Share

結果は…

Author: 影畑凛星
last update publish date: 2026-07-13 06:52:36

 佳苗の目が大きく見開かれた。

「……え」

 小さく漏れた声。

 そのまま通知を見つめたまま動かない。

 雄吾は隣から静かに尋ねた。

「どうだった」

 佳苗は何度も通知へ目を落とす。

 見間違いではないかと思った。

 もう一度確認する。

 受験番号。

 名前。

 そして、一番下に書かれた文字。

『合格』

 間違いない。

「……受かってます」

 声が震えた。

「雄吾さん」

 佳苗はゆっくりと雄吾を見上げる。

「合格してました……!」

 その瞬間、雄吾の表情がふっと緩んだ。

「ああ」

 穏やかに笑う。

「おめでとう」

 その一言を聞いた途端、佳苗の目に涙が浮かんだ。

「あ

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   終わらせるために

     翌日の昼休み。 佳苗のスマートフォンに、絢子からメッセージが届いた。『少しだけ、お話しできますか?』 画面を見た瞬間、佳苗の指が止まる。 返事をしないと決めたはずだった。 けれど続けて届いた文面を見て、眉を寄せた。『おばさまから、昨日のことを聞きました』『私のせいで佳苗さんに嫌な思いをさせてしまって、本当にごめんなさい』「……」 やはり、美佐子から聞いたらしい。『おばさまが佳苗さんにあんなお願いをするなんて、私は知らなかったの』『私が頼んだわけじゃないことだけ、信じてもらえたら嬉しいです』 佳苗はしばらく考えてから、短く返信した。『分かっています。一条さんが頼んだとは思っていません』 嘘ではない。 美佐子が自分で考えて行動したことだとは理解している。 すぐに既読がついた。『ありがとう』『それだけ伝えたかったの』 そこで終わるかと思った。 けれど。『それと、もう一つだけ』 佳苗の胸がざわついた。『雄吾さんが私と距離を置きたいのは、自分の意思だって聞きました』「……」『だから、もう佳苗さんには何も言いません』『私と雄吾さんのことは、私たち二人の問題だから』 佳苗はその文章を何度も読み返した。 何もおかしくない。 雄吾自身がそう言ったのだから。 それなのに。 最後の一文だけが妙に引っかかった。 ――私たち二人の問題。     ◇ その日の午後。「榊原社長」 会議を終えて廊下へ出た雄吾を、絢子が呼び止めた。「少しだけいい?」「仕事の話か?」「ううん」「なら――」「これ

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   許してあげて

    「絢子ちゃんと雄吾が、昔みたいに友達でいることを許してあげてくれないかしら」 佳苗はしばらく、美佐子の顔を見つめていた。「……許す、ですか?」「言い方が悪かったわね」 美佐子は困ったように笑う。「別に、あなたに許可をもらわなければいけないという意味じゃないのよ」「でも……」「ただ、雄吾もあなたが嫌がるから、絢子ちゃんと距離を置いているでしょう?」「それは雄吾さんが自分で決めたことです」「そう言うけれど」 美佐子は小さく息を吐いた。「あなたが嫌だと言わなければ、雄吾だって今まで通りだったんじゃない?」 胸に刺さる。 確かに。 佳苗が嫌だと言ったから、雄吾は距離を取ると決めた。「お母様は……私に我慢してほしいんですか?」「我慢なんて」「一条さんが雄吾さんを好きでも?」「それは昔のことでしょう?」「今も好きじゃないとは言い切れないと、一条さん本人から聞きました」「……」 美佐子が言葉に詰まる。「それでも、私は気にせず二人を今まで通りにさせた方がいいんでしょうか」「でも絢子ちゃんは、何もしないと言っているんでしょう?」「……はい」「だったら、信じてあげてもいいんじゃないかしら」 佳苗は俯いた。 また同じだ。 信じない自分が悪い。 許せない自分が狭量。 そんな話になっていく。「私ね」 美佐子が優しく続ける。「佳苗さんの気持ちも分かるのよ。恋人の近くに、自分を好きな女性がいるのは嫌でしょう」「はい」「でも、二十年以上の友情までなくさせるのは、少し違うと思うの」「……」「雄吾にとっても、絢子ちゃんは大切な友人なのよ」 佳苗はゆっくり顔を上げた。「それ、雄吾さんが言ったんですか?」「え?」「一条さんと昔みたいに友達でいたいって、雄吾さんがお母様に言ったんですか?」「それは……」「言ってないんですよね?」 美佐子が黙った。 佳苗の胸は痛かった。 それでも、今度は引かなかった。「雄吾さんは私に、自分で決めたと言いました」「でも、あなたに気を遣っているだけかもしれないでしょう?」「だったら」 佳苗は静かに答える。「それは雄吾さんに聞いてください」「佳苗さん……」「私ではなくて」 初めてだった。 美佐子に対して、こんなにはっきり言ったのは。「雄吾さんと一条さんの関係をどうするか

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   それで安心なのよね?

