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水の檻〜ミズノハコ。出られる場所に留まる理由
水の檻〜ミズノハコ。出られる場所に留まる理由
작가: しずか@水Pプロジェクト

1話/プロローグ

last update 게시일: 2026-07-02 06:41:23

朝のダイニングは、いつもどおり賑やかだった。

緩いざわめきとコーヒーの香りが流れる、そんな朝だ。

キッチンではゆかりが軽やかに動き回り、食器の音とコーヒーの香りが漂う。

その中に、寝不足の足取りでようこがふらりと現れる。

ようこ「おはよう……ゆかり、コーヒーお願い」

ようこは大きくあくびをしながら椅子に体を預けた。

ゆかりは鍋を混ぜる手を止めず、ちらりと笑う。

ゆかり「はーい、昨日も夜更かしですか?濃いめで用意しますね」

ようこは半分眠ったまま、テーブルに突っ伏す勢いで崩れかけていた。

りえ「ようこさん!今朝はミーティングだと言っていたではありませんか!遅いです!」

新聞を片手にしていたあいも、すかさず突っ込む。

あい「そうだぞようこ。私のように5時に起きて筋トレしろとは言わないけど、朝はリズムを作る大切な時間。シャキッとしないと」

ようこは片目を開け、どこか拗ねた声で返す。

ようこ「仕方ないでしょ……4時まで仕事してたんだから……夜更かし組には朝のミーティングは辛いのよ……」

またテーブルの上に沈む。

その横に、ゆかりが湯気の立つマグを置く。

ゆかり「お疲れ様です。どうぞ。うーんと濃いめですよ」

ようこはマグを握ったまま、テーブルを見回した。

ようこ「ありがとゆかり……それより、私より遅い人たちは?まだ寝てるの?そっちに文句言ってよ……」

その問いに、ゆいが俯いたまま頬を赤く染める。

ゆい「ヤスタカさんとあとの方達は……その……昨夜は……」

その赤さだけで、彼女が何を見て、何を聞き、何を思っているかが全員に伝わった。

ゆい「あ、出てきたみたいです……けど……朝までだったみたいです……」

ようこはコーヒーを吹きかける勢いで顔を上げた。

ようこ「え?そこまで聞こえちゃうの?今もってこと?」

ゆいはさらに紅潮しながら、震える声で続ける。

ゆい「いえ……ヤスタカさん以外の方達の息が荒くて……足取りもなんだか引きずるような感じだったので……」

ゆいは俯いたまま、さらに真っ赤になる。

ゆい「それと、この家は防音がしっかりしてるので、ちゃんと扉を閉めたら私でもほとんど聞こえません……」

ようこは、そこでりえの方にゆっくりと意地悪な視線を滑らせる。

ようこ「そうね。確かに隣の部屋の音も聞こえないものね。例えば……昨日の昼間のスタジオみたいに扉を開けたままだとあんな声まで聞こえちゃうの?」

りえは派手にコーヒーを吹き出した。

テーブルを拭きながら、しかし必死で言い訳を続ける。

りえ「な!?そんなはずはありません!ちゃんとヤスタカさんと2人で鍵まで確認しました!」

言い返した瞬間、自分から墓穴を掘ったと気づく。

りえ「……ようこさん……嵌めましたね……」

ようこはマグを持ち直し、ニヤリと口角を上げる。

ようこ「私は例え話をしただけよ。りえちゃんの自爆じゃない?」

りえは真っ赤になったまま震えるだけ。

あいが机を叩く。

あい「りえ!お前もか?けしからん!風紀が乱れてる!」

またしてもようこが淡々と火消しをする。

ようこ「風紀ねえ……この家にそんなものあったかしら…それに日頃から風紀を乱してるのは……」

視線がゆっくりとキッチンへ向く。

ゆかりが楽しげに朝食を作っている。

ゆい「……そうですね……ゆかりさん……いつでもどこでもなんで…正直部屋の外に出る時は緊張します……大体ゆかりさんの声が聞こえてくるので……」

ゆいはとうとう真っ赤を越えて湯気を出しそうだった。

そんな空気を変えるべく、ようこが口を開く。

ようこ「でもあれね。けしからんと言えばあいのその胸じゃない?そそる形と大きさよね……じゅるり……」

りえ「ようこさん……オヤジくさいですよ……」

あい「お?これか?自分としては重くていい筋トレ程度にしか思ってなかったけど……ふふ……ヤスタカはお気に入りでな……いつも潰れるほど揉みしだいてくれるんだ」

なにが楽しいのか、あいは自分の胸を鷲掴みし出した。

ゆい「潰れるほどって……痛くないんですか?……」

ゆいの普通の疑問に、あいはキョトンと答える。

あい「何を言ってるんだ?痛いからいいんだろ?おかしなことを言うな?」

ゆい「え!?私がおかしいんですか?」

ようこ「大丈夫よゆいちゃん。おかしいのはあいとこの家の方よ」

りえ「全く……とんだドMなのにどの口で風紀とか言ってるんでしょうね」

ようこ「下の口じゃない?」

ゆい「……さすがに下品すぎます……」

少しの沈黙を切り裂いたのは、張りのある男の声だった。

ヤスタカ「おはよう!」

見た目に反して、声だけは妙に若い。

