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第五十話

Auteur: 麻木香豆
last update Date de publication: 2025-12-22 08:17:48

 寧人は、壁にかかった時計を何度目かも分からないほど見上げて、ため息をついた。

 針はとっくに日付が変わっているのに、一護はまだ帰ってこない。

「……遅いなぁ」

 誰に聞かせるでもない独り言が、静まり返った部屋に落ちる。

 仕方なくつけっぱなしにしていた深夜のバラエティ番組は、下品な笑い声と意味のないテロップばかりで、頭に一切入ってこない。

「もう寝るか……」

 一護を待つためだけにつけていたテレビだった。目的を失ったそれは、ただの騒音でしかない。

 リモコンを手に取り、ぶつりと電源を切ると、部屋は一気に静寂に包まれた。

 布団に潜り込む。

 隣が、やけに広い。

 いつもなら、当たり前のようにそこに一護がいて、触れなくても、言葉を交わさなくても、ただ横にいるだけで落ち着けた。

 それが今日は、空っぽだ。

「イチャイチャしなくてもさ……横にいてくれるだけで、すごく安心してたのになぁ……」

 また独り言だ。

 一人になると、どうも口が勝手に動く。

 視線が、使われていない隣の枕に向く。

 少しへたって、中央がこんもりと盛り上がったその形が、なぜか一護の尻のラインに見えた。

「……っ」

 
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