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私の彼氏はちょっとだけ心配性。:004

last update publish date: 2026-06-14 16:17:54

 コンビニから出て少し歩いた信号で葵依は立ち止まる。赤信号の間、葵依は背負ったリュックから携帯を取り出して画面を見ると不在着信2件とLIMEのメッセージがあった。

『どうして電話をしないんだ?

 電話にも出ないし。

 何かあったのか?』

 というメッセージを読んで葵依は「しまった」と呟く。この不在着信とメッセージの相手は彼女の叔父だ。

 葵依は二十二時にバイトが終わってから、この信号を渡る前に必ず叔父へ電話をするのが日課だった。

 叔父──門ヶ原かどがはらしげるは葵依の身元保証人だ。彼は妹、即ち葵依の母親が病死して、葵依を引き取るつもりでいたが葵依はそれを断った。母親と過ごした場所を離れて知らない土地へ行きたくないし、今まで疎遠だった叔父へ甘える事が出来なかった。そんな葵依を門ヶ原は説得を続けたものの葵依の意思が変わらないと悟って、彼女の意思を尊重した。ただ「これだけはさせて欲しい」と葵依が住むアパートの家賃を葵依が高校を卒業するまでの三年分支払う。何故三年分しか払わなかったというと、高校を卒業したら大学入学と共に今住んでいるアパートよりセキュリティが厳しい物件へ引っ越す約束をしているからだ。

 門ヶ原は姪っ子で可愛い葵依が一人暮らしをする事にも不安を感じているのに、それに加えてアルバイトをすると聞いた時は、

「金銭的援助をするからバイトなんてしないでくれ。もし変な男から襲われでもしたら、はるかに合わせる顔がない」

 茂はアルバイトを止めさせようと必死になった。最終的に頑固な葵依に根負けをして茂は折れたのだが……。

『1.夜道を自転車で走らない』

『2.電話をしながら帰る事』

『3.アルバイトのシフト表を見せる事』

『4.男に送迎をしてもらわない』

 という、条件を出した。

 一つでも破ったらバイトは禁止だ。

 家賃以外の金銭的な援助を茂へ相談しないで済むように、彼に迷惑を掛けたくなくてアルバイトを続けたい葵依はこれらの条件を飲んだ。自転車通学の葵依は茂との約束を守る為に、学校からバイト先へは行かずに一度自転車をアパートへ置いてから、歩いてバイト先へ向かう。これを二年もの間、葵依は続けた。バイトの帰りは必ず叔父と電話をしながら帰路につき、アパートの部屋へ入って玄関の鍵を締めるまで電話は切らない。この条件は一度も破った事はない。今日こんにちまでは。

『ごめんなさい。今日が最後だからみんなからってプレゼントをもらっていたので帰るのが遅くなりました』

 トットットッ。

 リズム良く文字を打って送信ボタンを押す。

「いまから、電話をするね……」

 声に出しながら続きの文字を打つ。

 俯きながら文字を打っている葵依は背後へ忍び寄る影に気付かなかった。

 ──送信ボタンを押すと同時に、葵依は声を掛けられた。

「おい」

バイト先のコンビニから出て数歩歩いた先で声をかけられて葵依は振り向いた。そこに立っていたのは真っ黒いスーツに身を包んだ男で顔見知りだった。

(あっ。113番さんだ)

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  • 私の彼氏はちょっとだけ愛がオモい。   私の彼氏はちょっとだけ心配性。:001

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  • 私の彼氏はちょっとだけ愛がオモい。   私の彼氏はちょっとだけ心配性。:008

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