Share

夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています
夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています
Author: 影畑凛星

私は、代理母だった

Author: 影畑凛星
last update publish date: 2026-05-17 21:20:17

「……っ、はぁ……ぁっ……!」

 全身を引き裂かれるような痛みに、藤倉佳苗は汗で濡れたシーツを握り締めた。

 眩しい手術灯。鼻を刺す消毒液の匂い。何度も響く機械音。

 苦しい。

 息ができない。

「もう少しです! 頑張ってください!」

 医師の声が遠い。

 お腹の奥が裂けるように熱い。

 それでも佳苗は必死に意識を繋いだ。

(赤ちゃん……)

 やっと会える。

 悟との子供。

 愛する夫との、大切な命。

 その一心だけで耐えていた。

 けれど次の瞬間、医師たちの声色が変わった。

「血圧低下!」

「出血が止まりません!」

「急げ!」

 視界がぐらりと揺れる。

 寒い。

 急激に体温が奪われていく。

「佳苗さん! しっかりしてください!」

 誰かが叫んでいる。

 でも、もう指一本動かせなかった。

(やだ……)

(まだ、赤ちゃんを抱いてない……)

 涙が滲む。

 そのときだった。

 病室の外から、聞き慣れた声がした。

「……本当に、佳苗は助からないのか?」

 悟だ。

 夫の声。

 だがその声に、佳苗を心配する色はなかった。

 ぞくり、と背筋が冷える。

「仕方ないじゃない。もともと体弱かったし」

 続いて聞こえたのは、妹――坂井恵の声。

 どうして恵がここに……?

 ぼんやりした頭で考えた瞬間、二人の会話が耳に飛び込んできた。

「でも、これでやっと私たち本当の家族になれるのね」

「……ああ」

 悟が安堵したように笑う。

「正直、あいつには感謝してるよ。代理母としては完璧だった」

 ――だいりぼ?

 意味が分からなかった。

 佳苗の思考は止まる。

「お姉ちゃんって昔から私に逆らえないもんねぇ。妊活頑張ろうって言ったら、あんなに嬉しそうにして」

 恵がくすくす笑った。

「不妊の私の代わりに産んでくれるなんて、本当に便利なお姉ちゃん」

 ……なに、を。

 言っているの。

 耳鳴りがする。

 視界が滲む。

「まあ、死んじゃったのは想定外だけど。でももう役目は終わったし」

「だな。子供さえ無事なら問題ない」

 悟の声は、驚くほど冷たかった。

「佳苗も、自分の子を俺たちに育ててもらえるなら本望だろ」

 二人が笑う。

 楽しそうに。

 幸せそうに。

 その笑い声が、佳苗の心をぐちゃぐちゃに引き裂いた。

(……うそ)

(そんな……)

(私は……)

 愛されていたんじゃなかったの?

 赤ちゃんを望んでいたのは、二人で幸せになるためじゃなかったの?

 全部。

 全部嘘だったの?

 喉が震える。

 声を出したいのに、息すらうまく吸えない。

 涙だけが頬を伝った。

(じゃあ私は……)

(何のために……)

 命を懸けたの?

