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第96話……金印の主

last update Tanggal publikasi: 2026-07-16 00:00:47

 ――聖帝国暦六四五年二月上旬。

 ユリウスは、相変わらず政務に忙殺されていた。

 アーヴィング大公国は、カスパル派と反カスパル派に分裂し、各地で小競り合いを繰り返している。

 表向きの争点は正統性や統治方針であったが、実際にはもっと生臭かった。

 ゴチエ大国のエーテル資源帯。

 大公国最大の権益ともいえるその鉱区を、どちらの派閥が握るのか。

 その一点をめぐり、両派は抜き差しならぬ対立に陥っていた。

 ユリウスは、どちらの陣営にも明確には加担していない。

 だが、それは中立というより、様子見に近かった。

 彼の治めるヴァルカン伯爵領は小さくもないが大きくもない。けれど、軍備、補給、信用、人材のいずれも、安易に敵対してよい相手ではなくなっていた。

 だからこそ、両派はユリウスを誘い、試し、時には脅した。

 ユリウスは水面下で、両派の中にいる比較的穏健な人物へ接触し、資金や物資を回していた。

 味方を作るためではない。今すぐ敵を増やさぬためである。

 執務机の上には、未決裁の書類が山のように積まれていた。

 その山の一角に、通信端末の呼び出し音が鳴る。

 発信者名を見た瞬間、ユリウスは
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