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第74話

作者: 花野めい
由樹の瞳が、すっと険しさを増した。

長い脚を運んで、ロビーの中央まで来て、ゆっくりと立ち止まった。

三久はこれまでずっと、洲人との間に適切な距離を保つよう努めていた。しかし由樹の姿を目にした瞬間、洲人がわざと三久のほうへ親しげに近づいたのだ。

「いやあ酒井社長、こんな遠く離れた地で会えるとは、奇遇というか、妙な縁があるね」

洲人は両手をスラックスのポケットに突っ込み、その瞳の奥に浮かぶ飄々とした笑みに、わずかな挑発の色を混ぜていた。

「神崎社長がここにいると聞いてな」

由樹の眼差しは深く静かで、感情を読み取らせなかった。

洲人は目を細め、頭の中で何かを素早く張り巡らせた。

「……わざと俺の邪魔をしに、横槍を入れに来たのか!?」

「ビジネスは実力で決まるものだ。奪うなどと人聞きの悪い」

由樹はまっすぐ立ち、その視線が時折、三久へと静かに向けられた。

洲人はギリッと歯を食いしばり、向こうを睨みつけていた。

そして三久は火花を散らす二人の間に立ち、交差する視線の波に巻き込まれ、広々とした涼しいはずのロビーがまるで煉獄のように熱く感じられた。

そんな二人の間の異様な空
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