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#2

last update Date de publication: 2026-04-20 05:50:51

でも、どれだけ考えても堂々巡りだ。

どんな事情があったにせよ、俺と久しぶりに会った先輩は嬉しそうだった。あの笑顔に偽りがあるとは思えない。

俺は今の先輩を信じたい────。

自分の気持ちを確認する為にも、心の中で呟いた。

改めて決意し、家のドアを開ける。

「ただいま!」

「おかえり、雅月。……って」

台所で冷蔵庫に食材を入れていた母は、俺を見ると目を丸くした。完全にフリーズしている。

「何、どしたの?」

「どうしたのって……アンタの方がどうしたのよ。朝と全然違うじゃない」

はわ!

言われてようやく気付いた。朋空先輩も受け入れてくれたから、結局チャラいスタイルのままになっていた。

「あはは。イメチェン? 明日はいつも通りだと思う」

「そう〜。先生に怒られない程度ならいいわよ。でも雅月が珍しいわねぇ」

母さんは布巾で手を拭いた後、こちらに寄ってきた。

「さては、彼女でもできた?」

「な、何で!」

「そりゃ、見た目気にしない子が変わり始めたら普通恋してると思うわよ。女の子は恋をしたら綺麗になるんだから」

「俺男」

「まあまあ良いじゃない。それより本当にできたの? その子が嫌がることは絶対し
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  • 帰ろうよ、朋空先輩   #2

    朋空先輩は、昔家に帰りたくなかった俺を救ってくれた。────だから俺も、家に帰ろうとしない朋空先輩を放っておけなかったんだ。時間が流れるのは本当に速い。自分が進まないと置いていかれてるような怖さがある。残酷。……だけど時間が解決してくれることもあるし、悪いことばかりじゃないんだ。俺は眠り姫並に知名度が上がってしまったけど、ファンクラブの人達の協力もあり、楽しく学校生活を送れた。( 三月か )カレンダーをめくり、春の暦を数える。季節は流れ、あっという間に卒業式を迎えた。俺も来月からは三年生。受験を控え、忙しい毎日が始まる。気を引き締めないと……!誰にも名前を覚えてもらえない睡眠研究会は、後輩の子に譲ることにした。俺ももう寝てるわけにはいかないし、あの研究室は朋空先輩と過ごす為の場所になってしまっていたから……もう留まる理由はなかった。あ、ベッドはさすがに問題なので家に持って帰った。睡眠に関する資料は残してるから、後は後輩が好きなように使ってくれたら嬉しい。桜は咲いてないけど、卒業式当日は晴れやかな青空だった。いつもと変わらない。けど落ち着かない、特別な日。体育館から卒業生が退場し、保護者も順々に帰っていく。あっという間に寂しくなった空間を後にし、俺も移動した。絶対に見つけるなら校門だな。大勢ひとが立ち話をしている門で捜していると、不意に肩を叩かれた。「入ちゃん! やっほー」「赤城先輩。卒業おめでとうございます」「ありがと。やー、思い返すとマジであっという間だったな。入ちゃんもやりたいことあったら後回しにしないで、やった方がいいよ。この感じだと次は気付いたとき四十路だから」「それは気が早すぎですって」苦笑しながら、いつもと変わらない調子の赤城先輩にお辞儀した。本当に色々あったけど、彼にも感謝しかない。なんとボタンまでくれたので、有り難くポケットに仕舞った。「でも先輩、好きな女の子にあげなくていいんですか?」 「あ、違う違う。これはアレ、あいつが来たら見せな」「あいつ?」誰のことかと不思議に思ってると、また誰かに名前を呼ばれた。「入川君!」「あ、進堂先輩も卒業おめでとうございます」俺のファンクラブの自称会長。彼はやつれた顔で俺の手をとった。「はぁ……これから毎日入川君の顔を見られなくなると思うと、胃に穴が空き

