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再び頂点に戻る、桜都の御曹司にママ役はさせない
再び頂点に戻る、桜都の御曹司にママ役はさせない
Author: こふまる

第1話

Author: こふまる
藤宮夕月(ふじみやゆづき)は娘を連れて、急いでホテルに向かった。

すでに息子の5歳の誕生日パーティーは始まっていた。

橘冬真(たちばなとうま)は息子のそばに寄り添い、ロウソクの暖かな光が子供の幼い顔を照らしていた。

悠斗(ゆうと)は小さな手を合わせ、目を閉じて願い事をした。

「僕のお願いはね、藤宮楓(いちのせかえで)お姉ちゃんが僕の新しいママになってくれること!」

藤宮夕月(ふじみやゆづき)の体が一瞬震えた。

外では激しい雨が降っていた。

娘とバースデーケーキを濡らさないようにと傘を差し出したが、そのせいで自分の半身はずぶ濡れになっていた。

服は冷たい氷のように張り付き、全身を包み込む。

「何度言ったらわかるの?『お姉ちゃん』じゃなくて、『楓兄貴(かえであにき)』って呼びな!」

藤宮楓は豪快に笑いながら言った。

「だってさ、私とお前のパパは親友だぜ~?だからママにはなれないけど、二番目のパパならアリかもな!」

彼女の笑い声は個室に響き渡り、周りの友人たちもつられて笑い出した。

だが、この場で橘冬真をこんな風にからかえるのは、藤宮楓だけだった。

悠斗はキラキラした瞳を瞬かせながら、藤宮楓に向かって愛嬌たっぷりの笑顔を見せた。

「で、悠斗はどうして急に新しいママが欲しくなったんだ?」藤宮楓は悠斗の頬をむぎゅっとつまみながら尋ねた。

悠斗は橘冬真をちらりと見て、素早く答えた。

「だって、パパは楓兄貴のことが好きなんだもん!」

藤宮楓は爆笑した。悠斗をひょいっと膝の上に乗せると、そのまま橘冬真の肩をぐいっと引き寄せて、誇らしげに言った。

「悠斗の目はね、ちゃーんと真実を見抜いてるのさ~!」

橘冬真は眉をひそめ、周囲の人々に向かって淡々と言った。

「子供の言うことだから、気にするな」

まるで冗談にすぎないと言わんばかりだった。

だが、子供は嘘をつかない。

誰もが知っていた。

橘冬真と藤宮楓は、幼い頃からの幼馴染だったことを。

藤宮楓は昔から男友達の中で育ち、豪快な性格ゆえに橘家の両親からはあまり気に入られていなかった。

一方で、藤宮夕月は18歳のとき、藤宮家によって見つけ出され、家の期待を背負って、愛情を胸に抱きながら橘冬真と結婚した。

そして、彼の子を産み、育ててきたのだった。

個室の中では、みんなが面白がって煽り始めた。

「悠斗はママといるのが好き?それとも楓兄貴といるのが好き?」

悠斗は迷いなく、笑顔で答えた。

「もちろん、楓兄貴が一番好き!ママなんて、ただの田舎者だもん!」

藤宮楓の目の奥に、一瞬だけ鋭い冷笑がよぎったが、それはすぐに消えた。

彼女は悠斗を優しく抱き寄せ、その額に軽くキスを落とした。

藤宮夕月の全身を、冷たい血が駆け巡る。

悠斗は昔から、人と触れ合うのを嫌がる子だった。

藤宮夕月が抱こうとすると、いつもさっと身を引き、拒絶の態度を示していた。

彼は父親に似て、冷たく、他人を簡単に寄せつけない性格だった。

なのに――

今、悠斗は藤宮楓の腕の中にすっぽりと収まり、甘えるように笑っている。

その光景を見ている橘冬真の瞳には、藤宮夕月が一度も見たことのない、柔らかな眼差しが宿っていた。

まるで本当の家族のように。

「ママ……」

娘の小さな声が、藤宮夕月を現実へ引き戻した。

彼女は涙にかすむ視界の中、美優(みゆ)を見下ろした。

