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一致団結①

Auteur: 緋村燐
last update Dernière mise à jour: 2025-09-24 17:31:00

 夏休みの後半はあたしにとって地獄だったかもしれない。

 前半に皆のメイクをしていた所為で、宿題が溜まりに溜まっていた。

 全く手を付けていなかったわけではなかったけれど、それでも夏休みの半分を丸っと使わなければ消化出来ないほどだった。

 そんな風に宿題に追われていた所為もあって、あたしは夏休みが終わるまで全く気付かなかった。

 陸斗が元総長だったことが学校で広まっていたことに……。

「日高、ごめん!」

 始業式の日、朝から陸斗にそう謝ったのは美智留ちゃんだった。

「隣の県の事だから、元総長だってわざわざ言わなきゃ分からないなんて言って地味男止めさせたから……こんな風にバレて騒がれることになったのはあたしの所為だよ……」

 だから本当にごめん、と項垂れる美智留ちゃん。

 でも、当の本人である陸斗はそれほど気にしてはいないみたいだった。

「気にすんなって。元々地味な格好は保険みてぇなもんだったし、バレるときはバレるって」

「でも、あたしが勧めなかったら止めなかったでしょう?」

 本人は気にしていないのに、美智留ちゃんの方がずっと気にしている。

 確かに美智留ちゃんの言葉があったから地味男を止めたんだろうけれど……。

「しつけぇぞ。俺は気にしてねぇって言ってんだろ?」

「でも……」

 美智留ちゃんは尚も納得せずに周りに視線をやった。

「うわぁ。今、田中さんを睨んでたよ? こっわ」

「やっぱり元総長って本当だったんだ?」

「やっぱりなー。日高に睨まれたときマジで怖かったから。むしろ納得って感じ」

「バッカ、お前それちょっかい掛ける方が悪ぃだろ?」

 周りではあたし達を遠巻きにしているクラスメイトがこっちを見て色々言っている。

 完全に怖がられてる気がする……。

「ごめん、この周囲の状況で気に
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