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第766話

Auteur: おミカン
梨乃はさっさとその場を後にする。

章は眉を寄せ、無意識に咳払いをする。

花音がドアをノックして入ってくると、不思議そうに彼を見つめる。

「どうしたの?顔が赤いけど、熱でもあるんじゃない?」

花音はそう言って、熱を測ろうと手を伸ばしてくる。

章は上体を反らし、さりげなくその手を避ける。瞳の奥に、ほんのわずかな気まずさがよぎる。

「何でもない。少し暑いだけだ」

暑い?

花音がエアコンに目をやると、電源は切れたままだった。

「どうりで。エアコンがついてないじゃない」

それ以上深く追及することなく、話題を変える。

「今日の午後、実家での食事に付き合ってくれない?母から何度も言われてて。お願い、助けてよ」

胸の前で両手を合わせ、拝むような仕草をする。

章は穏やかな表情を崩さず、短く応じる。

「ああ、いいよ」

花音の顔に、ぱっと花が咲いたような笑顔が広がる。

二人が車を取りに下へ降りると、章の車のすぐ隣に、梨乃の車が停まっていた。

梨乃は窓を開けたまま、どうやらトラブルに見舞われているようだった。何度試してもエンジンがかからないのだ。

「小林さん、どうしましたの
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