 その瞬間、機械音が鋭く鳴り響いた。

「心停止!」

「除細動準備!」

「佳苗さん!!」

 誰かが叫ぶ。

 けれど佳苗の意識は、ゆっくりと暗闇へ沈んでいく。

 最後に見えたのは、真っ白な天井だった。

 悔しい。

 悔しい。

 悔しい。

 もし、もう一度やり直せるなら――。

◇◆◇

「――佳苗? 聞いてる?」

 不意に耳元で声がした。

 佳苗ははっと目を開けた。

「え……?」

 見慣れたリビング。

 昼下がりの光。

 テーブルの上に置かれたマグカップ。

 そして目の前には、困ったように笑う夫――藤倉悟がいた。

「ぼーっとしてどうした?」

「……さ、とる?」

 佳苗は震える声で呟く。

 悟は怪訝そうに眉を寄せた。

「何その顔。疲れてるなら今日は休めば?」

 優しい声音。

 けれど、その笑顔を見た瞬間。

 佳苗の全身にぞわりと鳥肌が立った。

「っ……!」

 反射的に身体を引く。

 ガタン、と椅子が鳴った。

「佳苗?」

 悟が手を伸ばしてくる。

 その瞬間。

 病室で聞いた言葉が脳内に蘇った。

『代理母としては完璧だった』

『役目は終わったし』

「いやっ……!」

 佳苗は悲鳴のような声を上げた。

 荒く息を吐きながら、自分の腹部に触れる。

 平らだった。

 妊娠していない。

 出産も、していない。

 スマホを掴み、震える手で日付を見る。

「……っ」

 一年前。

 妊娠する前の日付だった。

 佳苗の呼吸が止まる。

(戻ってる……?)

(私……死んだはずじゃ……)

 混乱する佳苗を見て、悟は眉をひそめた。

「本当にどうしたんだよ」

 その声すら恐ろしい。

 佳苗は唇を噛み締めた。

 もう騙されない。

 もう利用されない。

 この男の子供なんて、絶対に産まない。

 そのときだった。

 ピロン、と悟のスマホが鳴る。

 画面を見た悟の口元が、わずかに緩んだ。

 佳苗は見逃さなかった。

 表示されていた名前を。

『恵』

 心臓が凍りつく。

 やはり。

 二人はもう――。

「……誰から?」

 震える声で尋ねると、悟は一瞬だけ目を逸らした。

「ああ、仕事関係」

 嘘だ。

 佳苗には分かった。

 前世では気づけなかった。

 けれど今なら分かる。

 この男は、ずっと自分を騙していたのだ。

 佳苗はゆっくり拳を握り締めた。

(逃げなきゃ)

(今度こそ――)

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   ふたりきりの週末

     旅行の日は、思ったより早くやってきた。 土曜日の朝、佳苗は小さな旅行バッグを持って玄関へ向かった。「これくらいでいいかな」「一泊だろ。十分だ」「忘れ物しても知らないよ?」「現地で買えばいい」「雄吾はそう言うと思った」 結局、行き先を決めたのは雄吾だった。 都心から車で二時間ほど。山あいにある温泉地だという。「宿は?」「着いてからのお楽しみ」「またそれ?」「部屋に露天風呂があるところ、って希望は聞いた」「じゃあ期待していいんだ」「ああ」 助手席に座りながら、佳苗は笑った。     ◇ 途中で昼食を取り、温泉街へ着いたのは午後三時前だった。 車窓から古い旅館や土産物店が見える。「あとで歩きたい」「いいぞ」「温泉まんじゅうも食べたい」「夕飯食えなくなるぞ」「一個くらい平気」 そんな話をしているうちに、車が一軒の旅館へ入っていく。 派手ではないが、門をくぐった先には手入れされた庭が広がっていた。「ここ?」「ああ」 案内された部屋へ入った佳苗は、思わず足を止めた。 広い和洋室の向こうに、小さな庭と露天風呂が見える。「すごい……」「気に入ったか?」「うん。でも、これ絶対高いでしょう」「また値段を気にしてるのか」「するよ」「俺が泊まりたくて選んだんだからいいだろ」 そう言われてしまえば、それ以上は何も言えない。 佳苗は窓際まで歩き、外を覗いた。「本当に二人だけで入れるんだ」「そのための部屋風呂だろ」「そうだけど」 そこでようやく、自分の言葉の意味に気づいた。 夫婦なのだから、別におかし

