Share

3話

Penulis: 籘裏美馬
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-03 17:49:52

「明日も大学だろ?長居しても悪いし、そろそろ俺も家に帰るよ」

奏斗は、自分の腕時計を確認して部屋の扉に向かって歩いて行く。

そして、そこで思い出したようにふと私に振り向いた。

「そうだ。明日、1日丸々オフなんだ。大学終わる時間分かったら連絡して。迎えに行く」

「──オフなの!?分かった、連絡するっ!!」

奏斗の言葉に、私はさっきまで感じていた寂しさとか、告白をまた流されてしまった悲しさなんてどこかに行ってしまって、がばりと起き上がった。

私の行動に、苦笑いを浮かべた奏斗が「うん」と頷いて、ひらひらと手を振って部屋を出て行った。

階段を降りる足音が聞こえて、そしてお母さんとお父さんに「お邪魔しました」と言っている声が聞こえた。

暫くしてから、隣の奏斗の家。

奏斗の部屋の明かりがついた。

私は、明日の事を考えると嬉しくて嬉しくて。

奏斗が丸1日オフなんて、数ヶ月ぶりだ。

明日は、ずっと奏斗と一緒にいられる。

そんな日に、大学があるなんて、と少し惜しい気もするけど、勉強は好きだし、就職したい会社のために勉強は大事。

来年には就活にだって入るから、大学はちゃんと通わないと。

だけど、私は嬉しくて昂った気持ちのせいで暫く眠りにつけなかった。

翌朝。

大学に行く前に、隣の奏斗の家に行く。

奏斗のご両親は、仕事で世界中を飛び回っている人達。

だから今、奏斗の実家には、奏斗1人だけしかいない。

私は渡されていた合鍵を使い、家に入って階段を上っていく。

奏斗の部屋も、私と同じように2階にある。

まだ、奏斗が芸能界に入る前。

普通の学生だった時は、中学生の時も、高校生の時も、奏斗は自分の部屋のベランダから隣の私の部屋にやって来ていた。

だけど、私は怖くてそんな事はできない。

だから、普通に玄関から入る。

「奏斗ー!朝だよ!」

外から声をかけながら、奏斗の部屋のドアを開ける。

瞬間、ふわりと香る、奏斗の匂い。

奏斗の部屋なんだから、奏斗の匂いがするのは当然なんだけど、だけど。

何だか、そわそわとして落ち着かない。

「奏斗?起きてる?」

奏斗のベッドに近付いていく。

私が部屋に入った時から、奏斗が起きる気配がないし、ベッドのこんもりと盛り上がった山は微動だにしない。

「もうそろそろ起きないと、奏斗」

「んー……うるさい、香月……」

もぞ、とベッドの上の山が動いて、奏斗の掠れた低い声が聞こえる。

ようやく起きてくれた、と思って、私はもう1度だけ奏斗に声をかけてから、大学に行こうとした。

「じゃあ、行ってくるから。終わる時間後で連絡しておくから、しっかり顔を隠して来てね!無理なら──」

「行く。迎えに行く、から……。気をつけて行ってらっしゃい……」

もぞ、と布団から顔を出した奏斗が、まだ眠気の残るとろんとした目で私に向かって手を振った。

私は、ふは、と笑い声を出してしまう。

そして、私も奏斗に手を振り返した。

「うん。行ってきます、またね奏斗」

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…   12話

