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第328話

Author: 風羽
その岸本という男を、舞は快く思っていなかった。

妻を亡くしてまだ半年足らずで再婚を決め、しかも十歳を超える息子がいる。

再婚夫婦など、腹の底では別々の思惑を抱えているものだ。

瑠璃が自分のキャリアを手放すべきではない——舞はそう感じていた。

しばし考え、私的な立場から口を開く。

「瑠璃……茉莉のためにも、もう一度よく考えて。確かに栄光グループでの今の立場では、これ以上の昇進は望めないかもしれない。

でも、二年後にはあなたに持株の1%を譲ることもできるわ。岸本の何兆円という資産には及ばないけれど……手の中にあるものこそ、本物だと私は思う」

その言葉に、瑠璃は胸を打たれた。

今の自分の立場では到底得られない条件——それが舞からの純粋な情であることはわかっている。

「ありがとうございます……葉山社長が私を大事にしてくださっているのはよくわかっています。でも……ごめんなさい」

涙を含んだ声でそう告げ、深く一礼する。

数年前、輝ともみ合いになった自分を、舞が病院へ連れて行ってくれた日のことを思い出す。

あの日の恩は、ずっと忘れていなかった。

舞も、彼女の決意を悟っていた
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