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第3話

Author: 氷砂糖
その日の夜、頭が割れるように痛んだ。意識が混濁する中、私は誤って朔陽に電話をかけてしまった。

彼はすぐに戻ってきて、白湯を注ぎ、私に薬を飲ませてくれた。

「晴也を責めないでやってくれ。単なる目新しさに惹かれているだけだ。数日もすれば、また君のことをママって呼んで泣きついてくるさ。ちょうどいい、君もゆっくり休め。この数日でずいぶん痩せたじゃないか」

私の容態が落ち着いたのを見届けると、彼は再び病院へと戻っていった。

しかしその後の数日間、私は異常なほどの眠気に襲われるようになった。目が覚めても口の中がひどく苦く、腹部には差し込むような痛みが断続的に走る。

私は一人で病院に足を運んだ。

医師は私の顔色を見るなり、怪訝そうな表情を浮かべた。

「薬を変えましたか?以前の処方はあなたに合っていましたから、勝手に変えないでください」

私は首を振った。薬は常に持ち歩いているし、パッケージも以前のままだ。

だが、医師がそれを手に取り簡単な成分検査をすると、すぐさま異常が発覚した。

「これは睡眠導入剤に近い成分です。あなたは以前から、この手の薬には耐性がないはずですよ。以前、不眠でお辛い時に処方した際も、全く同じ副作用が出ましたよね。今は睡眠に問題がないはずなのに、一体誰がこんなものを飲ませたんですか」

全身の血の気が引き、指先から凍りついていくような感覚に陥った。

脳裏に、朔陽が薬をごそごそといじっていたあの夜の光景がよぎる……信じられなかった。

朔陽は私の夜中の電話を煩わしく思い、二度と邪魔されないようにと、私に睡眠薬を飲ませたのだ。

ついこの間、朔陽が私にこう忠告してきたばかりではないか。

「薬には必ず副作用があるんだ。飲む薬を絶対に間違えちゃダメだぞ」

今となっては、私に邪魔をさせないための最善策が「私を深く眠らせておくこと」だったというわけだ。

私は自嘲気味に笑った。

鋭利な刃物で、心臓を何度も、何度もえぐり取られるような痛みが走る。

家に戻り、自分の荷物を整理し始めた。離婚のことは、もう一刻たりとも先延ばしにするつもりはなかった。

引き出しを探っていると、ふと一枚の国語のテスト用紙が舞い落ちた。

そこには、教師からの満点の評価とコメントが赤字で書き込まれていた。

【ママへの純粋な愛、素晴らしい!】

一瞬、意識が遠のいた。かつて晴也が幼稚園に通い始め、最初に覚えてきた歌は「おかあさん」だった。

小さな手を引いて帰る夕暮れの道、晴也は舌足らずな声で、楽しそうに口ずさんでいた。

「ママ、僕、大きくなったら大きなおうちを買ってあげるね。僕のママが世界で一番だよ」

私は震える手でそのテスト用紙を拾い上げ、目を落とした。

【僕とママは、まるで冬の霜のようです。冬の間しか一緒にいられなくて、暖かくなると消えてしまいます。ですから僕は、早く冬が来ればいいのにと、ずっと願っているのです】

行間から溢れ出す純粋な愛。だが、それは私へ向けられたものではない。凄まじい絶望と挫折感が全身を襲った。

呆然とどれほどの時間座り込んでいただろうか。私はゆっくりと立ち上がると、母の写真を丁寧に拭き清め、その胸に抱き寄せた。

お母さん……あなたが残してくれた贈り物は、ちっとも良いものじゃなかったよ。一緒に、ここから出ようね。

私はもう誰もいらない。

ガチャリと玄関の鍵が開く音が響き、朔陽が退院したばかりの晴也を連れて帰ってきた。

晴也はまだ幼く、隠し事などできない。帰り道で話していたであろう話題を、無邪気にそのまま続けていた。

「ねえパパ、また九ヶ月も耐えなきゃいけないの?背筋をピンと伸ばして座らなきゃいけないし、あれも食べちゃダメ、これもダメ……本当につらいよ」

朔陽は苦笑しながら、晴也の頭を軽く小突いた。

「バカなこと言うな。ママはお前のためを思ってやってくれてるんだぞ」

晴也は不満げに唇を尖らせた。

「だって僕、ちっとも楽しくないもん!千愛ママなら絶対にこんなことしないよ!」

……ああ、そういうことだったのか。

再びそんな言葉を耳にしても、今の私は驚くほど冷静だった。

彼にとって「耐え難い苦痛」だったあの九ヶ月間は、私が心血を注ぎ、何よりも大切に慈しんできた歳月だった。

あのアレルギー期間が少しでも延びてしまわないかと、私は日々戦々恐々として過ごしていたというのに。

彼らにとって、私と過ごす時間はただの「厄災」でしかなかった。

寝室にいる私の姿に気づいた朔陽は、会話を聞かれていないと高を括り、晴也を軽くたしなめてからこちらへ連れてきた。

「瀬奈、晴也は本当にやんちゃで困るよ。君は病院に来なくて正解だった。じゃないと、晴也に振り回されて君の体が持たなかっただろうからな」
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