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第六話

Author: 深海 涙
last update publish date: 2026-03-14 09:13:42

テラスに出ると、ウーテはまだ椅子に座りあごに手を当てながら何やら呟いていた。お兄様はウーテの正面に立ち、「いったん、止めてくれ」と肩をたたいた。

ウーテは「なんだ?」と言って、顔をあげた。

「この空間に防音魔法をかけてくれないか」

「構わないが、防音魔法の中に含むのは、僕一人か、お前とナーシャか、あるいは、僕とお前、もしくは、このテラスにいる者を全員か?」

「テラスにいる者全員で頼む」

ウーテは頷いた。

わたくしはウーテがどう魔法をかけるのか気になり、見つめていた。お兄様も黙って待っている。少しして、ウーテが首を傾げた。

「何かほかに聞かれたくない話があるんじゃないのか?」

「そうだ、だから魔法をかけてくれるのを待っている」

「もう、かけてあるが?」

「いつの間に?」

ウーテは「魔法範囲の確認がとれた直後にかけた」と言った。魔法を使える者は限られている。わたくしたちは魔力を持たずに生まれたため、どう発動するかも知らない。ツェーザルがダンスの途中で足を治療してくれたのだとしたら、その時も、特別な動作はなかった。

「わかった。私はナーシャと話があるから、お前は魔法の研究の続きに戻ってくれ」

「防音魔法の範囲に私を入れたのだから、私に聞かれても問題ないのだな?」

「お前が興味を持つような話ではない」

「問題がないなら、早速始めてくれ」

ウーテに催促をされお兄様は「ああ、わかった」と、わたくしに顔を向けた。

「お前の好みでさっきの男たちを集めたそうだが、どんな条件を出したんだ?」

ウーテが「ほお、なかなか興味深いではないか」と、割り込んできた。

わたくしは、指定した四つの条件と、一人は背が高すぎ、一人は不正を行ったので対象外だったことも話した。

「僕がジェラルドより背が高くなるにはどうすれば……」

ウーテが真剣な顔で呟いた。

「ウーテ様はいまのままで十分すぎるほど魅力的ですわ」

「では、つき合ってくれるのか?」

わたくしがウーテの冗談をどう受け流すか考えている間に、お兄様が「冗談を言っている場合じゃない」と、ウーテに釘をさした。

「ナーシャ、何かあったのか?」

お兄様が心から心配してくれているのが、表情と声でわかる。

わたくしに『何かがあった』のは確かだ。成人を迎えたこの日からほぼ十八年後まで生きたあとで、戻って来たのだ。皇后として国政に携わり、皇帝に嵌められすべてを失った末に、塔の中で一人の男を愛した。

「今朝まで、皇太子殿下が来るのをあれほど楽しみにしていたではないか」

わたくしは、随分昔の話なので細かなことを覚えていなかった。楽しみにしているふりをしていたかもしれない。

「殿下は来ていないではありませんか」

「だからといって、恋人を作るのは行き過ぎだ」

ウーテから「ナーシャは、皇太子を好いているのか?」と、質問が入った。

「いえ、まったく」

わたくしは直ぐさまに否定した。

「それなのに、待っていたのか?」

回帰前、わたくしは確かにマクシミリアンが来るのを待ち続けた。しかしそれは、恋慕からではない。家門に対する責任からだった。

「アナスタシアは、幼い頃から皇太子妃になるための教育を受けてきた。今日は、アナスタシアが成人を迎えいよいよ皇太子の婚約者になる準備が整ったことを知らしめるための舞踏会だ」

ウーテは眉根を寄せたままで「僕も一応は貴族だ。家門の結束のため政略結婚があるのも理解している。しかし、当人同士がこれほど嫌がっているのに無理矢理結びつけて、良いことが起こるとは思えない」と言った。

ウーテの考えは間違っていない。マクシミリアンは、わたくしと結婚させられたのがどうしても許せなかったのだろう。だから、公爵家ごと滅ぼしたのだ。わたくしたちを処刑しなかったのはせめてもの情けだったのだろうか。今となっては確かめるすべはない。