    『あなたは、それで安心なのよね?』 美佐子の声に、佳苗はすぐに答えられなかった。「……お母様?」『ごめんなさい。変な聞き方をしたわね』「いえ……」『ただ、少し気になって』 美佐子はため息をついた。『絢子ちゃん、昨日うちに来たのよ』「そうだったんですか」『ええ。仕事の帰りにね』 それ自体は何もおかしくない。 佳苗はそう思った。『それで、雄吾と一緒だったんでしょうって聞いたら、仕事の話しかしていないって』「はい」『終わったあとは、一人で帰ってきたそうよ』「……はい」『あの子、本当にあなたとの約束を守ろうとしているのね』「約束というか……」 佳苗は言葉を選んだ。「私が一条さんにお願いしたわけではありません」『でも、仕事以外で連絡を取るのは嫌だって言ったでしょう?』「それは言いました」『だったら同じじゃない?』「……」 胸が苦しくなる。 まただ。 何かが少しずつ、違う意味へ変わっていく。「お母様。私、一条さんに仕事以外で一言も話さないでほしいとは言ってません」『でも、連絡は嫌なのよね?』「はい。でも……」『二人きりで食事をするのも嫌』「それは……はい」『触れるのも嫌』「……はい」 美佐子が小さく息を吐いた。『じゃあ、絢子ちゃんはどうしたらいいのかしら』「え?」『二十年以上も友達だった人と、仕事以外では連絡もできない。食事にも行けない。昔みたいに接することもできない』「……」『私はね、佳苗さん』 美佐子の声は穏やかだった。 だからこそ、その言葉は重かった。『恋人ができたら多少距離が変わるのは仕方ないと思うの』「はい」『でも、昔からの友達をそこまで遠ざけなくてもいいんじゃないかしら』 佳苗の胸が痛んだ。「私が……遠ざけているんですか?」『そういうつもりじゃないのは分かってるわ』「でも、今――」『ごめんなさい』 美佐子が遮った。『あなたを責めたいわけじゃないの』「……」『ただ、絢子ちゃんも大切な子だから』「はい」『あの子が寂しそうにしているのを見ると、どうしてもね』 佳苗は唇を噛んだ。 分かっている。 美佐子にとって絢子は大切な存在。 だから傷ついていれば心配する。 当然のことだ。 けれど。「お母様」『なあに?』「一条さんは、私が嫌だと言ったから寂しい

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   友達でいることまで

    「今度こそ、私が勝手に決めつけたんじゃないものね」 絢子の言葉に、佳苗は何も返せなかった。 確かに、自分で言った。 雄吾と絢子が仕事以外で連絡を取り合うのは嫌だと。 嘘ではない。 けれど――。「佳苗さん」 美佐子が戸惑ったように口を開いた。「それは……二人に友達をやめてほしいってこと?」「違います」「でも、仕事以外で連絡するのも嫌なんでしょう?」「それは……」 どう説明すればいいのだろう。 絢子が雄吾を今も好きだから。 そう言えばいい。 美佐子も、それはもう知っている。 けれど、それだけではない。 何度も雄吾との出来事を報告されたこと。 事実とは違うことまで伝えられたこと。 雄吾に触れようとしたこと。 その積み重ねがあって、今は嫌なのだ。「母さん」 雄吾が口を挟んだ。「それで何か問題あるか?」「雄吾?」「俺も仕事以外で絢子に連絡する必要はないと思ってる」 絢子の表情がわずかに固まった。「雄吾さんまで……」「佳苗だけが決めたことじゃない」「でも」 美佐子は納得できないようだった。「あなたたち、子供の頃からずっと友達だったでしょう?」「だからって、一生同じ距離で付き合わなきゃならないわけじゃない」「そんな言い方……」「おばさま」 絢子が美佐子を止めた。「もういいんです」「絢子ちゃん」「佳苗さんの気持ちは、ちゃんと分かりましたから」 絢子は穏やかに笑う。「雄吾さんも同じなら、私が口を出すことじゃありません」「&h

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   私の口から言わせたいこと

     数日後。 佳苗のもとへ、久しぶりに絢子からメッセージが届いた。『佳苗さん、この前は本当にごめんなさい』 佳苗は画面を見つめた。 以前のように、すぐ返事はしない。 しばらくして、もう一件。『おばさまから、二人でお話ししたって聞きました』『ちゃんと誤解が解けたみたいで安心したわ』「……」 佳苗は少し迷ってから返信した。『はい。お母様とお話しできてよかったです』 それだけ。 余計なことは書かない。 すると絢子から、『本当によかった』 と返ってきた。 それ以上、連絡はなかった。(これで終わればいいな) 佳苗はそう思った。     ◇ その週末。「母がまた食事に来ないかって」 雄吾に言われ、佳苗は少し驚いた。「またですか?」「ああ。今度は家で」「行きたいです」 美佐子とは、この前二人で話したばかりだ。 以前ほど怖くはなかった。「絢子も来るらしい」「……そうですか」「嫌なら断っていい」「大丈夫です」 佳苗は首を横に振った。「お母様と一条さんが会うことは、私もいいって言いましたから」「それと佳苗が一緒にいることは別だぞ」「分かっています」 それでも。 いつまでも絢子を避け続けるのも違うと思った。「行きます」「……分かった」     ◇ 日曜日。「いらっしゃい、佳苗さん」 美佐子は以前と変わらない笑顔で迎えてくれた。「こんにちは」「この前はありがとうね」「こちらこそ」

