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第 175 話

Author: 江上開花
「陸田監督、今はお付き合いする暇はありません。少し一人にしていただけませんか?」亜夕美は、引きつった笑顔を浮かべた。

彼女は自分の気性が良い方だと自覚していた。譲に対しては我慢に我慢を重ねていたが、それも復帰後初の作品であり、由紀子に迷惑をかけたくなかったからだ。

しかし譲が何度も彼女にちょっかいだして、わざと彼女と路加の間の衝突を煽るのは、本当にうんざりだった。

譲は冗談で済ませるだろうと思っていたが、まさか彼が不意にこう言ったのだ。「悪い、前のことは少しやりすぎた。気にしないでくれ」

亜夕美は不思議な表情になった。

その言葉を聞いても、彼女は安心するどころか、かえって警戒心を強め、体を手す
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Comments (1)
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良香
ちょっと大盤振る舞いすぎよね。笑 亜夕美さんの背後を見てる将臣を笑う為かもだけど、そんなに付き合いない人からの高額時計は貰った方も気まずいよー。
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