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流れる時に沈む月

流れる時に沈む月

By:  はじめKumpleto
Language: Japanese
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一ノ瀬明咲(いちのせ あき)と芦屋時也(あしや ときや)は、三度も結婚式を挙げたけど、そのたびに、みんなの笑い者になった。 一度目の式。誓いの言葉を交わしている途中で、朝比奈若菜(あさひな わかな)が鉄のハンマーを持って乱入してきた。 二度目の式。司会が「新郎新婦、ご入場です」と明るく宣言した直後、会場のスクリーン一面に、時也と若菜のツーショットが次々と映し出された。 三度目の式。バージンロードを歩き出す寸前、時也のスマホに若菜からビデオ通話が入る。 「時也、私ここから飛び降りる。これで借りをチャラにしてよ?」 時也は鼻で笑う。「飛びたいなら早くしろ。俺の結婚の邪魔をするな」 でもその直後、会場の誰かが叫ぶ。「若菜さんが本当に飛び込んだ!」 時也は「誓います」と言いかけたけれど、そのまま明咲を見つめて「どうあれ、一人の命だ。明咲、式は延期しよう」と静かに告げた。 それきり、彼は会場から消えた。 明咲は崩れ落ちた。「時也、もう延期なんてしなくていい……私、結婚やめる!」

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Kabanata 1

第1話

一ノ瀬明咲(いちのせ あき)と芦屋時也(あしや ときや)は、三度も結婚式を挙げたけど、そのたびに、みんなの笑い者になった。

一度目の式。誓いの言葉を交わしている途中で、朝比奈若菜(あさひな わかな)が鉄のハンマーを持って乱入してきた。

血走った目で祭壇の花を叩き落とし、ガラスが割れる音と悲鳴。あっという間に、幸せの場は修羅場に変わった。

時也はすぐに警察を呼び、若菜はあっけなく連行された。

二度目の式。司会が「新郎新婦、ご入場です」と明るく宣言した直後、会場のスクリーン一面に、時也と若菜のツーショットが次々と映し出された。

どの写真も直視できないほど生々しい。明咲は、その場に立ち尽くすしかなかった。

時也は何も言わず、スタッフに目配せして電源を落とすと「明咲、俺が全部片付ける。待ってて」とだけ告げて会場を出ていった。彼女とゲストを置き去りにして。

後から聞いた噂では、時也は若菜を郊外の更生施設に突っ込んで「生き地獄を見せてやる」と言い放ったらしい。

三度目の式。バージンロードを歩き出す寸前、時也のスマホに若菜からビデオ通話が入る。

画面の向こうで、若菜は海を背に微笑んだ。「時也、私ここから飛び降りる。これで借りをチャラにしてよ?」

時也は鼻で笑う。「飛びたいなら早くしろ。俺の結婚の邪魔をするな」

でもその直後、会場の誰かが叫ぶ。「若菜さんが本当に飛び込んだ!」

SNSのトレンドには【#朝比奈若菜、海へ身を投げ捨てる】

時也は「誓います」と言いかけたけれど、そのまま明咲を見つめて「どうあれ、一人の命だ。明咲、式は延期しよう」と静かに告げた。

それきり、彼は会場から消えた。

明咲は崩れ落ちた。

まわりのざわめきと、好奇の視線が肌に刺さる。

「三度目だよ?やっぱり時也さんは若菜さんに未練があるんだろうね」

「明咲さんも運が悪い……」

父の一ノ瀬和正(いちのせ かずまさ)は慣れたようにゲストへ頭を下げ、母の由紀子(ゆきこ)は駆け寄ってきて明咲を抱きしめる。「明咲、もうやめよう?時也さんは、信用できない」

胸の奥が強く締めつけられて、息が詰まる。

悔しさがこみ上げてきて、スマホを握りしめた指が震える。今すぐ時也に電話したい。帰ってきてほしい。その思いだけが胸を満たす。私って、いったい何者なんだろう。あなたにとって私は、何なんだろう――

