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第119話

Author: タマタツ
物音を聞いた男は、シャツのボタンをまだ一つしか留めていないまま、慌てて浴室へ駆け込んできた。

心配そうな眼差しで彼女を見つめる。

「どうした?怪我はない?」

絃葉は一瞬で頬を真っ赤に染めた。

「だ、大丈夫。うっかり落としちゃっただけだから......」

男は身をかがめて歯磨き粉を拾い上げた。

立ち上がった拍子に、留めたばかりのボタンが「プツン」と弾け飛ぶ。

白いシルクのシャツがゆるくはだけ、引き締まった腹筋と厚い胸板が隠すことなく絃葉の目に飛び込んできた。

平静を装おうとしても、思わず喉が上下し、ますます顔を伏せるしかない。

心臓は激しく鼓動を打っていた。

まさに歩くフェロモン。こんなの、誰が平然としていられるというの。

男は何事もなかったように彼女の歯ブラシを受け取り、歯磨き粉を絞って手渡した。

「はい。終わったら家まで送るよ」

絃葉はようやく我に返る。

「う、うん」

鏡に向かって必死に歯を磨き始めたものの、頭の中にはさっきの光景ばかりが浮かぶ。

まるであのヨットで見たときと同じくらい衝撃的だった。

必死に気を紛らわせようとしても、その映像は何度も脳
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