「お兄様、まだお父様には言えないのですが……」

ウーテが「待て、防音魔法の範囲を変えなくても良いのか?」とわたくしの言葉を遮った。

「他の誰にも話さないでいてくださるなら、ウーテ様には知っておいていただきたいです」

「もちろん、他言はしないと約束する」

わたくしは一度目を閉じ、ゆっくりと呼吸した。それから、目を開き、真っ直ぐと前を見据えた。

「わたくしは、絶対に皇太子殿下の妃にはなりません」

お兄様は真剣な顔をしてただ黙っている。ウーテは深く頷いた。

お兄様の立場を考えれば、手放しにわたくしを応援できないこともわかっている。

「お二人に協力していただきたいわけではありません。ただ、わたくしの不可解な行動の意味を、先に知っておいて欲しいだけです」

ようやくお兄様が頷いた。

「応援するとは言えない。しかし、邪魔はしない」

「十分ですわ」

わたくしは、反乱を起こしたあとお兄様がどうなったのか知らない。失敗すれば、戦死か処刑のどちらかの終わりが待っている。

お父様は、率先してわたくしとマクシミリアンの結婚を押し進めたのだからある意味自業自得だけれど、お兄様は家門の方針に巻き込まれてしまっただけだ。

わたくしがまた皇后になってしまうと、おなじ結末を迎えてしまうかもしれない。

回帰をして数時間、今のところ、お兄様に前回の人生の記憶があるとは感じない。記憶があるのならば、きっとマクシミリアンとの婚約を阻んでくれるだろう。

ウーテが「ナーシャは具体的にどうするつもりなんだ?」と訊いてきた。

「まずは、皇太子妃にふさわしくない令嬢だと、世間に思われるように振る舞います」

「それはいけない」

お兄様は早速止めてきた。

「そんなことをしたら、他の男との結婚も難しくなるだろう。皇太子妃にならないのは構わないが、ナーシャが不幸になるのは受け入れられない」

「問題ないさ。嫁ぎ先がみつからない時は僕がいる」

「ウーテは女じゃないか」

「僕が女だからなんだと言うんだ。僕にできないことなどない」

ウーテと結婚する気はないが、味方をしてくれるというだけで心強かった。

「皇太子の婚約者が決定するまでの間だけ、複数人の男を手玉にとる奔放な令嬢と見られれば良いのだろう?」

ウーテは話がわかる。お兄様の方は「ナーシャがいろいろな男と会うなんて、ダメに決まっている」と、顔を左右に強く振った。

「いろいろな男と会う必要はないさ。毎回僕とでかければいいんだ」

わたくしは、ウーテと噂になるだけでは効果が薄いと感じた。

ウーテは構わずに続けた。

「ナーシャ、好みの男の特徴を言ってみてくれ」

わたくしは塔に来ていた男の姿を想像し伝えた。

「背はジェラルドより高いくらいで、肩幅が広く……顔は? どういう顔がいい」

わたくしは首を傾げた。

「まあいい、僕好みの顔にしておこう」

ウーテがそう言った直後、見知らぬ男性が目の前に現れた。背が高く、肩幅が広い。そしてウーテが男性的になったような顔をしている。服装は、濃紺の騎士服だ。

「どうだ、気に入ったか?」

ウーテの声だった。

「魔法で姿を変えられるのですか?」

「正確には姿を変えているのではないが、説明しても理解できないと思う」

「しゃべらなければ、別人だな」

お兄様の指摘にウーテは男性の声に変え「これでいいか」と返した。

「毎回自分で容姿を考えるのは面倒だから、ナーシャが指定してくれると助かる」

ウーテが一人でいろいろな男性のふりができるのはわかった。しかし、ウーテにそこまでの負担をかけるのは申し訳ない。

「手伝っていただくのは嬉しいのですが、ウーテ様には何も得がないのにそこまでしていただくのは心苦しいです」

「得ならある」

ウーテは男の姿のまま続けた。

「僕は、ナーシャ、君に興味があるんだ」

その後耳元で「君から不思議な魔力を感じる。痕跡ではなく、魔力だ」と囁いた。

それから、元のウーテの姿に戻った。

「計画を手伝う代わりに、僕は君の研究をする。対等な取引だと思わないか?」

わたくしは過去に戻って来た影響だと、その時は思い込んでいた。

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