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #1

    ────朋空君って、本当に綺麗よね。そんな言葉を何回言われただろう。普通なら喜ぶことだろうけど、自分はうんざりしていた。見た目だけであれこれ想像を巡らせる大人、じろじろ見てくる他人、嫌みを言う同級生。全員が敵に見えた。容姿を褒める言葉は呪詛のように聞こえる。多分、あの頃は軽くノイローゼにでもなってた気がする。小学生のときにそんな状態だから、学校の先生にも相当心配された。俺が一方的に周りを跳ね除け、心を閉ざしてるように見えたらしい。君の態度にも原因があると言われて、何て返せばいいか分からなかった。どっちが先に原因をつくったのか、という話をしてるみたいだ。けどそんなことすら考えてると疲れる。もう何でもいいし、どう思われても構わない。先生が言うように、俺の性格が壊滅的なんだ。日に日に卑屈になっていたときに、同じマンションに引っ越してきた少年と出会った。彼は見るからに気弱そうで、クラスにひとりはいるタイプ、という印象だった。母は、彼のお母さんとよく話していた。でも親が仲良いからって子どもも仲良くなきゃいけない理由はない。適当に挨拶して別れようと思ったけど。……そういえば、いつも誰かを待ってるみたいだった。ひとりが好きなタイプ、友達作りが苦手なタイプ……色々見てきたけど、その子はただ、時間が過ぎるのをじっと待っていた。何をするでもなく、腫れた目でぼうっと空を見ている。初めて見かけたときは本気で心配したけど、段々色んなことを思うようになっていった。どうせならゲームとかしてやり過ごせばいいのに、とか。俺ならいくらでも時間の潰し方を教えてあげられるのに、とか。勝手なことをたくさん考えた。あとになって、ウチと同じく母親しかいない子なんだと知り、尚さら上手く生きろ、という気持ちが降って湧いた。美人か必ずしも得するとは限らないが、弱いと生きづらいのは確かだ。教えてあげたい。……けど。自分から話しかける勇気は出ず、日々が流れた。そんなとき、偶然話すきっかけができた。母と買い物に行った帰りに、公園にいる彼を見つけたのだ。正直、やった、と思った。そんな風に喜んだ自分にも内心びっくりした。今まで、誰かと話すが億劫で仕方なかったのに……俺はどうやら、彼とはずっと話してみたかったみたいだ。不思議。話し出してからのめり込むのも早かった。人見知りなのに自分に

  • 帰ろうよ、朋空先輩   やめたい、やめたくない

    俺がこのマンションに引っ越してきたばかりの頃。意外と同じ学区に通う小学生がいなくて、最初はかなり寂しかった。鍵っ子だったし、人見知りが災いしてクラスメイトと打ち解けるのも時間がかかって。( 何でここだったんだろう…… )母も忙しいから、仕方ない。誰にも弱音は零せないけど、いつも考えていた。引っ越しでばかりだから部屋は綺麗で片付いているけど、それが返って虚しい。自分しかいない部屋は、まるで世界から遮断された空間のようだった。マンションの隣に併設された公園に向かうも、誰かに声をかける勇気はない。ブランコに座って、ただ時間を潰していた。『あら。雅月君、こんにちは』そんなときに声を掛けてくれたのは、同じマンションの住人。母とよくお喋りしてる女性、辰野さん。『こ……こんにちは』人見知りが炸裂して声が全然出なかったけど、彼女は笑顔を浮かべた。『そうだ。朋空は会うの初めてよね? このあいだ四階に越してきた入川さんの息子さん、雅月君よ』あれ。息子さんいたんだ。しかも俺と同じぐらいの。恐る恐る見ると、彼はわずかに首を傾げた。『今何してんの?』『え』突然訊かれて、露骨に狼狽えた。別に誰と待ち合わせてるわけじゃないし、やることもない。ただボーっとしていた……って言ったら、初対面から変な奴だと思われちゃうかな。責められてるわけでもないに、怖くて俯いてしまう。そんな俺に、その子は鞄から取り出したお菓子を見せた。『これ美味いんだ。一緒に食べようよ』『え。で、でも』絶対根暗だと思われたのに、意外だった。彼は俺の隣のブランコに座ると、チョコがたっぷりついたお菓子を渡してくれた。そうこうしてる間に、辰野さんは近くの自販機で飲み物を買ってきてくれた。『朋空、お母さん先に帰ってるから。雅月君のことよろしくね』『うん』よく分からないけどよろしくされてしまった。頂いたジュースを飲み、そわそわしながら隣の彼を窺う。すごくかっこいい……。今まで見たことないぐらい、綺麗な男の子だった。もう少し髪を伸ばして喋らなければ女の子に間違われそう。俺ももっと小さいときは女の子だと思われたことがあるけど、彼の場合は美人という言葉がぴったり当てはまった。でも、朋空って名前良いな……。『前はどこに住んでたの?』『え。ええと……』それから、彼とたくさん話した。今