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   次の約束

     水族館から帰った翌日。 佳苗は昼休みにスマートフォンを開き、昨日撮った写真を見返していた。 大きな水槽、ペンギン、色鮮やかな魚。 その中に一枚だけ、雄吾の写真がある。 佳苗が何気なく撮ったもので、雄吾は水槽の前でこちらを見ていた。「榊原さん、楽しそうですね」 声をかけられて顔を上げると、高瀬が近くに立っていた。「あ、お疲れさまです」「昨日どこか行ったんですか?」「夫と水族館に行ってきました」「いいですね。休日らしい」「はい。久しぶりに一日遊びました」 答えながら、佳苗は自然と笑っていた。「じゃあ、午後もよろしくお願いします」「はい」 それだけで高瀬は離れていく。 佳苗は再び画面へ目を落とした。 少し前なら、家に帰ってから雄吾に「高瀬課長に水族館のこと聞かれたよ」と報告していたかもしれない。 けれど、さすがにこれは言わなくてもいいだろう。 別に隠すことでもない。 単に、雄吾をからかうためだけに高瀬の名前を出すのは、そろそろやめようと思った。     ◇ その夜。「雄吾、これ」 夕食のあと、佳苗は昨日買ったペンを指した。 雄吾の胸ポケットに挿さっている。「今日使ったの?」「ああ」「本当に会社に持っていったんだ」「使うって言っただろ」「そうだけど」 佳苗はなんとなく嬉しくなって、そのペンを眺めた。「会社の人に何か言われなかった?」「部下に珍しいって言われた」「何て答えたの?」「妻にもらったって」「……普通に言ったんだ」「隠す理由がないだろ」 雄吾にとっては当たり前らしい。 佳苗は少し照れながら、隣へ座った。「そういえば、次のデートは?」「もう考えてる」「早い!」「お前が楽しみにしてるって言ったからな」「どこ?」「まだ決めてない」「考えてるだけ?」「ああ」 雄吾はスマートフォンを取り出した。「泊まりでもいいか?」「え?」「次の土日。予定は?」 突然話の規模が大きくなった。「ちょっと待って」 佳苗も予定表を確認する。「今のところ何もないけど……旅行するの?」「近場で一泊くらいならいいだろ」「いいけど、急だね」「最近、まともに二人で出かけてなかったからな」 その言葉に、佳苗は少し考えた。 確かに結婚してから、生活そのものはずっと一緒にある。 朝起きて、仕

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   佳苗のデートプラン

     日曜日。「今日は私についてきてね」 玄関でそう宣言すると、雄吾が靴を履きながら佳苗を見る。「随分自信ありそうだな」「いっぱい調べたから」「期待していいのか?」「もちろん」 そう言い切ったものの、実は少しだけ緊張していた。 雄吾が連れていってくれた高級ホテルのような豪華さはない。 佳苗が選んだのは、少し離れた街にある大きな水族館だった。 休日らしいことをして、一緒にのんびり遊びたい。 ただそれだけで選んだ場所だ。「水族館か」 到着した雄吾が建物を見上げる。「どう?」「いいんじゃないか」「その反応、薄くない?」「まだ入ってないだろ」「そうだけど」 少し不満に思いながら中へ入ったものの、十分もしないうちに佳苗のほうが夢中になっていた。「雄吾、見て。あれすごい」「見てる」「大きい!」「佳苗」「何?」「さっきから俺より魚しか見てないぞ」 振り向くと、雄吾が呆れた顔をしていた。「水族館なんだから魚を見るでしょう?」「俺とのデートじゃなかったのか?」「雄吾も一緒に見ればいいじゃない」 佳苗は笑いながら雄吾の腕を引いた。 大きな水槽の前では、青い光の中を魚の群れがゆっくり横切っていく。 しばらく並んで眺めていると、雄吾がふいに佳苗の手を握った。「どうしたの?」「別に」「はぐれないよ?」「知ってる」 それでも離すつもりはないらしい。 佳苗もそのまま指を絡めた。 館内を一通り回ったあと、ショップへ立ち寄る。「これ、可愛い」 佳苗が手に取ったのは、小さなペンギンのぬいぐるみだった。「欲しいのか?」「見るだ