「美優の誕生日のお願いは……何?」

夕月の声は震えていた。

美優は、まっすぐに彼女を見つめて答えた。

「美優はママさえいればいい!」

「じゃあ……パパと悠斗は?」

熱い涙が美優の手の甲に落ちた。

美優は目を見開き、慌てたように夕月の手をぎゅっと握った。

「ママ、泣かないで!私、悠斗に言ってくるね!叔母さんにばっかりくっつかないでって!」

美優と悠斗は双子だった。

藤宮夕月が彼らを産んだとき、大量出血で意識が朦朧としていた。

朦朧とする意識の中、彼女は必死に橘冬真へ電話をかけた。

しかし、その電話に出たのは――藤宮楓だった。

「冬真なら、ポップコーン買いに行ったよ?今、私と一緒にディズニーで花火見てるの!だから、安心して出産してね~!」

その瞬間――

藤宮夕月の耳に、あの日の花火の爆裂音が響き渡った。

あの日以来、彼女の心は深く傷つき、癒えることはなかった。

藤宮夕月は美優の手を握りしめながら、静かに個室のドアを押し開けた。

場の空気が、一瞬にして凍りついた。

「……藤宮さんがどうしてここに?」

まるで、彼女の存在自体が「場違い」であるかのような視線。

ここは、本来なら彼女の息子と娘の誕生日を祝う場だった。

それなのに——

彼女が現れたことで、まるで招かれざる客が紛れ込んだかのような空気が漂っていた。

藤宮楓は悠斗を腕に抱え、無言のまま彼女を見つめた。

その瞳には、明らかに「これは私のものよ」と言わんばかりの宣言が滲んでいた。

藤宮夕月は、持ってきたケーキの箱をテーブルの上にそっと置いた。

彼女の顔には、まだ拭いきれない雨粒が残っている。

悠斗は顔を上げ、藤宮楓を見た。

彼女の顔は完璧に整えられた美しいメイク、黒髪はふわりと柔らかく整えられていた。

次に、悠斗は藤宮夕月を見た――

濡れた髪、疲れた表情、そして濡れた服が張り付いたままの姿。

悠斗の小さな口が、僅かに不満そうに尖った。

藤宮夕月は、ケーキの箱をそっと開いた。

そこにあったのは、彼女が一日かけて手作りしたケーキ。

表面には、悠斗と美優のために、彼女が何時間もかけて描いた手作りのイラストが彩られていた。

ナイフを手に取り、ケーキを二つに切り分けようとしたとき――

彼女の指先が、微かに震えた。

藤宮夕月は、切り分けたケーキの半分を悠斗の前にそっと押し出した。

「悠斗、お誕生日の願いを叶えてあげるわ。今日から……私はもう、あなたのママじゃない」

「……何を言ってる?」

橘冬真の冷たい声が響いた。

藤宮夕月は彼を見つめた。

そこにはもう、かつての未練は微塵もなかった。

「離婚しましょう。美優は私が引き取る。悠斗はあなたのもとへ」

「ママは、拗ねてるの?」

悠斗の目が細められる。

その冷ややかな瞳は、まるで橘冬真のそれと瓜二つだった。

「ねえ、ママ、もういい加減やめてよ?だから一緒に誕生日を過ごしたくないんだ。いつも僕が何を食べるか、いちいち口出しするでしょ」

悠斗はケーキに描かれたキャラクターのイラストを見つめた。

……下手くそだ。

「それにさ、もうママのケーキには飽きたんだよ!今日は楓兄貴がくれたケーキを食べる!」

「悠斗!!」

美優の悲痛な声が響く。

「ダメだよ!外のケーキを勝手に食べちゃ!アレルギー出ちゃうでしょ!」

「大丈夫よ」

藤宮楓は、どこか咎めるような声で言った。

「悠斗は男の子なんだから、もっとたくましく育てなきゃ。アレルギーだって、藤宮さんが過保護すぎるせいで、ちょっとの牛乳も口にできないんじゃない?」

彼女は悠斗を抱きしめながら、そっと囁いた。

「ねえ、悠斗、私を信じて?もっと牛乳入りのケーキを食べれば、自然と抗体ができて、アレルギーも治るのよ」