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #5

    一瞬固まったけど、慌ててかぶりを振る。先輩には申し訳ないけど、初めて聞いたようなふりをした。先輩は少し怪しげにこちらを見ていたけど、それ以上は触れずに話を続けた。「高校入る前から、かな。もう知り合ってから三年ぐらいになる」「そうだったんですか……い、良い人ですか?」語彙力ない俺はそれ以外に訊き方が分からなかった。朋空先輩は案の定吹き出し、腕を組んだ。「そうだなぁ。多分、良い人だよ。優しいし、俺の進路についても相談乗ってくれるし」「多分」と付けてしまうのは、結婚してから豹変する人がいるから、と笑った。「俺の前の父親が、モロそういうタイプだった。母さんには幸せになってほしいけど、もうそういう目には遭ってほしくない。……と思ってる」「……」確かに、未来のことは誰にも分からない。特に夫婦は当事者同士のことだし、俺みたいな他人が下手に口を出していいことでもない。「でも、先輩のお父さんになる人だから。……なにかあったら、先輩もちゃんと気持ちを伝えていいと思います。お母さんの為にも」最後の方は消え入りそうな声になってしまったけど、何とか言えた。先輩は頷き、俺の額にキスした。「そうだな。今は見守って……ちゃんと祝福しようと思う」「……うん」引っ越しのことは訊けなかった。でも、再婚の話を聞けただけで充分だと思った。あれもこれもって訊くと、俺の頭もパンクしそうだし。今は見えてるものだけ、ひとつずつ拾っていこう。横になって、先輩の腕枕で眠りに落ちる。この瞬間を大切にしたい。周りから見ればただ寝てるだけ。でも俺にとって、これはデートとそんな変わらなかった。俺達しかいない場所で、人目を気にせず触れ合える。これはこの部屋でしかできないことだ。まどろみの中で手を繋げば、眠りに陥るのは一瞬。アラームが鳴るのも一瞬だ。さっき瞼を閉じたと思うのに、もう十八時を知らせる音楽がスマホから鳴っている。「う〜ん……」ちょっと残念な気はするけど、デートはまだ終わってない。「起きましょうか……」同じ方向。同じマンションに帰れる今は、幸せ継続。隣ですやすやと眠る恋人の頬をつつき、声をかけた。「朋空先輩。帰りましょ」◇「あっという間だな」帰り道、朋空先輩は呟いた。「お前と過ごしてるとあっという間。授業中はあんなに長いのに」「ははっ! 俺もそうです」

