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第6話

Auteur: 氷花
それから数日間、蓮はずっと瑠璃に付き添い、かいがいしく看病をした。

食事を口に運んだり、体を拭いてやったり、ニュースを読み聞かせたり。まるで、今でも彼女を心から愛しているかのように、心の限りを尽くしていた。

ただ、時折トイレに立ったり、荷物を取りに行ったりするたびに、蓮は携帯を取り出しては手早くメッセージを返していた。画面を見つめるその表情は、時に眉をひそめ、時にふっと緩む。

そのたび、彼は自然な調子で瑠璃に言った。「仕事で少し急用ができちゃって。すぐ片付けるから」

瑠璃はただ「うん」と力なく答えるだけで、そっと目を閉じて寝たふりをした。

彼が何を見ているのか、瑠璃は全て知っていた。

その「急用」の正体は、奈美から送られてくる、露骨に誘惑するような写真の数々。なぜなら、それとまったく同じものが、瑠璃の携帯にも送られてきていたから。

奈美は瑠璃を傷つけることを楽しんでいるかのようだった。手に入れた勝利を誇示するように、その事実を次々と見せつけてくる。

だが、瑠璃の心はとっくに傷だらけで、もう痛みなど感じなかった。

すべての手続きが終わり、この苦しみから解放される日を静かに待つだけ……

雲ひとつない天気のいい日、瑠璃は退院した。

退院の手続きを済ませた直後、瑠璃の携帯に霊園の管理事務所から電話が入った。

大雨が続いたせいで両親の墓が崩れてしまい、すぐに別の場所へ移して直す必要があるという。

その知らせは、ただでさえ傷ついていた彼女の心に、さらに重くのしかかった。

両親は、瑠璃にとって何よりも大切な存在だった。だからこそ、触れることが怖かった。

蓮も、当然のように付き添ってくれた。

しかし、彼が車のドアを開けた瞬間、瑠璃は息を呑む。なんと助手席に、奈美が座っていたのだ。

「瑠璃さん」奈美が振り返り、仕事用の完璧な笑みを浮かべた。しかし、その瞳の奥には得意げな色が浮かんでいる。「今日は遠出をするから、車内でも仕事ができるようにと、九条社長の方から指示がありましたので、私も同行させていただきます」

蓮はきまずそうに、小さな声で言い訳をした。「瑠璃、仕事が溜まってて……大目に見てほしい」

瑠璃は爪が食い込むほど手のひらを強く握りしめ、痛みで必死に冷静さを保った。

何も言わず、後部座席のドアを開けて車に乗り込む。

車が走り出すと、蓮はバックミラー越しに何度も瑠璃に話しかけた。「瑠璃、そんなに落ち込むなよ。俺はずっとそばにいるし、何があってもお前を支えてやる。全部俺に任せろ、な?」

その声は優しく、人を安心させるような温もりに満ちていた。

以前の瑠璃なら、彼に甘えるように寄り添い、その優しさを思う存分享受していただろう。

しかし今の彼女は、ただ人形のように、無言で車窓を流れる景色を見つめていた。

凍てついた瑠璃の心に、蓮の言葉はもう一言も届かない。

霊園に到着した時、今にも雨が降り出しそうな重い雲が空を覆っていた。

係員が崩れてしまった墓石から瑠璃の両親の骨壷を慎重に取り出す。

退院したばかりで体力が落ちていた瑠璃にとって、二つの骨壺を抱えるのは少し辛かった。

それに気づいた奈美が、手を伸ばして近寄ってきた。「瑠璃さん、持ちますよ!」

瑠璃は反射的に身を引こうとした。だが奈美は足を滑らせたかのようによろめき、その瞬間「偶然にも」その手が、瑠璃の持っていた骨壷に当たってしまった。

ガシャンッ――!

精巧な模様が描かれた骨壷が泥まみれの地面に叩きつけられ、真っ白な遺灰が地面に飛び散る。

その瞬間、まるで世界の時が止まったかのようだった。

目の前の光景に、瑠璃は頭が真っ白になり、全身の血が凍りついた。

「何してるんだ!!」蓮の激しい怒鳴り声が周囲に響き渡る。

蓮はすさまじい勢いで奈美に詰め寄ると、その頬を激しく殴りつけた。

鋭い音が静まり返った霊園に大きく響いた。

「何やってるんだ!こんな簡単なこともできないのか!」蓮は青筋を立て、これまで見せたことのないほどの凶暴な目つきで奈美を睨む。「どけ!」

奈美は殴られてよろめき、頬を押さえながらすぐに涙を流したが、声を出す勇気はなかった。

蓮は奈美に見向きもせず、すぐに瑠璃の方へ駆け寄ってきた。「瑠璃!大丈夫だから。心配するな。すぐに新しい骨壺を買ってくるから、ここで待ってて。すぐ戻るからな!」

そう言い終えると、彼は奈美をキッと睨みつけ、急いで霊園の外へと走っていった。

奈美は腫れた顔を押さえながら、恨めしそうに瑠璃を睨むと、彼の後を小走りで追いかけていった。

泥にまみれていく両親の遺骨を見つめながら、瑠璃はその場に立ち尽くしていた。心臓をえぐり取られるような痛みに、息をすることさえ苦しい。

しゃがみ込み、無駄とは分かっていながらも素手で遺灰を拾い集めようとした。

しかし、運の悪いことに、激しい雨が降り始めた。

大粒の雨が地面を叩き、強風を伴う雨水が無慈悲にもすべてを流していく。

「やめて……お願いだから……」瑠璃は半狂乱になり、全身で雨風を遮って大切な遺灰を守ろうとした。

だが、雨と風はあまりにも激しすぎた。

華奢な瑠璃の身体で防げるはずもなく、両親の遺灰が冷たい雨水に流され、泥水に混ざっていくのを、ただ呆然と見守るしかなかった。

わずかな時間で、地面からは何もかもが洗い流され、瑠璃にとって何よりも大切だった二人が存在した証が、これで完全に失われてしまったのだ。

絶望と深い哀しみが、氷のような雨とともに彼女の身体を容赦なく濡らす。

どれほどの時間が経ったのだろう。全身ずぶ濡れになり、震える身体で彼女は魂が抜けたように、ふらふらと階段を下り始めた。

さすがに遅すぎる蓮の様子を見に行こうとしたのだ。

しかし、階段の途中の鬱蒼とした茂みを通りかかったその時、激しい風雨に混ざって、何やら艶めかしい甘い吐息が聞こえてきた。

瑠璃は引き寄せられるように、濡れた葉をそっとかき分けた。

その瞬間、瑠璃は衝撃を受け、完全に固まってしまった。

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