けれど、そのとき。画面の上にニュース速報の通知が表示され、指先が空中で止まった。

【朝比奈若菜、海に飛び込み、芦屋時也が救出。元恋人たちの因縁?】

手の震えがさらにひどくなる。無意識のまま通知をタップした瞬間、ニュース動画が自動で再生された。

ニュース動画には、ずぶ濡れの若菜を抱きしめる時也。その声は憎しみを隠しながら、でもどこかに情けが滲む。

「若菜、君はまだ償いが終わってない。死ぬなんて許さない」

若菜はそっと彼の顔に触れる。

「時也、私、こんなに恨まれているんだから、私が死んだら本当は嬉しいはずじゃないの?」

「……いや」

時也は力いっぱい若菜を抱きしめる。

「死んでほしくないのは、まだ愛してるからでしょ?」

その問いに、時也は何も返さなかった。

額を寄せて、静かに涙を流す。

明咲の心は、そこで音を立てて崩れた。

いまさら、全部わかった。時也が若菜を憎んだふりをしていたのは、結局「愛」があるから。

中途半端な愛と憎しみは、誰も救わない。

五年前の記憶がよみがえる。

あの頃、時也と若菜は「完璧なカップル」だった。明咲も、きっとふたりは一生一緒だと思っていた。

その頃の明咲と時也の接点は、たった一度だけ。

通学路で不良に絡まれていた明咲を、時也が助けてくれた日。

白いシャツの時也が逆光の中に立っていて、まるで月みたいに遠くて。でも、その瞬間、明咲は一目で恋に落ちた。

けど、自分は釣り合わないってわかっていた。だからその気持ちは、心の奥底にしまったまま。

その後、芦屋家には突然の不幸が降りかかった。両親は心労で自殺して亡くなり、時也はすべてを失った。

朝比奈家はすぐに縁談を白紙に戻し、若菜は家族の命令で他の家へ嫁いでいった。

傷心の時也は、若菜に詰め寄ったけど、逆に突き飛ばされ門前払い。

愛は憎しみに変わった。

明咲は、そんな時也の転落を見ていられなかった。昔の恩と秘めた想いから、両親に頼んで時也を助けた。

見返りなんて考えず、もう一度彼が立ち上がってくれればそれでよかった。

やがて時也は、五年かけて芦屋家を再興し、再び一族の頂点へ返り咲いた。

そして彼が最初にしたのは――明咲へのプロポーズ。

その求婚は華やかで、ネットでも配信されたほど。

白いバラを手にした時也は、カメラ越しでも伝わるほどまっすぐに言った。

「明咲、どんなときもそばにいてくれてありがとう。これからは俺が、君を幸せにする。結婚してほしい」

明咲は泣きながら何度もうなずいた。

そして時也は、二つ目の復讐に手を染めた。朝比奈家を破滅させ、若菜の夫の家も容赦なく潰した。

やり方は徹底していて、若菜を何もかも失わせた。

「今でも若菜さんのこと、好きなの?」

明咲が問い詰めると、時也は手を握り返して答えた。「もう彼女には何も感じていない。あの日見捨てられた瞬間、すべて終わった」

その言葉を明咲は信じてしまった。

唇を震わせて笑おうとしたけど、涙の方が早く溢れた。

「……お母さん、私、やめる」

母は驚き、でもすぐに明咲を抱きしめる。「うん、やめよう。絶対もっといい人がいるよ。自分を大事にしよう」

母の腕の中で、明咲は昔言われた言葉を思い出していた。

「時也と若菜は、どうやったって離れられない。そんな相手を選んだら、傷つくだけだよ」

その言葉が、現実になっただけ。

明咲は連絡先リストから、ある番号を選び、通話ボタンを押す。

「……ねえ、前に言ってた、私をお嫁さんにするって話……まだ有効?」
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