    合コンは、思っていたよりも賑やかで、楽しい時間になった。 「合コン」のイメージを勝手にこんな風なものだ、とつけていた私は、拍子抜けしてしまう。 これだったら、大学の飲み会と同じような雰囲気。 少しだけ男の子と距離は近いけど、ただ、それだけ。 変に体を触られたりしないし、しつこく口説かれたりもしない。 変に漫画やドラマの見すぎで、合コンに良いイメージのなかった私は、自分の偏った考えに恥じ入る。 今だって、私の隣に座っている男の子は優しくて、凄く紳士的だった。 「香月ちゃん、お酒あんまり強くないでしょ?無理してお酒飲まなくていいよ。次は烏龍茶にでもする?」 「いいの?遠藤くん」 「うん。酔って騒いでっていうのじゃないでしょ、今日は。楽しく喋れたら、俺はそれでいいし」 優しく笑う遠藤くんに、私もついつい警戒心が解けて笑い返す。 どうやら遠藤くんは、友人の頼みで今回の合コンに参加したらしい。 遠藤くんの友達は、私の友人が気になっていたらしくて、今回の合コンをどうにか組んだみたい。 遠藤くんは、私にちらりと視線を向けてあっさりと口にした。 「香月ちゃんも、俺と似たようなもんでしょ?あまり合コンに乗り気じゃないように見えたから」 「えっ、バレてたの?」 「そりゃあ、ね。なんだろ……お互い合コンに乗り気じゃなかったから、かな?」 「ふふっ、同じ雰囲気を感じたから、とか?」 「そうかもね」 まったりと、遠藤くんと色々な事を話す。 他の皆は、それぞれ男の子といい雰囲気になっていて、連絡先の交換とかをしているのが見えた。 合コンは、どうやら成功したみたいだ。 遠藤くん以外の男の子たちも、変にガツガツしていないって言うか……みんな落ち着いていて、女の子と笑い合っている。 「ごめん、遠藤くん。私ちょっとお手洗いに行ってくるね?」 「うん、分かったよ。行ってらっしゃい」 ひらり、と手を振られて、つい私も手を振り返す。 個室を出て、廊下を歩いていると私はふと自分の手元を見てしまった、と呟いた。 ハンカチを忘れてしまった。 せっかくテーブルの上に取り出したのに。 少しだけお酒が入っているから、忘れっぽくなっているのかもしれない。 しょうがない、いったん個室まで戻ろう。 そう考えた私が、踵を返すと、思いもよらなかった声が背後からかけ

  • 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…   11話

    それからの私は、今まで奏斗に必要以上に連絡をしていたのをまず、やめた。 私と奏斗は幼馴染で、奏斗も幼馴染の私を大切にしてくれていた。 だけど、私からしょっちゅう連絡が来て、忙しい奏斗を煩わせていたかもしれない。 1度、そう考えてしまうと連絡する事が怖くなって、奏斗への連絡はぱったりと途絶えた。 私は本当の失恋が堪えて、あの日の合コンの誘いを断ってしまっていた。 大学に行くたびに、時々合コンの誘いを受けていたけど、何となく遊びに行く気にならなくて。 全部断ってしまっていた。 けど、あれからもうひと月近くが経つ。 奏斗への連絡をやめてから、ひと月。 テレビの中で元気そうに活動する奏斗を観る事にも、慣れてきた。 そんな頃に、大学の友人から声をかけられた。 「香月〜今日の合コン、どうしても参加して欲しいんだ!女の子が1人体調悪くって来れなくなっちゃって……お願い!会費もいらないし、ご飯食べに来てくれるだけでいいから、参加してくれない!?」 顔の前で両手を合わせ、必死に頼んでくる友人。 合コン。 参加、してみようかな。 「分かった。いいよ、参加する。ご飯食べてていいんだよね?」 「……だよね、やっぱり無理だよね〜……。……えっ!?」 いつも私が断っているからだろう。 だから、友人もまさか私が合コンに参加するとは思わなかったらしく、私の返事を聞いて、驚いたように声を上げた。 「えっ、いいの!?本当に合コンだよ!?」 「うん、いいよ。今まで断っちゃってたし、申し訳なくて…。ただ、本当に戦力にはなれないから……」 「いいよいいよ!参加してくれるだけで助かる〜!おしゃれ個室の居酒屋だから、ゆっくりお酒も飲めるし、ご飯も美味しい