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   今度は私が

     アフタヌーンティーから数日後。 佳苗は昼休みにスマートフォンを眺めながら、ひとりで悩んでいた。 次は自分がデート先を決める。 そう宣言したものの、いざ探し始めるとなかなか難しい。 雄吾なら、大抵の店には行ったことがありそうだ。高級な場所を選んでも、先日のホテルには敵わない気がする。「何見てるんですか?」 同僚に声をかけられ、佳苗は慌てて画面を伏せた。「今度、夫と出かけようと思って」「デートですか?」「まあ……そう」「いいですね。榊原さん、最近忙しかったですもんね」 言われて、佳苗は少しだけ笑った。 自分ではそれほど意識していなかったが、仕事に夢中になっていたのは周囲にも分かっていたらしい。 だからこそ、今度は自分から雄吾を誘いたかった。     ◇ その日の夕方、高瀬に呼び止められた。「榊原さん」「はい」「この前の件、来週から試験的に始めることになりました」「本当ですか?」「ええ。しばらく確認をお願いすることになると思います」「分かりました」 自分が関わったものが実際に使われる。 嬉しくて、佳苗は自然と笑顔になった。「ありがとうございます」「こちらこそ。助かりました」 短いやり取りを終えて席へ戻る。 以前なら、この嬉しさをそのまま家へ持ち帰って、真っ先に雄吾へ話していただろう。 もちろん今日も話したい。 けれど――。「……また高瀬課長の話になるな」 小さく呟いて、佳苗は笑った。 雄吾の顔が簡単に想像できてしまう。     ◇「ただいま」「おかえり」 帰宅すると、雄吾は先に帰っていた。「雄吾、今度の日曜って空いてる?」

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   デートの日

     土曜日。 佳苗は朝から、何を着ていくかで少し迷っていた。 雄吾から聞いているのは、昼前に出ることと、あまり歩きにくい靴はやめておけということだけだ。「これなら大丈夫かな」 結局、きれいめのワンピースに小さなバッグを合わせた。 部屋を出ると、待っていた雄吾が佳苗を見る。「それで行くのか?」「うん。変?」「いや。似合ってる」「じゃあいいけど……本当にどこに行くの?」「着けば分かる」 今日まで行き先を教える気はないらしい。     ◇ 車を降りた佳苗は、目の前のホテルを見上げた。「……ここ?」「ああ」 都心でも名の知られた高級ホテルだった。 エントランスを抜けた先には広々としたロビーがあり、大きな花が飾られている。 周囲を行き交う客も、どこか余裕のある雰囲気だ。「雄吾」「何だ?」「普通の服でいいって言ったよね?」「普通だろ」「私にとっては普通だけど!」 思わず自分のワンピースを見下ろす。 別に浮いてはいない。周囲にも同じような服装の女性はいる。 それでも、先にこのホテルだと知っていたら、もう少し悩んでいたと思う。「似合ってるから問題ない」「そういう問題じゃないんだけど……」「行くぞ」 雄吾はまったく気にした様子もなく歩き出した。 案内されたのは、上階のラウンジだった。 窓際の席から街を一望できる。「もしかして、ここでご飯?」「アフタヌーンティー」「えっ」 佳苗はメニューを開き、並んでいる写真に目を輝かせた。 季節の果物を使ったケーキやタルト、小さなサンドイッチ。 可愛い。

