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Love too late:防戦10

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2026-07-18 06:12:30

***

今日も散々な一日だった。なにが散々って太郎が来てからというもの、自分のペースを乱されっぱなしだから。

「こっちは大人の対応を貫いて、折れてやっているというのに、病人という特権をこれでもかと振りかざしやがって」

玄関で太郎にキスされたあと速攻でシャワーを浴び、何度も何度も顔を激しく拭いまくった。ガシガシ拭っても、悲しいことにキスされた事実は消えないけれど、拭わずにはいられない。

ムカつく気持ちをこれでもかと引きずり、浴室から脱出。その後、台所にてビール缶を開けてがぶがぶと一気呑みし、太郎と顔を合わせることなく、そそくさと寝室に移動した。

「俺は医者、俺は医者……あんな最低なヤツでも、助けなきゃならない義務があるんだ」

もう、思い込み作戦である。義務や責任をみずから背負い込み、なんとかして太郎を治療させるべく、自分を騙しこむことにした。

「まずは俺の中にある基準を、なんとかして崩壊させなければ!」

基準を下げれば、多少なりとも太郎が恰好よく見えるかもしれない。そこから恋に発展とはいかなくても、今までより太郎のことを思いやり、優しくすることができれば、それなりの雰囲気にな
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    オドオドしまくりの歩を後ろに引き連れ、診療所の扉を開け放つ。「ただいま~!」 診療所とは別の玄関もあるが、あえてここから入ることにより、必然的に親父と対面するので、こっち側から入ってやった。自分から逃げたくはないからね、当然の行動だ。 島の住人はお元気のようで、診療所の玄関には靴ひとつない。それを確認したところで、面倒くさそうな顔をした、自分とソックリな親父が診察室からダルそうに出てくる。まるでさっき逢ったばかりの歩と、いい勝負のツラの悪さだ。「お帰り。向こう側から帰ってくればいいのに」 親指で後方を指し示し、今からでもあっちに行けと言ってるのが伝わってきた。「どこからでもいいだろう。全部、家みたいなものなんだから。歩、脱いだ靴を持って、廊下を突き進むぞ」 「はい……」 「武……母さんなら今頃、台所で晩飯の支度をしてるはずだ」 親父の横を通り過ぎたら、何故だか慌てた様子で、声をかけてくる。その意図が分からず、首を傾げながら振り返って、分かったと返事をしたら。「とりあえず話は、晩飯が終わってからだ。昨日みたいに中途半端なところでしたら、酒が不味くてかなわん」 吐き捨てるように言い放ち、逃げるように診療所の外へと出て行ってしまった。「おい、中途半端なところで話をしたのか?」 親父が出て行ったのを確認して歩に訊ねてみたら、微妙な表情を浮かべ、コクリと頷く。「中途半端っていうか乾杯して突然、お母さんが俺たちの馴れ初めを質問してくれて……だらだら話をした感じ」 「そうか。分かった」 両手が塞がっていたので、軽く歩に体当たりし、変に落ち込むことはないというのを伝えてやった。「タケシ先生……」 口にしなくても、伝わる想いはある。目が合ったときには、嬉しさをにじませる眼差しが、しっかりと俺を捉えていた。 ふたりして並んで、自宅に続く廊下をひたすら歩き、玄関に靴を置いて、そのまま台所に直行した。「ただいま、お袋。元気そうでなにより」 「あら、早かったのね。お帰りなさい武」 お袋の声を聞きながら歩に向かって、手に持っていたバックを差し出してやった。「悪いけど、居間に置いてきてくれないか? そのまま座って待っていろ、お茶持っていってやるから」 「わかった。あのさタケシ先生」 バックを受け取りながら、どこか渋い表情を浮かべる。「……何

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    *** ああ、身の置き場がねぇよ・・・・・ 夏だけど、夕方から島の温度が一気に下がるとタケシ先生に聞いていたので、持ってきていた長袖のシャツを着て、リビングのソファの隅っこに座っていたら、お母さんがわざわざ、あったかいお茶を出してくれた。「あ、有難うございますっ」 「いいのよ。お代わり、遠慮なく言ってちょうだいね」 ふわりと微笑んで、持っていたお盆を抱きしめながら、そそくさとキッチンに消えてしまう背中に聞こえるような、大きな咳払いをしたお父さん。「あら、お父さん。なにか?」 「俺にも茶をくれ」 「アナタ暇でしょ。ご自分で煎れて下さい」 「な、なにっ!?」 「晩ご飯の支度で忙しいのよ」 「あのっ、良ければ俺のお茶どうぞ! それと晩ご飯の支度、お手伝いしますけど……」 目の前のソファに座るお父さんにずいっとお茶を差し出しつつ、慌てて立ち上がり、腕まくりすべく袖に手をかけた。「ふんっ、客のお茶に手をつけるワケなかろう!」 「そうよ。王領寺くんはお客様なんだから、ゆっくりしなきゃダメ!」 お母さんが戻って来て俺の両肩に手を置き、無理やりソファに戻してくれる始末。しかもテーブルの上には、お父さんに渡したお茶がしっかりと返却されていた。 わいわい楽しそうに? 何かを言い合いながらキッチンに消えていく、ご両親の姿を見つつ、コッソリため息をつく。 なにかしたくても何もすることがないとか、手持ち無沙汰にも程があるっちゅーの! どうしたもんかなぁと、淹れてくれたお茶に手を伸ばしかけた瞬間、テーブルに置いてあったスマホが軽やかなメロディを奏でる。この着信音はタケシ先生からだ! んもぅ、天の助けとしか思えねぇよ(涙)「もっ、もしもし!」 『出るの早っ。どうしたんだよ』 「そっちこそ、電話してくるの早いじゃん。患者さん、大丈夫なのかよ?」 苦笑いしながら喋るタケシ先生の声に、つい文句を言ってしまった。『俺の役目は、無事に病院に送り届けるだけだからな。あとは現場にいる、医療スタッフがやってくれるし。親父、そこにいるだろ?』 その言葉にキッチンに行ったお父さんを呼ぼうとしたら、いつの間にか目の前のソファに座っているだけじゃなく、恨めしそうに俺のことをじぃっと見つめていて――「ひっ!」 『歩?』 「あっと、い、その……スピーカーにするわ」

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