を守りたい」

3人は、私を見つめて再び同時にうなづいた。

「……みんな……。そんな優しい言葉をもらえるなんて、本当に……嬉しい。ありがとう。だけど、川崎君、あの様子じゃ何をするかわからない。また……みんなに迷惑をかけてしまうかも知れない。元はと言えば私のワガママが招いたことなのに……。どうしたらいいのか……」

本当にそう思った。

年上の私が引き起こしたことを、年下の彼らに背負わせるなんて……

そんなバカなこと……できるわけない。

私は本当に最低だ、親代わりなんて、とんでもない。

「結菜ちゃん。そんなつらそうな顔しないで」

「そうだよ、結姉。迷惑かけて申しわけないって言われても、俺の気持ちは何も変わらない。必ず結姉を守る」

「そうですね。あんな凶暴な男から結菜さんを守りたいです。申し訳ないなんて思う必要ないです」

「俺も、結菜ちゃんを守りたい。結菜ちゃんのために何かできるなら、それは本当に俺にとっての「幸せ」だから」

「みんな……ごめんね。本当に……ありがとう」

そんな当たり前の言葉しか出てこない。

だけれど、3人への感謝の気持ちは、私の心に満ち溢れていた。

「とにかく、これからは毎日結菜ちゃんを3人で交代して守る。それでいいね」

「もちろん、了解」

「わかりました」

迷惑をかけてしまうことには心から申し訳ないと思った。

だけれど、この3人がいてくれることで得られる安心感は、言葉では言い表せないほど大きかった。
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