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第9話

Author: 心の底
莉亜は潤が美琴にした返事にショックを受けて、目を閉じた。

潤は莉亜のほうへ視線を向け、彼女の頬を触り、彼女が完全に寝ているのを確認してから立ち上がってコートを手に取り出ていった。

ドアが閉まる瞬間、莉亜はすぐに体を起き上がらせて、トイレに駆け込み吐いた。

彼女は胃の中のものを全部吐き出すと、冷たい床によろよろと座り込んだ。その時突然携帯が鳴った。

莉亜は調子の悪い体を支えながら立ち上がり、携帯を取りに行った。

それは弁護士からの電話だった。

「小鳥遊様、相馬潤氏の資産は全て確認いたしました。訴訟を起こせば、家は五戸、土地二つに、一千億の財産分与が約束できます」

莉亜は携帯をぎりぎりと握りしめ、かすれた声で言った。「それから私の株も合わせて、たったそれだけしか得られないのですか?」

「そうです。相馬氏はすでに彼のほとんどの資金を会社の運営のほうへつぎ込んでいます。小鳥遊様がもっと多くのお金を得ようと思ったら、彼の過失や、法に触れるような行為を見つけてそれを証拠に争うしかありません」

その言葉を聞き、莉亜の頭にはパッと潤とあの女が結婚していることが浮かんだ。

結婚証明書の偽造。

彼女を騙し、会社に投資させ、人生で最も輝く年齢の数年間を無駄にしてしまった。

これらを合わせれば、潤の大部分の財産を賠償として受け取ることができる。

そして目下、引き続きその証拠集めをしなければならない。それで潤に弁解の余地すら与えず、おとなしく賠償させて、全てを奪ってやるのだ。

それでやっと彼女の心の中に居座り続ける怒りを発散させることができる。

莉亜が目を閉じると、ふともう一つの家のことを思い出した。

その屋敷のことを思うと、胸がチクチクと痛んだ。

当時、母親は重い病を罹っていた時、莉亜と潤が結婚することを知り、月花湖付近にある高級別荘地の川沿いの屋敷を購入してくれたのだ。それは二人が結婚した後に暮らすためにと思い、共有名義で買っていた。

母親が逝去し、莉亜はその家に行くと母親のことを思い出してしまうのが怖くて、どうしても近づけなかった。

この家は唯一、莉亜と潤の共有名義となっている家だ。

しかし、この家の一ミリ、一円たりとも潤に財産分与させるわけにはいかない。

莉亜は声のトーンを落とした。「私名義の月花湖の家は、相馬潤と共有名義になっています。この家はさっき言っていた五つの家の中に含まれますよね?」

弁護士は一瞬言葉を詰まらせた。「いいえ、不動産権利書にはあなた方二人の名義で記載されています。結局、あの家はお二人のものです。完全に小鳥遊様だけのものにしたいのであれば、あの家の放棄に同意するサインをさせるか、彼がその家を小鳥遊様に譲る必要があります」

莉亜は沈黙した。

彼女は彼に気づかれないように財産を綺麗に分けて、罪の証拠を手に潤に重い代償を払わせなければならないのだ。

それまで、潤に気づかれるわけにいかない。

放棄に同意するサインをさせるのは不可能だ。彼に譲ってほしいと頼むのは……きっと一体どういうことかと問い詰められるに決まっているから、誤魔化しも難しい。

莉亜は思わず眉間にしわを寄せた。「もし、そのどちらも難しかったら?」

弁護士は少し考えてから言った。「それ以外なら、小鳥遊様のご友人のどなたかに、その家を売却してしまう方法があります。その方に家を売った後、離婚してまた買い戻せばいいのです」

その方法には莉亜も瞳を輝かせた。

まず頭に浮かんだのは、仲が一番良い親友の風間玲衣(かざま れい)だ。

あまりに多くの事が起こってから、莉亜は潤との関係を断ち切るために忙しく、この件を玲衣に伝えていなかった。

莉亜は電話を切ると、すぐに玲衣に連絡した。

玲衣はIT業界で活躍する所謂キャリアウーマンで、出張から戻ってきたばかりで半身浴の後サウナに入り、時差でぼけた頭をゆったりと休めているところだった。

彼女は莉亜から事の経緯を聞き、卒倒しそうなほど激怒して、サウナに入っていた時よりもさらに真っ赤になった。

「相馬潤、あのクソ男が!一度ならず二度までもそんな真似をするなんて。あいつにチャンスを与えてやったのに、それを棒に振ったわけね!汚い不倫野郎なんて捨ててしまいなさい!ねえ、私に何ができる?」
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