  • 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…   10話

    「その、本気じゃないだろ?俺たち子供の頃からずっと一緒だったし……今さら、そんな……」 奏斗の言っている言葉が、理解できない。 理解、したくない。 私の告白を、奏斗は今まで本気にしてなかったんだ。 子供の頃からずっと一緒にいるから。 だから「好き」って言う感情も、それは本当じゃないって思っているんだ。 だから、私の気持ちが本気だった。それが今分かって、奏斗は気まずそうにしているの。 何だか、かくんと体から一気に力が抜けてしまう。 「そう、だね……今さら、だね……」 「そうだよ。俺たちの間に、そんな……」 私の言葉を聞いた瞬間、奏斗があからさまにほっとしたような様子になる。 そして、奏斗の安心したような様子に私は。 「うん……十分、気をつけるよ。変な人には引っかからないようにする」 「──ぇ、」 「私も、大学生だしね……。Kanatoばっかり追いかけてないで、彼氏も作らなくちゃ」 にこり、と無理矢理笑みを作って私がそう言うと、奏斗は何とも言えない表情を浮かべた。 それから、私と奏斗は。 表面上は普段通り。 時折、奏斗から探るような視線を向けられているのは分かっていたけど。 私はこれ以上、奏斗から突き放される事が怖くて。 私の気持ちを否定されるのが、怖くて。 気付かない振りをして、一緒に夕食を食べて、夜には別れた。 奏斗は隣の自宅に。 私は、2階の部屋に戻る。 奏斗を見送って、部屋に入った途端。 私の足からは、力が抜けてずるずるとその場にしゃがみこんでしまう。 「嘘、でしょ…

  • 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…   9話

    ホットケーキを作り終わった私は、コンロの火を消す。 お皿の上に乗せられたホットケーキは、ふわふわで、上手く膨らんでいる。 きつね色に焼けてて、美味しそうな香りが漂ってきていてその匂いを嗅いでいると、私までお腹が空いてきた気がする。 バターとハチミツを用意して、奏斗が待ってるだろうリビングに振り向いた。 「──わっ!」 振り向いた先に、奏斗が立っていた。 何も言葉を発さずにそこに立っていた奏斗の姿に、さすがの私も驚いてしまった。 バクバク、と心臓がけたたましく音を奏でている。 「び、びっくりしたー……。奏斗、どうしたの?何かあった?」 「香月……、スマホに連絡来てたみたいだ」 「え?本当?ありがとう!」 もう、声をかけてくれて良かったのに!と喋りながら奏斗から差し出されたスマホを受け取って、変わりにホットケーキの乗ったお皿を奏斗に渡す。 お皿を受け取った奏斗は、リビングに戻らずに、じっと私を見つめてきて。 どうしたのだろう?と私が首を傾げると、そこでようやく奏斗は「ありがと」と言ってからリビングに戻って行く。 私も自分のホットケーキが乗ったお皿を手に、リビングに戻る。 テーブルにお皿を置いて、私は奏斗から渡されたスマホを確認する。 連絡が来てたって言ってたけど、なんだろう。 画面を開いて、タップする。 すると、そこには──。 「……えっ」 まさか、合コンのお誘いがあるとは思わなかった私は、その連絡を見てぎょっとして目を見開いてしまった。 そして次に、この連絡を奏斗が見ちゃったのだとしたら。 それで、さっきは少し様子がおかしかったの。 ほんの少しの、期待。 もしかしたら、奏斗はこの連絡を見て、嫌だと思ってくれたんじゃあ……。 そう考えていた私に向かって、前の席に座っていた奏斗がホットケーキを切り分けながら口を開いた。 「香月、ごめん。さっきちらっと通知が見えちゃったんだけど……。見る気は無かったんだよ」 「えっ、あ……いや、大丈夫だよ」 やっぱり、奏斗は合コンの連絡が来ているのを見ていたんだ。 見えてしまったんだ。 ほんのちょっとの後ろめたさ、と。 ほんのちょっとの期待感。 奏斗が、合コンなんて行くな、って言ってくれるかも、と言う微かな期待がむくむくと湧き上がってくる。 だけど、そんな私の期待を嘲笑う

