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第2話

ご飯ちょうだい
私が目を覚まして間もなく、美愛は両親を連れ、怒りをあらわにしながら、病室のドアを乱暴に押し開けた。

父は歩み寄るなり、私の頬を思いきりひっぱたいた。

「お前が人を差し向けて、美愛の結婚式を台無しにしたんだな!」

続いて母も罵声を浴びせてくる。

「あんた!それでも人間なの!?私たち全員を殺すつもり!?」

美愛は母の胸にすがりつき、泣きじゃくっている。

「全部、お姉ちゃんのせいよ!

健人は私を守るために、全身にひどいやけどを負って、今もICUで意識が戻らないままなのよ!」

頬を打たれた勢いでよろめき、ベッドの縁に手をついて、どうにか体勢を立て直す。

顔を上げ、両親を見つめる。

もはや否定する気すら起きない。

「ずっと聞きたかったの。どうしていつも美愛ばかりをひいきするの?

あんたたちは、私が買った家に住んで、私が命をかけて稼いだお金を使っている。私を特別扱いしてほしいなんて言わないけど、せめて平等に扱うことくらい、できるはずでしょ」

父は忌々しげに舌打ちをして、鼻で笑った。

「そんな汚い金、欲しがるものか!

俺たちが欲しいのは、そばにいてくれることだ!お前は人の道に外れたことばかりしている。お前の金を使うとき、俺たちも美愛も後ろめたくてならないんだ。

お前と違って美愛は、ずっとそばにいて、俺たちを気遣ってくれる。美愛こそ、俺たちの自慢の娘だ」

母も追い打ちをかけるように言い放つ。

「美愛をかわいがって、何が悪いのよ!あんたみたいな人殺しをひいきしろっていうの?」

思わず笑いがこぼれた。

冷ややかな視線で、ゆっくりと3人を見回す。

母はつい先日私が贈ったばかりの、鮮やかな緑色のエメラルドのネックレスを、父は数千万円もする腕時計をつけている。美愛が持っているのは、大金を積んでもめったに手に入らないハイブランドのバッグだ。

とてもお金に無頓着な人には見えない。

「昨日だって、お金をせびりに来たばかりじゃない。

今の家じゃまだ狭いから、老後のためにもっと広い邸宅を買ってほしいって言ったのは、どこの誰だったかしら?

私のお金が汚いと思うなら、これからは1円たりとも渡さない。そのなけなしの年金だけで、せいぜい仲良く老後を過ごせばいいわ」

両親の顔色が一瞬にして変わった。

プライドが邪魔をして、今さら頭を下げることもできない。かといって、私という金づるを手放すのも惜しいのだろう。両親はその場に立ち尽くし、こちらを睨みつけることしかできない。

その様子を見た美愛が、慌てて口を挟む。

「それって脅しじゃない!

お父さん、お母さん、心配しないで。お姉ちゃんがいなくても、私がいるもの。峻矢さんに、2人の老後の面倒を見てもらうから!」

美愛のその言葉に安心したのか、両親は再び高慢な態度を取り戻した。

そして、1枚の書類を私の目の前に投げつけてくる。

【絶縁状】

父は尊大に顎をしゃくって指図する。

「サインしろ。これからは、お前が生きようが死のうが、俺たちとは一切関係ないからな」

身をかがめて合意書を拾い上げ、表面についたほこりを払う。そして、ためらうことなく自分の名前を書き込む。

両親は満足げな笑みを浮かべる。

合意書を手に取り、そのまま立ち去ろうとする。

その背中に向かって、私は冷ややかな声を投げかける。

「峻矢なら、世間ではとっくに航空事故で死んだことになっているわ。

それに今、穂高グループを取り仕切っているのは、この私よ。

死んだ人間に、どうやって面倒を見させるつもりかしら?」

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