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   言っていないこと

     翌朝。 佳苗は目を覚ましてから、しばらくベッドの中でぼんやりしていた。 昨夜のことを思い出す。『この子のことも、少し分かってあげてほしいの』 美佐子の言葉が胸に残っていた。(お母様……やっぱり、一条さんの方が大切なのかな) 当然なのかもしれない。 美佐子にとって、自分はまだ知り合って間もない雄吾の恋人。 絢子は幼い頃から知っている、娘のような存在。 比べること自体がおかしい。 そう分かっているのに、寂しかった。「佳苗」「……はい?」 隣から声を掛けられる。「また考えてるだろ」「少しだけ」「母のこと?」 佳苗は少し迷って、頷いた。「はい」「母が何を思うかまで、佳苗が背負う必要はない」「でも、嫌われたくないです」「分かってる」「雄吾さんの大切なお母様だから」 雄吾は少し黙ってから、佳苗の手を握った。「なら、なおさら時間をかければいい」「時間……」「母だって、昨日のことだけで佳苗を決めつけたりしない」「……はい」 佳苗はその言葉を信じることにした。     ◇ しかし、その日の午後。 美佐子は一人で考え込んでいた。 昨夜、駅で別れる直前。 絢子は笑っていた。『大丈夫です』『私が我慢すればいいだけだから』 その言葉が、どうしても頭から離れない。「……」 美佐子はスマートフォンを手に取った。 佳苗へ連絡しようとして――やめる。 何と聞けばいいのだろう。 本当は絢子と会ってほしくないの?

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   もう騙されない

    「佳苗? 本当にどうしたんだよ」 怪訝そうな顔で、悟がこちらを見る。 その優しげな声に、佳苗は思わず身を強張らせた。 前世でも、この男はこんな顔をしていた。 穏やかで、頼れて、優しくて。 だから信じてしまったのだ。 まさか裏で妹と不倫し、自分を“代理母”として利用していたなんて、夢にも思わなかった。「顔色悪いぞ。熱でもある?」 悟が立ち上がり、額に触れようと手を伸ばしてくる。「っ……!」 佳苗は反射的にその手を振り払った。 ぱしん、と乾いた音が響く。 悟が目を見開いた。「……佳苗?」 しまった、と思った。 前世の記憶が蘇ったとはいえ、今の悟はまだ“何も知らない夫

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   私は、代理母だった

    「……っ、はぁ……ぁっ……!」 全身を引き裂かれるような痛みに、藤倉佳苗は汗で濡れたシーツを握り締めた。 眩しい手術灯。鼻を刺す消毒液の匂い。何度も響く機械音。 苦しい。 息ができない。「もう少しです! 頑張ってください!」 医師の声が遠い。 お腹の奥が裂けるように熱い。 それでも佳苗は必死に意識を繋いだ。(赤ちゃん……) やっと会える。 悟との子供。 愛する夫との、大切な命。 その一心だけで耐えていた。 けれど次の瞬間、医師たちの声色が変わった。「血圧低下!」「出血が止まりません!」「急げ!」 視界がぐらりと揺れる。 寒い。 急激に体温が奪われていく。

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   監視する妹

     ホテルへ入る佳苗と雄吾。 暗い夜道で撮られたはずなのに、驚くほど鮮明だった。「……どうして」 佳苗の指先が震える。 まるで誰かに見張られていたみたいだった。『ねぇお姉ちゃん』『その人、誰?』『もしかして浮気?』 次々届くメッセージ。 佳苗は顔を青ざめさせた。 浮気。 その言葉に胸が痛む。 裏切っていたのは悟たちの方なのに、なぜ自分が責められなければいけないのだろう。「見せろ」 雄吾が静かにスマホを受け取る。 メッセージ画面を見た瞬間、その目が冷えた。「……なるほど」「先輩」「撮られていたな」 低い声。 感情を押し殺したような響き。「どうしよう……」

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   今夜だけでも、俺を頼れ

    「俺は昔から、お前しか欲しくない」 低い声が耳元で響く。 佳苗は息を呑んだ。 車内の空気が熱い。 逃げ場がない。 雄吾の視線は真っ直ぐで、冗談の気配なんて微塵もなかった。「……先輩」 喉が震える。 理解が追いつかない。 昔から? ずっと? そんなはずない。 自分は特別な人間じゃない。 妹みたいに愛嬌があるわけでも、美人なわけでもない。 ただ都合よく利用されるだけの女だった。「信じられないか」 雄吾が静かに言う。 佳苗は答えられなかった。 すると雄吾は小さく息を吐き、身体を離す。「まあいい」「え……」「今すぐ答えを求める気はない」 その言葉に、佳苗は

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status