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last update Última actualización: 2025-11-12 06:09:45
「なぜ、儂が蓮司を選んだのか、説明しよう」

 静かになったので、お祖父さまが話し始めた。「儂もそうだった。政略結婚の多い中、恋愛結婚ができたからだ」

 お祖父さまが……。

「好き同士なら、互いにねぎらえる。そうなれば家庭も安泰、仕事も安泰だ。夫婦仲が悪いとうまくいくものもいかなくなる」

 私たちに熱い視線を向けてくれる彼の言葉を受け、蓮司とふたりで頷いた。

「ひかりさん」

「はい!」

「契約結婚だったと聞いて、とんでもないと思っていたら、違っていたと知れて安心したよ。言い訳せずきちんと反省しただけでなく、また、茶道ができないからといって逃げ出さず、真摯に向き合い、そしてなお、新しいアイディアで儂の心を掴んでしまうとは! いや、君が蓮司についてくれたら、御門家の発展はうまくいくと確信した」

「もったいないお言葉……ありがとうございます」

「大変な中、儂への多幸も願ってくれてありがとう」

「いえ、とんでもないことでございます!」

「素晴らしいアイディアというのは、誰にでも出せるものではない。蓮司の傍で御門家のことを学びながら、これからも蓮司を支えてやってくれ」

「はい!」

「うむ。いい返事だ。とても気持ちいいよ。蛸を多幸にしてしまうなんて……はっはっは。愉快、愉快!」

 お祖父さまが笑い出した。みんな驚いている。

「あのお祖父さまが笑うなんて」と、そんな風に聞こえてきた。

 彼が懐から小さな包みを取り出す。鼠地の縮緬に家紋が一つ、控えめに染め抜かれた懐紙入れだった。

「これは儂の若い頃のものだ。古いものだが、持って行きなさい」

 認めてくれたんだ。こんな庶民の私のことを。

「身に余る光栄です。ありがとうございます」

 謹んで受け取り、蓮司の腕に自分の腕を添えた。

「ひかり。この多幸は俺の分もあるのか?」

「みなさんの分を作っていますから、お持ちいたしますね。お願いします」

 全員の下に同じものが配られた。あれだけお祖父さまが絶賛したため、他の方も気になっていたのだろう。早速仲を確認し、食べ始める。

「……優しい味。桜の香りが、薄茶の後口をきれいに払いますね」

「甘すぎないのがいい。酒の後にもいけそうだ」

 波紋のように、小さな感嘆が座のあちこちへ広がっていった。真白さんは扇を膝に置き、伏せていた視線をゆっくり上げる。そこに敵意はなく、敗北の色が滲んでいた。彼女
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  • 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!   122

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