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第328話

Author: 春さがそう
彰がまるで自分の家のようにくつろいでいるのを見て、紗季は額を押さえた。どうしようもないという顔だ。

彼女は歩み寄り、彰の向かいに座った。

彰は手慣れた様子で海老を彼女の目の前の皿に置いた。

紗季は箸を取り、不思議そうに彼を見つめた。

「こんな俗世から離れたところまでいらして、会社の方は放っておかれるのですか?」

「会社はすでに私のチームが管理しています。私は週に五回会議に出て、毎日一回、彼らから業務報告を聞くだけでいいのです」

彰は眉を上げた。

「寝ていても、収入は絶えず入ってきますから」

紗季はチッと舌打ちをした。

「そんなこと、お兄ちゃんに聞かせないでください。今、うちの宝飾グループは目が回るほど忙しいのに、あなたはここでのんびりされて、彼が羨ましがりますわ」

「私の話を聞いて、それだけしか思いませんか?」

彰は笑うでもなく笑うような表情で彼女を見た。

「他に、何も思いつきませんか?」

「他とは何です?」

紗季は一瞬、彼の意図が理解できなかった。

その様子に、彰は泣き笑いするしかなかった。

「もし誰かが私と一緒になれば、将来もこういう生活ができます。裕福になり、そして、二十四時間そばにいる恋人まで手に入る、と」

紅葉がぷっと笑い出した。

「あんた、回りくどいな。お嬢様に惚れた、付き合いたいって、素直に言えばいいじゃない」

「ゴホン、ゴホン……」

彰は彼女のあまりの直球に驚き、返す言葉もなかった。

その様子に、紗季も少し気まずくなった。

「桐山さん。お兄ちゃんに頼まれたから、そしてファンとして音楽の話をしに来ただけだと、そう仰ったではありませんか。他のことは考えにならないでください」

「では、私があなたを好きになってしまったとして、それを胸に秘めて言わないわけにもいかないでしょう。あなたに惚れたことと、ファンであること。両者は衝突しませんよね?」

彰は相変わらず直球で、彼女への好意を隠そうともしなかった。

紗季は彼の言葉を無視し、ただ料理を彼の前に押しやった。

「召し上がてください。これが美味しいかどうか、お試しになってみては?」

彰はそれを聞き、少し嬉しそうにした。

「これは、あなたの好物ですか?」

「いいえ。私が一番嫌いな料理ですわ。どうしてここにあるのか分かりませんけれど」

紗季は彼に向かって微笑ん
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