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第7話

Penulis: 一燈月
若葉の声が聞こえた途端、樹の目はぱっと輝いた。

「若葉さん!若葉さん!」

彼は大声で若葉の名を呼ぶと、拗ねたように言った。

「パパは嘘つきだ!約束を守らないんだもん。もう知らない!若葉さん、パパが僕をいじめるんだ!」

しまいには、若葉に告げ口まで始めた。

電話の向こうの若葉は樹の声を聞くと、圭介から電話を代わり、優しく彼をなだめた。

わざと怒ったふりをして圭介の悪口を並べ立て、週末に一緒に遊んでゲームをすることを約束すると、樹はようやく機嫌を直して笑い出した。

やはり、若葉さんの言うことは効果てきめんだ。

これまで、パパに叱られたり、嫌なことをされたりしても、ママに言いつけたところで全く意味がなかった。パパはママの言うことなど、これっぽっちも聞かないのだから。

しばらくして、樹は名残惜しそうに電話を切った。

電話を切った後、彼はふと圭介が先ほど言っていたことを思い出した。ママが出張から帰ってきた、と。

じゃあ、今夜帰ってくるということか?

だめだ、だめだ。ママが帰ってきたら、また自分を管理しようとして、ゲームの時間も制限するに決まってる。うるさくてかなわない!

パパだってママと一緒にいるのが好きじゃないくせに、どうしていつも僕をママのそばにいさせようとするんだ。パパなんて嫌いだ!

言うことなんて聞いてやるものか。

おばあちゃんの家に行こう。そうすれば、ママが帰ってきても顔を合わせなくて済む。

樹はすぐにベッドから這い出すと、おぼつかない手つきで服を着替え、ゲーム機を抱えて階下へ降り、千代の部屋のドアを叩いた。

叩き起こされた千代は、この家の若君がまた何を騒いでいるのかと訝しみながらも、眠気をこらえて運転手を呼び、真夜中に彼を長谷川本家へと送り届けた。

……

小夜は、長谷川家で真夜中に繰り広げられたこの一幕を知る由もなかった。

たとえ知っていたとしても、もう何も感じなかっただろう。長年の失望は積もり積もって、彼女の心はとうに麻痺していた。

どのみち離婚は決めたし、養育権も放棄するつもりだ。

翌日、小夜は習慣で早起きした。

まずパソコンで最新のファッションウィークの動向をチェックし、出社する際に会社のビルの一階で朝食を済ませた。

あの父子のために早起きして栄養の整った朝食を作る必要もなくなり、ここは仮住まいなので、この数日は外食で済ませていた。その分、時間にゆとりが生まれ、自分のためだけに使えるようになった。

その日は一日中、新人の面接と、引き継ぎのための業務内容や資料の整理に追われた。

それでも、彼女は定時で退社した。

月末には大叔母が帰国する。それまでに、ポートフォリオを仕上げ、最新のデザインを形にした作品を準備しなければならない。こちらが彼女の本来進むべき道であり、残された時間は決して多くない。

夜の六時、七時頃は、帝都の交通渋滞がピークに達する時間帯だ。

小夜は二時間以上かけて車を走らせ、ようやく帝都郊外の、少し人里離れた「竹園」という名の別荘地へとたどり着いた。

竹林を抜け、二階建ての別荘の前に車を停める。門柱には「徒花」と彫られた銘板が掲げられていた。

ここは彼女がここ数年の給料と、上流階級専門のプライベートオーダーで稼いだ資金を投じて購入した別荘で、アトリエとして使っている。

この数年、家庭を優先し、コンピュータ科学の道に進んだとはいえ、彼女は芸術デザインを完全に捨てたわけではなかった。

圭介は小夜が表舞台に出ることを極端に嫌った。

当時、長谷川グループへの入社を拒んだのも、彼女への嫌悪感に加え、彼女を家庭に縛り付け、「長谷川夫人」という名の美しい置物にしておきたかったからだ。

しかし、小夜は負けん気の強い性格だった。

彼女は圭介が好むコンピュータの道に進み、七年間、心を尽くして彼に仕え、気に入られようと努めたが、彼の心に入ることはできず、今や離婚して無一文で放り出される寸前だ。

