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復讐のために彼をレンタルしたら、まさかのCEOに溺愛契約で雇われました
復讐のために彼をレンタルしたら、まさかのCEOに溺愛契約で雇われました
ผู้แต่ง: 花柳響

第1話

ผู้เขียน: 花柳響
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-12-29 13:26:02

 人生には「まさかの坂」があるという。

 私、茅野かやの朱里あかり、二十五歳。職業、ブライダルコーディネーター。人の幸せを一番近くで演出し、最高の一日を作り上げるプロフェッショナル。

 そんな私が、まさか私を裏切って別れた元彼と、彼を横からかっさらっていった元親友に、三年付き合った私への裏切りなど無かったことのように、自分の職場で「結婚式を担当して」と笑顔で要求されるなんて。

 それは、三流ドラマの脚本家でも書き捨てるような、あまりにも残酷で滑稽な「坂」だった。

 三ヶ月前のあの日、私は確かに人生のどん底に突き落とされた。

「あ、朱里。久しぶり」

 Felice Luce(フェリーチェ・ルーチェ)の煌びやかな打ち合わせサロン。そこで気まずそうに、けれどどこか優越感を含んだ様子で手を挙げたのは、三ヶ月前に「他に好きな人ができた」と一方的に私をフった元彼の拓也だった。

「朱里、元気だった? 私たち、今日は朱里に『お願い』があって来たんだ」

 その隣で、拓也の腕に甲斐甲斐しくしがみつき、まるで悪意のない子供のように屈託なく笑うのは、大学時代からの親友だったはずの美咲。

 二人の左手薬指には、これ見よがしに揃いのプラチナのペアリングが光っている。サロンのダウンライトを反射するその輝きが、私の網膜を焼くように痛かった。

(……久しぶり、じゃないわよ)

 三ヶ月前、拓也がフった理由である「他に好きな人」が美咲だと知ったのは、別れの直後だった。

 さらに共通の知人からの情報で、二人が私と付き合っていた「半年前」から、とっくにデキていたことも私は知っている。

 この二人は、私がその事実を知らないと思っているのだ。私を「可哀想な、何も知らずにフラれた元カノ」だと思って、今、平然と目の前に立っている。

「……で、何の用? 私、これから新規のお客さんのアテンド入ってるんだけど」

 平静を装う声が、自分でも驚くほど冷たく響く。指先が急速に氷のように冷えていくのを感じながら、私は必死に「プロの私」という仮面を顔に貼り付けた。ここで取り乱して泣き叫んだりすれば、それこそ彼らの思う壺だ。

 そんな私の必死の抵抗を嘲笑うかのように、二人は信じられない爆弾を投下した。

「それで……朱里。俺たち、結婚することにしたんだ」

「そうなの! それでね、朱里にお願いがあって。私たちの結婚式、朱里に担当してほしくて」

 拓也が、美咲の言葉に頷き、厚顔無恥にも言葉を続ける。

「やっぱり、朱里のセンスが一番だって、美咲とも話してたんだ。朱里なら、俺たちのこと一番わかってくれてるだろ? 一生に一度のことだし、信頼できる人に任せたくてさ」

 思考が、一瞬、完全に停止した。

 担当? この、私を半年前から裏切っていた二人を? 私の目を盗んで身体を重ね、今また私の目の前で幸せの絶頂みたいな顔で笑う、この裏切り者たちを? 私が祝福しろというの?

 ああ、そう。そうだった。美咲は昔からそうだ。私が努力して手に入れたものは、何でも欲しがる。服も、アクセサリーも、バイト先も、そして、彼氏も。

 ふつふつと、腹の底からドス黒い何かが煮え滾る。それは単なる怒りというより、もっと粘着質で重い、腸が煮え繰り返るような屈辱だった。

「……いいわよ。喜んで」

 気づいた時、私はブライダルコーディネーターとしての完璧な満面の笑みでそう答えていた。プロとしての矜持が、無様な拒絶を許さなかったのだ。だが、ただで言いなりになるつもりはない。