  • 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…   8話

    「ただいまー」 「お邪魔します」 玄関を開けて中に入る。 私は、ただいま。奏斗はお邪魔しますって言葉を同時に口にする。 奏斗は慣れたように靴を脱ぎ、廊下を通ってリビングに行く。 私は着替える前に、洗面所に向かう。 手を洗いながら、リビングにいるであろう奏斗に向かって、声をかけた。 「奏斗ー!帰ってきたら、手洗ってー!私、着替えてくる!」 「分かったー」 リビングから、のんびりとした奏斗の声が返ってきた。 特にそれ以上奏斗に言う事はせず、私は自室に向かうために階段を上がって行く。 リビングからは、奏斗がテレビをつけたんだろう。 テレビの音が聞こえてくるけど、私はそのまま部屋に入り扉を閉めた。 部屋で部屋着に着替え、私はスマホだけを手にして階段を降りて、リビングに向かう。 すると、ソファに座り、スマホを操作していた奏斗が私が降りてきた事に気づき、ぱっと顔を上げた。 「香月。帰って来て早々、悪いんだけど……」 「はいはい、お腹が減ってるんでしょ?夜ご飯の前に何か……」 私はそう返しながら、戸棚の中を確認する。 戸を開けると、ホットケーキミックスの袋を見つけた。 牛乳も、卵も確かあったはず。 私は奏斗に顔を向けて続けた。 「ホットケーキでもいい?」 「じゅーぶん!お願いします」 嬉しそうに笑う奏斗に、ついつい私も笑みが零れてしまう。 邪魔になるから、と私は自分のスマホをリビングのテーブルに置いて、ホットケーキを作る事にした。 私がキッチンに立ち、奏斗はそわそわと待ちきれないと言うようにこちらを見ているのを感じ

  • 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…   7話

    「ちょっ、ちょっと待ってくれ!だ、誰と誰が熱愛だって……!?……は?食事会の移動を撮られてた……!?」 奏斗の戸惑いの声が上がる。 何が何だか、と言うように奏斗は唖然としていて。 それからも、電話相手と何かを話していた奏斗は、暫くして疲れたように電話を切った。 少し乱暴な手つきでスマホをしまうと、合点がいったように何度か頷いてから、私に顔を向けた。 「香月。もしかして、さっき言ってたのって……この熱愛報道の事?」 奏斗は確信を得たように聞いてくる。 奏斗も、知らなかったのだろう。だけど、それを今の電話で知ったらしい。 奏斗も知ったのなら。 否定する事でもない。 私はこくり、と1つ強く頷いた。 「……うん。だから、こんな風に私と一緒に居る所を万が一撮られたらって、思って……」 私の言葉に、奏斗は小さく息を吐いてしっかり私と目線を合わせた。 「あの熱愛報道は、完全なでっちあげだよ。食事会に行く道中で、食事会に参加するモデルの子と一緒に並んで歩いてただけ。それを……」 奏斗は私にそう説明しながら、自分でも熱愛報道の記事を確認しているのだろう。 記事内容を確認している奏斗の眉間が、不愉快そうに寄った。 そして、吐き捨てるように告げる。 「……こんな、ありもしない事だ。こんな記事を香月が気にする必要はないよ。マネージャーから連絡があったけど、この後事務所がはっきり否定の文章を出すって」 「そう、なの……?」 私が、ついつい不安そうな声を出してしまうと、目の前にいた奏斗がふはっ、と表情を崩して笑う。 そして、私を安心させるようにそっと頭を撫でてくれた。 「そうだよ。こんなのは嘘だし、俺に彼女なんかいない。香月が記事を気にする必要なんかないよ」 「……そっか、そう、なんだ」 「うん。そうだ、タクシー呼ぶから家に帰ろう?大分遅くなっちゃったな」 奏斗に、彼女はいない。 奏斗本人が、そうきっぱりと否定した。 私は、ようやくほっとして、タクシー配車アプリを操作する奏斗に近寄った。 奏斗は、慣れたように私の体を自分の腕で引き寄せて、後ろから軽く抱きしめる。 「香月のお母さんが今日は仕事で遅くなるって。晩御飯は適当に頼んでって言ってたけど、どうする?」 「でも、奏斗は外に

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status