悠斗は大きく頷いた。

「僕は楓兄貴を信じる!ママは田舎者だから、何にも知らないんだ!」

——バキンッ

藤宮夕月は、壊れたように笑った。息をするたびに、鼻腔いっぱいに広がる鉄の味。

七年かけても、橘冬真の心は温まらなかった。

五年かけて育てた我が子は、自分の身を裂く刃になった。

「……私のケーキが嫌いなら、捨てればいいわ」

喉が焼けるように痛む。まるで、鋭い刃で喉を裂かれたようだった。

「悠斗――」

「ママは、ずっとあなたのためにできる限りのことをしてきた。あなたが新しいママを欲しがるなら……藤宮楓にその席を譲ってあげる」

彼女は、静かに息子を見つめた。

「これが――最後のお祝いよ。お誕生日、おめでとう」

藤宮夕月は、美優の小さな手をそっと握りしめると、優しく微笑んだ。

「行こう、美優」

夫も、息子も。

彼女は、もう何もいらなかった。

「藤宮夕月」

橘冬真の冷たい声が、背後から響いた。

その端正な顔立ちは、冷たい霜に覆われたかのように険しかった。

「……子供の言葉を、真に受けるのか?」

藤宮夕月は、静かに微笑みながら答えた。

「ええ。私は本気よ。明日の午後3時、霧坂市役所で。遅れないでね」

藤宮夕月は、七年間愛し続けた男を見つめた。

だが、その瞳には、もう何の未練も残っていなかった。

決別の色しか、なかった。

彼女が踵を返したその時――

扉の向こうに、一人の男が立っていた。

鋭い眼差しと、彫刻のように整った顔立ち。

柔らかな光に照らされたその姿は、堂々としていて威圧感すら漂わせていた。

その目が、まるで一つの「劇」を見届けているように、興味深そうに藤宮夕月を見ていた。

――彼を、藤宮夕月は知っていた。

桐嶋涼(きりしまりょう)。

桜都の名門たちの頂点に立つ御曹司。

表向きは橘冬真と親しいが、実際には水面下で対立し続ける男。

悠斗と美優の誕生日パーティーに名門たちが招かれていることは知っていたが、まさかこの桐嶋涼までが姿を現すとは――

藤宮楓は、悠斗を子供用の椅子に座らせると、すぐに目を輝かせながら手を振った。

「おーい!涼!呼んだらすぐ来てくれるなんて、さすが!」

しかし、桐嶋涼は彼女を一瞥することすらしなかった。

「……別に、お前のために来たわけじゃない」

その言葉とともに、彼の視線は店の奥へと向かった。

そこにいるはずの女の姿は――もうなかった。

藤宮夕月は、すでにその場を去っていた。

桐嶋涼の唇が、ゆるく持ち上がる。口元には、くっきりとした小さなえくぼが浮かんでいた。

「お前の奥さん、離婚するらしいな?だったら俺も……呼び方を変えなきゃな?」

「そんなことはありえない」

橘冬真の声は、冷たくも揺るぎないものだった。

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Comments (2)
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お神楽
こーゆーアレルギーは気合いで治すみたいな脳筋と言葉づかいがきたないおばちゃん無理
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yas
こういう話ほんとありえないんだけど! どう育てたら生まれてからずっと一緒にいた母親を5歳にしてこんな風に酷い子に育てられるの!? 5歳の男の子なんて、一番、ママが大好き!ママが世界一かわいい!って時期でしょ!
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