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #4

    そうだ、……これだ。俺が先輩にしたいこと。喜んでほしいことは。自分の部屋を出て、真っ直ぐキッチンに向かった。買ったは良いけど全然使ってなかったお弁当箱を取り出し、目の前に佇む。問題は、やっぱり中身のラインナップ。眉間に皺を寄せながら考えていると、リビングでテレビを観ていた母がやってきた。「あれ。雅月、お弁当持ってくの?」母は、今まで時間がある時は俺に弁当を作って持たせてくれていた。仕事が忙しくなってからは俺も自分で作っていた。とは言え二年に上がってからは、めんどくさくて売店に頼ってしまっている。でも今回は、自分の為に作るんじゃない。「うん。とりあえず、明日だけ?」「そうなの。お母さん作ろうか?」「あ! ありがとう、俺が作るから大丈夫!」俺が食べるわけじゃないし、俺が作らないと意味がない。母の提案は申し訳ないけど断り、久しぶりに弁当作りを開始した。いつもご飯を作ってるのに、弁当に詰めるメニューとなると緊張する。しかも、好きな人に渡すなら尚さら……。とりあえず厚焼き玉子は上手くいった。甘めにしちゃったけど、彼の好みだったら良いな。茹でブロッコリーとミニトマト、それから定番のウィンナー。メインはゆかりのおにぎり。彩りは我ながらばっちりだ。……よし。完成!何だかんだやってたら日付が変わりそうだった。これで寝坊したら笑えない。すぐに台所を片付けて、明日の為にベッドに入った。先輩、喜んでくれるかな……。どきどきとわくわくが同じ量放出されて、アドレナリンが出まくってる。結局また興奮して、あまり眠れなかった。( でもちゃんと起きれたからオッケーってことにしとこう……。 )ふらつきながら家を出る。いつもの時間に通学路へ出ると、朋空先輩を見つけた。「先輩、おはやいございます」「おはよう。何かろれつ回ってないけど、大丈夫か?」先輩は振り向きざま、俺のことを心配そうに見つめた。「何か目の下のクマもすごいし。……昨日寝てないのか?」「いえ、ちょっとは寝ました。放課後寝るから大丈夫ですよ」学校に到着し、校門を抜ける。人が多くなる前に渡そうと思い、手に持っていた紙袋を掲げた。「朋空先輩。その……弁当作ってきたんです。め、迷惑じゃなければ……食べてください」「弁当!?」「わわっ。弁当です」先輩は珍しく大声を上げた。俺もちょっとびっく

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #3

    ううん……悩む。結局何も思いつかずに放課後を迎えた。研究室へ行こうとすると、ちょうど朋空先輩を見つけた。「朋……」すぐに駆け寄ろうとしたけと、同じタイミングで先輩に話しかけた男子がいた。おっと……。思わず口を押さえ、足を止める。「あの、辰野先輩。良かったらちょっとお話できませんか……?」どうやら一年生のようだ。恥ずかしそうに声を掛けてるから、多分朋空先輩に好意を持ってるんだろう。何もなければ応援してしまいたくなる。でも朋空先輩と付き合ってる俺としては、胸が痛くなった。先輩は何て返すんだろう……。不安に押されながら様子を見守っていると、朋空先輩は優しい声で、その男の子に振り返った。「ごめんね。今日はこれから用事があるんだ」「そ、そうですか。すみません、引き止めて」「ううん。君も気をつけて帰ってね」おぉ。さすがに慣れてる。二人のやりとりを見て、ホッとした。男の子に見つからないよう遠回りして研究室に向かう。部屋の前へ行くと、朋空先輩がこちらを見て笑った。「お疲れ」「お、お疲れ様です。すぐに鍵あけますね!」職員室で借りてきた鍵を取り出し、ドアを開ける。部屋に入ると、突然ドアに押しつけられた。「ち、ちょっと先輩っ?」「もう少しこのままでいさせて。体力回復してんだ」そのままぎゅっと抱き締められる。先輩からすれば抱き枕に思いきり抱き着いてるような感覚なんだろうけど、俺はめちゃくちゃ心臓に悪い。「ところで、さっき廊下にいただろ。何で声掛けなかったんだ?」「うぇっ。み、見えちゃいました?」「チラッとな」朋空先輩は体を離し、俺の顔を覗き込む。「……あの子が、先輩に告白するのかと思って……声掛けたらまずい気がして、隠れちゃいました」「隠れる必要はないだろ。OKするわけないんだから」「でも、躊躇はしちゃいますよ。可愛い子でしたし」先輩から視線を外し、俯く。ただでさえ可愛い子が照れくさそうにしてたら、勝てる気がしない。そう言って項垂れると、先輩は俺の腰を引き寄せた。「確かに可愛い子だったな」「や、やっぱり」「でも、俺は可愛いだけで付き合ったりしないから」ドアの鍵がかかる音が聞こえた。俯く俺の顔に手を添え、ゆっくりと上向かせる。「俺が欲しいのは、ずっと前からお前だけだよ。……雅月」「先輩……んっ」唇を塞がれる。以前

