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第31話

Auteur: Hayama
last update Date de publication: 2026-05-18 17:00:00

カーテンの隙間から差し込む陽光が、床の上に綺麗な四角い光の模様を描いている。それを眩しそうに見つめながら、私はゆっくりとベッドから足を下ろした。

寝室の天井にある木目の数を数えることくらいしかできなかった私にとって小さな解放だった。

智哉さんからようやく「家の中なら歩き回ってもいい」と許可が降りたのは、あの夜から五日が経った頃だった。

それまで頑なにベッドから出ることを禁止されていたのは、熱が下がったばかりの私がまた体調をぶり返したら困るから。それから、あのとき捻挫した足首がまだ動かすたびにピリッと痛んだからだった。

「今日はいい天気…」

ドアを開け、廊下を渡ってリビングへと向かう。この家に連れてこられてからというもの、ずっと二階の寝室にこもりきりだったから、一階の生活スペースに足を踏み入れるのはこれが初めてだった。

気晴らしに外に行こうか。ずっとベッドの上にばかりいたから、自分の体力が砂のようにサラサラと零れ落ちて、どんどん衰えているような焦りがあった。


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    私が信じられない思いで事の成り行きを見守る中、私を腕の中に抱き寄せた智哉さんは、さらに冷気を帯びた声で佐々木さんを追及し始めた。 「親父に情報を流し、ひよりの感情を揺さぶった。違うか」 智哉さんのその絶対的な威圧感を真っ向から浴びながらも、佐々木さんは決して怯むことはなかった。 「……その通りでございます。今日、私は会長に意図的に『ひより様は何もご存知ない』と密告し、黒崎様の携帯に電話が入るよう誘導いたしました」 「じゃあ、あの絶妙なタイミングの電話も…すべて、佐々木さんがわざと……?」 「ええ。どうしても、ひより様のお気持ちを確かめたかったのです。パーティーを放り出してでも、智哉様を迎えに行ってくださるかどうかを」 私を抱き寄せる彼の腕に、ギリッと骨が鳴るほどの強い力が込められる。 「だからといって、こんな土砂降りの冷たい雨の中に走らせていい理由にはならない。ひよりを、くだらない試しに使ったことだけは許すわけにはいかない」 智哉さんの凄まじい剣幕にも、佐々木さんはただ目を伏せ、深く、美しい所作で頭を下げた。 彼女は最初から、この越権行為が発覚すれば即座にクビになることを覚悟していた。 彼女の声には一片の悔いもなく、ただ達成感と覚悟だけが満ちていた。 「出過ぎた真似をいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。どのような罰でも、お受けする覚悟はできております」 自身の罪を潔く認め、一切の弁明をしない佐々木さんに対し、智哉さんの瞳から僅かな温度すらも消え去った。 彼は冷酷な顔のまま、彼女の解雇を、あるいはそれ以上の報復を宣言しようと薄い唇を開いた。 「なら───────」 彼の口から取り返しのつかない処罰の言葉が発せられようとしたその瞬間、私は咄嗟に彼の胸元から身をねじって抜け出した。 「と、智哉さん!

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    「智哉さん……?何を、おっしゃっているんですか……?」 智哉さんの口から紡ぎ出されたその言葉の意味が理解できず、私は思わず彼に問い返していた。 「一体何のお話でしょうか」 佐々木さんは、突然の追及に戸惑ったように目を瞬かせ、引きつった愛想笑いを浮かべた。 「答えろ」 佐々木さんの誤魔化しを一切許さない、地を這うような低い声。 当事者ではない私でさえも思わず肩をビクッと跳ねさせて息を呑んだ。智哉さんの纏う空気がさらに一段階冷え込み、周囲の温度が急激に下がったように感じられる。 「私のような一介の家政婦に、少々買い被りすぎかと存じます。何か誤解をなさっているのでは……?」 智哉さんの凄まじい気迫を前にしてもなお、佐々木さんは最後の一線を守ろうと必死に抗っていた。 「……本当に、そのつまらない嘘を突き通す気か? 俺の追及をはぐらかした代償がどういうものか、お前なら理解しているはずだ」 それは、これ以上嘘を重ねるなら、それ相応の容赦のない報いを受けさせるという宣告だった。 佐々木さんの顔からスッと血の気が引き、仮面のような笑みが完全に崩れ去る。 「そこまで断言なさるということは、もう既に何かご存知のようですね」 佐々木さんの態度が豹変したのを目の当たりにし、私は信じられない思いで息を呑んだ。 「佐々木さん…?」 目の前で起きている現実がどうしても信じられず、私は震える声で彼女の名前を呼んだ。 佐々木さんが私を騙していたなんて、嘘だと思いたかった。 佐々木さんは真っ直ぐに私の方を向き、深く、そしてひどく痛ましげに頭を下げた。 「今まで騙していて申し訳ございません。ひより様、私は会長の命でこの屋敷に潜入していた、スパイでございます」

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