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第327話

Author: 風羽
瑠璃は否定せず、短くうなずいた。

「そうよ」

そう言って歩み寄り、エレベーターのボタンを押す。

だが次の瞬間、輝の腕に押しつけられ、背中がつるりとしたタイルに強くあたって鈍い痛みが走った。

「……輝、何のつもり?」

「何のつもりって?俺が怒っちゃいけないのか?

どういう男を探してるんだ、瑠璃……俺が満たしてやってないってのか?茉莉のそばにもいるし、もう接待も行かず、毎日お前の周りをぐるぐる回ってる。それでも外に男を探すのか?」

……

瑠璃は顔を上げ、壁に押しつけられたまま、かすかに笑った。

「理屈は通ってるように聞こえるわね。でも輝……私はあなたの妻じゃないの。自分の残りの人生を託す相手を探すの、普通のことじゃない?」

輝は息を荒げた。

「金に困ってんのか?男がいないと死ぬのか?」

「私のことに口を出さないで。それと——茉莉に会いたいなら、事前に電話して」

「その男に見られて機嫌損ねるのが嫌なのか?どう機嫌悪くなろうと、茉莉は俺の子だ」

瑠璃はじっと輝を見つめ、その瞳の奥にわずかな涙を光らせた。

エレベーターの扉が開くと、彼女はさっと中に滑り込み、そのまま閉じていく。

輝は閉まった扉を見つめながらも、理性を保ち追いかけはしなかった。

代わりにドアを蹴りつけ、吐き捨てるように低く吠える。

「後悔すんなよ、瑠璃!」

先週まであんなに首に腕を回して甘えてきたくせに——今さらどこの野郎だ?どんな大物が、あいつの目にかなった?

胸に苦さを残したまま、輝は車へ戻った。

その夜は一睡もせず、車中で煙草を吸い続けた。

翌朝。

瑠璃が茉莉を学校へ送ると、小さな彼女はすぐに輝の車を見つけて、ぱっと笑顔になり「パパ!」と駆け寄ってくる。

輝はすぐにドアを開け、降りてきて抱き上げた。

「うちの茉莉、抱っこだ。また背が伸びたな」

……

無精髭が頬をかすめ、茉莉はくすぐったそうに笑う。

「パパ、煙草くさいよ」

輝は娘のほっぺに軽く口づけし、「パパのこと、嫌いになった?……そうなの?」とからかうように言った。

茉莉は父の首にぎゅっと腕を回し、「茉莉はパパがいちばん好き!」と言った。

輝は何か言おうとしたが、喉が詰まり、そのまま娘をぎゅっと抱きしめた。

少し離れたところで見ていた瑠璃の目尻が、そっと赤く染まっていく。

……

午前十
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Comments (1)
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良香
舞さん、瑠璃さんの相手はあのライバル社長なんですか!そんな気がします。 でもねー。輝は舞さんを好きだったんですよ、とか言われたら返す言葉がないよね。
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