「ただし、条件がある」

「え?」

「私、その日、別の人の結婚式にゲストとして呼ばれてるから、担当は無理。でも、お祝いには駆けつける。……もちろん、私の大切な人と一緒に」

「え、朱里……彼氏、いたの?」

 拓也が驚いたように目を見開く。「フった元カノが、そんなすぐ幸せになってるはずない」「俺以上の男がいるわけない」とでも言いたげなその間抜けな顔が、無性に腹立たしかった。

「当たり前でしょ。拓也と別れてから、ずっとアプローチしてくれてた人がいて。もう、その人と婚約してるの。拓也なんかより、百倍素敵な人よ。背も高くて、お金持ちで、何より誠実な人」

 嘘だ。全部、その場しのぎの真っ赤な嘘。

 ズタズタにされたプライドを守るためだけに、私はその場でありったけの虚勢を張った。逆境に立たされると意地を張ってしまう、私の悪い癖だ。

「そ、そうなんだ……。でも、よかった。朱里も幸せそうで」

 美咲が心底ホッとしたように笑うのが、また憎らしい。自分の罪悪感を軽くするために、私の幸せを利用しないでほしい。

 こうして私は、自ら退路を断った。自分自身を追い込む、断崖絶壁へと。

 ◇

 そして今日。

 約束の、地獄の結婚式当日。

 私は高級ブライダルサロンやホテルが立ち並ぶ、都内の一等地にある式場のエントランス前に立っていた。

 今日の私(のドレス)は完璧だ。この日のために新調した、日の光を浴びて上品に輝くシャンパンゴールドのパーティードレス。上質なシルクが肌を滑り、背中のラインを美しく見せている。髪も早朝から馴染みの美容院に行き、一分の隙もなくセットしてきた。

 完璧なはずの私。――ただ、もっとも重要な一点を除いて。

「……来ない」

 約束の午後一時を、もう十五分も過ぎている。

 あの日、啖呵を切った手前、私は文字通り「拓也より百倍素敵な、完璧な彼氏」を用意する必要があった。もちろん、そんな都合の良い相手がいるはずもなく、私が頼ったのはインターネットの闇、もとい現代のサービス業だ。

 『完璧な恋人、レンタルします』

 藁にもすがる思いで予約したのは、業界でもトップクラスと評判の、時給五万円の超高級レンタル彼氏(ホスト)。レビューには「まるで王子様」「彼のエスコートで人生が変わった」「もう彼以外愛せない」と、信者めいた絶賛の嵐。

 今日の復讐劇のためなら、結婚資金として貯めていた貯金の一部を切り崩すことなど厭わなかった。金で買えるプライドがあるなら、いくらでも払うつもりだった。

 なのに。

 その「王子様」が、来ない。

「どうしよう……!」

 じわり、と嫌な冷や汗が背中を伝う。震える手でクラッチバッグからスマートフォンを取り出し、何度も電源ボタンを押すが、画面は無情にも真っ暗なままだ。

 昨日、不安と緊張から自宅でやけ酒を煽り、レンタル彼氏の情報を漁りすぎて寝落ちしたせいで、充電を忘れていたのだ。今朝、家を出る時には数パーセント残っていた希望も、ここへ来る途中で力尽きた。

 最悪だ。最悪すぎる。

 式場の華やかなエントランスを、着飾ったゲストたちが次々と通り過ぎていく。楽しげな笑い声、香水の匂い。あの重厚な扉の向こうには、私の人生に泥を塗った二人が、「可哀想な朱里」が来るのを今か今かと待っているのだ。

 今、ここで一人で入っていったら?

(あら朱里、彼氏はどうしたの?)

(もしかして、嘘だったの? やっぱり朱里には俺しかいなかったんだな)

 美咲と拓也の、同情を装った嘲笑う顔が鮮明に脳裏に浮かぶ。

 それだけは、絶対に嫌だ。そんな屈辱を味わうくらいなら、舌を噛んで死んだほうがマシだ。私のプライドは、もう限界まで張り詰めている。

 どうする、私。逃げる? 仮病を使って帰る?

 いや、逃げたら負けだ。一生、あいつらに負け犬として笑われることになる。

 焦りと屈辱、そして自分自身の愚かさへの怒りで視界が滲みそうになった、その時だった――。

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