幸い、彼女には自分自身の矜持があった。

圭介が表に出るのを嫌うなら、と彼女は「徒花」の名で密かに活動し、懇意にしている友人たちの紹介で顧客を得て、プライベートオーダーメイドだけを専門に手掛けてきた。

そのサービスは徹底してプライバシーが守られ、信頼性が高く、デザインは独特で豪華、かつ古典的な神秘性を帯びていた。

さらに、今では稀少となった京繍も用いるため、ここ数年で上流階級の間でも確かな名声を得ていた。

ただ、いかんせん時間が限られ、より大きな国際的な場で作品を発表する機会がなかったため、現在のところ、彼女の手掛けるオーダーメイド品の価格は、一点数百万円が基本で、千万円を超えることは滅多にない。

しかし、これからは芸術デザインに全ての情熱を注ぐことができる。きっと、もっと早く成長できるはずだ。

別荘の鍵を開けて中に入ると、広々としたホールが広がっていた。

壁には油絵や東洋画が所狭しと掛けられ、そのほとんどが人物画だった。未完成の服のデザイン画も数多く散らばっている。

床に置かれたハンガーラックには様々な生地が掛けられ、制作途中の服や、マネキン、その他雑多なものが置かれていた。

週末の二日間は、ここで創作に没頭できる。

二階は完成品や貴重品、ポートフォリオなどを保管する場所になっており、小夜はまっすぐ二階へ上がった。

一つの部屋のドアを開け、室内に置かれた布で覆われた人型のマネキンを見て、彼女は思わず足を止めた。

この服は……

布をめくると、そこには黒地に刺繍が施された男性用のスーツがあった。袖口には金と銀の二色の糸を使い、精緻な京繍の技法で瑞雲模様が施されている。これは「徒花」のアトリエ特有のしるしだ。

それだけでなく、肩には翼を広げた白鶴が銀糸で生き生きと表現され、その嘴には価値ある赤いダイヤモンドが嵌め込まれ、ちょうど心臓の位置に落ちるようにデザインされている。照明の下でキラキラと輝き、優雅さの中に控えめな豪華さを漂わせていた。

このパーティースーツを見ると、小夜の心は針で刺されたように痛んだ。

これは、圭介のために作ったものだった。仕事の合間に徹夜でデザイン画を描き、生地を厳選して一枚一枚裁断し、少しずつ刺繍を施し、宝石のバイヤーから希少な赤いダイヤモンドを手に入れ、三ヶ月以上の時間をかけて、ようやく完成させた。

本来なら、八周年の結婚記念日に圭介に贈るはずだったが、待っていたのはあの父子からの裏切りだった。

今、このパーティースーツを前にして、昨夜、往来で追い詰められた場面を思い出すと、小夜は目の前のパーティースーツをずたずたに引き裂きたい衝動に駆られた。

鋏を手に取ったが、いざ振り下ろそうという瞬間に、また躊躇した。

このパーティースーツが圭介の手に渡ることは永遠にないし、もう渡したいとも思わない。しかし、どうしても捨てられなかった。これは、彼女が数ヶ月もの心血を注いだ作品なのだ。

結局、小夜はパーティースーツに手をかけることなく、再び布を被せた。

いずれ、どこかで処分しよう。

個人向けのオーダーメイドは、その人のためだけに作られた、世界に一つだけの一点ものだ。

だが、デザイナーに名声があれば、次の買い手を見つけるのはそう難しくない。

……

夜。

長谷川邸。

圭介は会社での仕事を終え、車で帰宅したが、いつものように小夜が出迎える姿はなかった。

彼は千代に何気なく尋ねた。

「妻は?」

千代は状況が分からず、少し不思議そうに答えた。

「旦那様、奥様は数日前に出張に行かれたきり、まだお戻りではありませんが」

出張?

もう帰ってきたではないか。昨夜、会ったばかりだ。

しかし、彼は特に気にも留めなかった。どうせ小夜に行くあてなどない。

彼は覚えている。小夜は結婚前に家族と関係をこじらせ、この数年間、一度も連絡を取っていない。帝都に友人は数人いるが、身寄りはないも同然で、他に行く場所などあるはずがなかった。

ここが、彼女が帰ってこられる唯一の家なのだ。彼女に、一体どこへ行けるというのか。

圭介は、樹が本家にいることを聞くと、すぐに家を出た。

もともと樹を迎えに帰ってきたのだ。週末に若葉と一緒に遊ぶと、彼に約束していたからだ。

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