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   予定を空けて

     金曜日の夜。 佳苗が帰宅すると、雄吾はダイニングテーブルでスマートフォンを見ていた。「ただいま」「おかえり」「今日は早いね」「佳苗よりはな」 最近は仕事が少し忙しく、佳苗の帰宅が雄吾より遅くなる日も増えていた。 とはいえ今日は七時を少し回った程度だ。「ご飯、どうする?」「その前に、来週の土曜空いてるか?」「来週?」 佳苗はバッグからスマートフォンを取り出し、予定を確認した。「空いてるよ。何かあるの?」「じゃあ空けといてくれ」「だから、何?」「出かける」「どこに?」「まだ言わない」「ええ?」 佳苗が怪訝な顔をすると、雄吾は平然としている。「朝から?」「昼前でいい」「服は?」「普通でいい。歩きにくい靴だけやめとけ」 そこまで聞いても、まるで分からない。「なんで急に?」「出かけたいから」「それだけ?」「ああ」 佳苗はじっと雄吾を見た。 昨日までそんな話は一度もしていなかった。「……もしかして」「何だ?」「私が最近、仕事ばっかりだから?」 雄吾の視線が一瞬だけ逸れた。 佳苗は思わず笑う。「やっぱり!」「何がやっぱりなんだ」「雄吾、私と出かけたくなったんでしょう?」「夫婦なんだから普通だろ」「そうだけど」 否定しないところが、かえっておかしい。 佳苗は雄吾の向かいに座った。「別に予定を作らなくても、毎日会ってるよ?」「家で飯食って寝るだけなのと、出かけるのは違う」「それはそうだけど」「最近、休みの日もお前が仕事の話ばか

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   やっと捕まえた

     恵が帰ったあとも、佳苗はしばらく動けなかった。 心臓が嫌なほど脈打っている。 あの目。 一瞬だけ見せた、冷たい視線。 前世では最後まで気づかなかった。 恵はずっと、自分から奪うことを楽しんでいたのだ。「……っ」 佳苗は唇を噛み締める。 怖い。 けれど、それ以上に悔しかった。 どうして自分は、あんな人たちのために命まで懸けてしまったのだろう。 テーブルの上に置かれた結婚写真が目に入る。 幸せそうに笑う自分。 悟の腕に寄り添って、未来を信じ切っていた頃の自分。 ――滑稽。 佳苗は震える手で写真立てを伏せた。 もう戻れない。 戻りたくもない。 今度こそ終わらせ

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   置いていかれる側

    「……今、泣いてるのか?」 低く静かな声が耳に落ちる。 その一言だけで、張り詰めていた感情が崩れそうになった。 佳苗は慌てて口元を押さえた。「な、泣いてません」『嘘が下手だな、お前は昔から』 昔から。 その言葉に、大学時代の記憶が蘇る。 榊原雄吾。 成績優秀、容姿端麗、誰にも媚びない孤高の男。 学生の頃から有名だった。 近寄りがたい人だったのに、なぜか佳苗にはよく話しかけてきた。『また他人の仕事押し付けられてるのか』『断れないのか、お前は』 呆れたように言いながら、結局いつも助けてくれた。 けれど卒業後は一度も会っていない。 それなのに、どうして今。「どうし

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   もう騙されない

    「佳苗? 本当にどうしたんだよ」 怪訝そうな顔で、悟がこちらを見る。 その優しげな声に、佳苗は思わず身を強張らせた。 前世でも、この男はこんな顔をしていた。 穏やかで、頼れて、優しくて。 だから信じてしまったのだ。 まさか裏で妹と不倫し、自分を“代理母”として利用していたなんて、夢にも思わなかった。「顔色悪いぞ。熱でもある?」 悟が立ち上がり、額に触れようと手を伸ばしてくる。「っ……!」 佳苗は反射的にその手を振り払った。 ぱしん、と乾いた音が響く。 悟が目を見開いた。「……佳苗?」 しまった、と思った。 前世の記憶が蘇ったとはいえ、今の悟はまだ“何も知らない夫

  • 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています   監視する妹

     ホテルへ入る佳苗と雄吾。 暗い夜道で撮られたはずなのに、驚くほど鮮明だった。「……どうして」 佳苗の指先が震える。 まるで誰かに見張られていたみたいだった。『ねぇお姉ちゃん』『その人、誰?』『もしかして浮気?』 次々届くメッセージ。 佳苗は顔を青ざめさせた。 浮気。 その言葉に胸が痛む。 裏切っていたのは悟たちの方なのに、なぜ自分が責められなければいけないのだろう。「見せろ」 雄吾が静かにスマホを受け取る。 メッセージ画面を見た瞬間、その目が冷えた。「……なるほど」「先輩」「撮られていたな」 低い声。 感情を押し殺したような響き。「どうしよう……」

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status