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第798話

Author: 風羽
運転手は、慕美の勢いにすっかり負けてしまい、もう何も言えなかった。

彼女は節約家というわけではないが、今朝は時間がなかったのでタクシーを選んだ。ただ、澪安の別荘の敷地内にはタクシーが入れない。

仕方なく一キロほど走って一般道まで出て、ようやく拾えた。

会社に着いたのは――九時五分前。

入口では、腕時計を睨むように見つめる江原玲子(えばら れいこ)が立っていた。

無駄のない雰囲気と、張り詰めた空気。

――あ……厳しい人だ。

慕美は深くお辞儀をした。

「江原さん、おはようございます」

玲子は表情を変えず、ただ一言。

「次はギリギリに来ないこと」

「はい!」

慕美が席に着くと、隣の席の若い女性が椅子を滑らせて近づいてきた。

「小城詩(こじょう うた)。詩って呼んで」

「私は九条慕美。慕美でいいよ」

二人は握手を交わし、ぱっと笑い合う。

「私、サイトのメンテ担当ね」

「私は……雑用係、かな?」

思わず二人同時に吹き出した。

慕美は、この新しい職場が早くも好きになっていた。

少し怖そうな玲子も、心は悪くない。社員を酷使しないし、六時きっかりに退勤できるらし
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