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第113話

Auteur: タヤスイ
「和久お兄様。ありがとうございます」

「ああ」

気のせいかもしれない。だが、背中に回された手が、二度、そっと労うように叩いてくれた気がした。

しばらくして、処置室の扉が開いた。茜はすぐさま立ち上がり、駆け寄った。

「父は……今どうですか!?」

「もう大丈夫ですよ」

専門医がマスクを外しながら応じた。

「ありがとうございます、本当にありがとうございます」

茜は何度も深く頭を下げた。

和久は専門医たちに静かに頷いた。

「車で送らせよう」

「ありがとうございます」

看守が再度書類の確認をしてから、専門医たちを通した。

今回の騒動があったため、看守は茜に特別に一時間だけ、父との面会延長を許可してくれた。

一時間後、医師の再確認が終わり、父の容態が完全に落ち着いたのを見届けてから、茜は後ろ髪を引かれる思いで病室を出た。

看守に短く礼を告げ、和久の後を追う。

去り際、和久が若彰にちらりと視線を向けた。若彰は小さく頷くと、音もなくその場から姿を消した。

……

車に乗り込んでから、茜はしばらく押し黙っていたが、顔を上げると、ちょうど和久と真正面から視線がぶつかった。
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