その勢いのままキッチンへ向かう。

ヤスタカ「ゆかり、朝食の準備手伝うよ」

続くように、いろは・しずか・めぐみがダイニングへ現れる。

三人とも足取りは重く、疲労の色が濃い。

いろは「おはようございます……はぁ〜しんどいです……けど、幸せです♡」

しずか「しんどいは賛成……ホントなんなのかしら……あの体力……」

めぐみ「あたし……もうだめ……腰が動かない……50手前の男の体力じゃ無いわね……」

昨夜……いや、今朝までの惨状を語るような、恨みのこもった……なのに満足げな声。

りえが呆れたように呟く。

りえ「3人がかりでこれですか……しかも本人はあんなに元気で……バケモノですね……今更ですが……」

視線がキッチンへ集まった時、全員が気づく。

“そこにいるはずのゆかり”がいない。

見えるのは、心なしか息を荒くしたヤスタカだけ。

あい「ゆかり!そこで何してるんだ!?」

ゆかり「ふぁい?なにふぉいふぁれましへも……」

ようこが呆れながら、決定的な一言を投げる。

ようこ「……ひとまず口を離しなさい……」

ちゅぱ。

ゆかり「何と言われましても……“お掃除”ですが?」

しずかは額を押さえ、あいは怒鳴りかけて言葉を噛む。

あい「……確かにゆかりが1番風紀を乱してるな……羨まし……じゃなくて!時と場所を考えろ!節操が無さ過ぎる!」

めぐみ「そうよ〜ゆいがもう限界みたいよ」

その通り、ゆいは机に突っ伏して瀕死状態。

ゆかり「ん♡んく……ん!……はぁ……ご馳走様でした♡」

満足げに立ち上がりながら、ハンカチで口元を拭う。

ゆかり「さあ、朝食にしましょうか。私はお先にいただきましたが♡」

しずか「はあ……もういいわ……食べましょ」

みんなの話し声と食器の音ののち、ヤスタカが本題を切り出す。

ヤスタカ「さて、前から言っていた通り今日から俺とあいとゆかりで2泊3日の出張だけど、みんなはどんなスケジュール?」

いろは「そうですね……特別立て込んではいませんが、あいさんのコラムが少し押してますね。それ以外はそれぞれで個別の作業です。

ヤスタカさんが必要な作業は入れないようにしておきましたから」

ヤスタカ「そうか。じゃあ出先であいの進捗は俺が見張っておくよ」

めぐみはまだテーブルに沈んだまま、弱々しく声を漏らす。

めぐみ「牧場か……ちょっと撮ってきて欲しい画があるから後でラインで送るわ。ロケハン、私の替わりにお願いするわ」

ヤスタカ「一緒にくるか?MM号ならまだ乗れるぞ?」

めぐみは伏せたまま鋭い目だけ向ける。

めぐみ「そうね、こんな状態じゃなければ行ったかもね!あんたのせいでね!」

ヤスタカ「すまん……めぐみは体小さいから気をつけてるつもりだったんだけど……」

めぐみ「ちっぱい言うな!」

ヤスタカ「言ってない!体が小さいっていったんだ!」

めぐみ「小さくない!」

ようこがクスクス笑いながら呟く。

ようこ「でもあれね、ドMコンビとMM号で2泊3日ねぇ……何もないといいけど……」

その言葉にハッとして立ち上がるりえ。

りえ「あ!本当に気をつけてくださいよ!その組み合わせ、前に職質されたチームじゃないですか!」

しずか「ああホントねぇ。街中で盛ってたんだっけ。そりゃ通報されるわよ」

ふとあいを見ると、“悪いことをした”と言う顔ではなく、むしろ嬉しげに遠い目をして恍惚と呟く。

あい「ああ……あの時は本当に楽しかった……見えてないのに見られているかもと想像しただけで……昂りが蘇る……あんな人数に襲われてしまったら私はどうなってしまうのか……ああ!」

カチャン。

コーヒーカップが置かれただけなのに、空気が凍りつく。

いろはが笑顔のまま、静かに言った。

いろは「……お二人とも……いえ、お二人だけじゃ無いですが、皆さんがどんな性癖を持って、どこで誰と何をしても何も言いません……皆さん大人なので……ですが……」

笑顔の奥に潜む怒気は深く、冷たい。

いろは「ヤスタカさんは優しいですからね。皆さんが何をしてても許してしまう……そこも素敵なんだけど……このプロジェクト……というか、ヤスタカさんの足枷になるような事をしたら……」

いろははさらにニッコリと笑う。

言葉の続きを発さず、笑顔のまま面々を見渡す。

その沈黙に全員が震えた。

空気を和らげたのは、またヤスタカだった。

ヤスタカ「うん、いろは……俺のために言ってくれてるのはわかったよ。ありがとう」

空気が少し和む。

しかし、ヤスタカの声には別の熱も混じっていた。

ヤスタカ「いろは……この後時間あるかな?俺の部屋に来て。ゆかり、あい、ちょっと出発遅れるけど待っててくれ」

ようこが呆れたように笑う。

ようこ「あ〜あ、これは出発は明日と思った方がいいんじゃない?」

りえ「いや、さすがにヤスタカさんでも徹夜明けで……ありえますね……」

この騒がしさも、ほんの数ヶ月前には想像もつかなかった……

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