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #1

    それはつまり……対象にハマってるというより、推すことが目的になってるってやつか。推し活とかでよく聞く。「集団でわーわー騒ぐのって楽しいんだよ。俺は違うけど」「あはは。先輩はひとりで楽しめるタイプですもんね」「そ。ま、俺のことはともかく。お前を追っかけてる奴らが暴走しないよう、進堂に見張らせとく」朋空先輩はスマホを少しいじった後、俺を抱き寄せて頬をぐりぐり押した。「俺はお前とのんびりしてたいだけなのに、周りはいつも騒がしいな」「すみません……」「だからお前は悪くないって」先輩はそう言ってくれるけど、どうしても考えてしまう。先輩みたいに本当に美人だったらいいけど、俺って超地味顔

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #5

    鞄を持って教室から出ると、ちょうど赤城先輩に出会した。彼は以前と違う恰好の俺を見て、露骨に驚いた。「全然感じ違うじゃ〜ん。噂通りだ」「噂? って何です?」「入ちゃんが午前中の間にグレた、って学校中で噂になってるよ」何かそれ、ちょっとカッコ悪いな。どうせなら登校時から始めれば良かった。「あ、でもちょうど良かった。辰野は今日先生から呼び出されてて、研究室に行くの遅れるって。入ちゃんに伝えといてって言われてたんだ」「そうなんですね。わざわざすみません、ありがとうございます」丁寧にお辞儀し、笑顔を浮かべると、赤城先輩はますます怪訝そうに身体を屈めた。「入ちゃんはどんなに見た目を変えて

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #4

    とは言え、これだけ完璧な男の人だ。指輪はしてないけど、絶対綺麗な恋人がいるに違いない。鞄を肩に掛け直し、三人で一階まで下りた。昇降口のドアは閉めてしまってる為、靴を持って職員室から通じる玄関に来るよう言われた。普段は保護者や外部の人が通る為の出入り口だ。非常に気まずかったけど、靴を履いて振り返る。「それじゃ、矢代先生……ありがとうございました」「あぁ。気をつけて帰るんだぞ」先生は腕を組み、爽やかに手を振った。が、「あぁそうそう……悪いと思ってるなら、明日の昼休みに図書室の整理手伝ってくれると嬉しいなぁ」「や、やります! やらせていただきます!」結局罰があった。どんよりしながらド

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #3

    伸びるんじゃなくて縮むのか。色々衝撃で慌てたが、先輩は深呼吸して、俺のことを抱き寄せた。「はー……そうかそうか。俺がいなくて怖かったのか」「だ、だって……一緒に寝てたのに」「そうだよな。よしよし、ごめんな」先輩はうんうん頷き、俺の頭を撫でられる。何かちょっと屈辱感があるけど、現状大号泣してるから仕方ない。でも、起きたら独りで怖かったって……マジで情けない理由で泣いてる。もう駄目だ……。先輩の胸に顔をうずめると、髪の毛を持ち上げられた。「雅月、耳まで真っ赤だぞ」「言わないでください……」羞恥心のパラメーターが天井を突き破った。地面に倒れてのたうち回りたい衝動に駆られたけど、余

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