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第359話

Author: 浮島
彼女のまなざしには、わずかな緊張と恥じらいが宿っていた。

握る瑛司の手のひらには細かな汗が滲み、鼓動はまたもや制御を失い、呼吸が浅く速くなる。

息をするのさえ怖かった

。彼を驚かせてしまうかもしれないから。

瑛司が口を開きかけた――

その瞬間、上着のポケットでスマホが短く震えた。

こんな時間に連絡をしてくるのは、蒼空を探している部下だろう。

「瑛司......?」

返事がないまま時間が過ぎ、瑠々は再びそっと呼びかけた。

瑛司は意識を戻すと、布団を引き寄せて彼女の肩まできちんとかけ、柔らかな声で言う。

「やめておく。君が眠ったら出るつもりだ」

瑠々は失望を隠しきれず、鼓動も次第に落ち着いていく。

「......そう。私、早く寝るから」

瑛司は小さく返事をした。

瑠々はふかふかの寝具の中で、名残惜しそうに彼を見つめ、ようやくそっと目を閉じた。

焦らなくてもいい。

きっといつか、彼は自分の良さに気づく。

二人にはまだ時間がある。

高校時代の縁がある。

いつか、彼は心から自分を選んでくれる――

そう信じていた。

夜は更け、眠気が再び彼女を包む。

ぼんやりと意識が沈む中、手のひらの温もりが、そっと、慎重に離れていくのを感じた。

まるで彼女を起こさないように、大切に扱う気配が伝わる。

薄く目を開け、彼の背中を見送る。

胸がほんのり温かくなり、そのまま眠りに落ちた。

部屋を出ると、瑛司はすぐにスマホを取り出し、送られてきたメッセージを高速で目で追う。

【松木社長、関水さんの航空便・交通情報は一切見つかりません】

【誰かが意図的に情報を遮断しています】

【邪魔をしているのは敬一郎様です。隠すつもりはないようです。次はどう動きますか?】

【最短で把握するには、敬一郎様に直接聞くしかありません】

玄関の鍵を掴み、上着を手にして外へ出た。

車に乗り込み、アクセルを踏み込む。

規定速度を超えた勢いで、松木家へ向かう。

だが、走っても走っても、信号はすべて赤。

しかも、どれも今変わったばかり。

一分、二分、待たされる。

信号待ちの間、彼はシートにもたれ、苛立った指先でネクタイを緩め、ボタンを外す。

目を閉じ、長く息を吐いた。

引き出しに手を伸ばし、久しぶりに煙草を取り出す。

唇に挟み、火をつける。

暗い車内に、
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Comments (5)
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あき
私も同じ気持ちですよ
goodnovel comment avatar
華白川
瑛司が好きなわけではないし、元サヤ希望とかでもないんだけど、るるに、社会的な成功をおさめてほしくない… 大人しく瑛司の嫁やるだけなら許せるけど、ピアニストとかふざけんなって感じです。盗作、詐病、嘘、未婚の母、人を陥れても平気な、自分さえ良ければいい冷たい最低な人。実家がお金持ち、美人以外にいいとこない。瑛司、気づいて、振ってくれないかなあ。盗作も、他に盗作された人たちが集団で訴えて、社会的に抹殺されてほしい。
goodnovel comment avatar
あき
情だけでこんなに執着はしないでしょ。 それより情があるのにこんなひどい仕打ちしまくる? 可愛さ余って憎さ百倍的な? 蒼空はせっかく逃げれたんだからいよいよ別の男性に出会うのかな。幸せになってほしいよ
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