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37話「掛けたままで」

Auteur: 団紡るう
last update Date de publication: 2026-07-23 11:51:50

 土曜日の昼過ぎ、灯が来た。

 玄関に革靴が揃えられた。廊下を歩いて、地下書庫へ向かう気配がした。いつもの順番だった。お茶を淹れた。

 トレーに乗せて書庫に降りた。

 灯は棚の前の椅子に座って、本を開いていた。今日は探し物ではなく、最初から読書の構えだった。「どうぞ」

「ありがとうございます」

 顔を上げなかった。本から視線を外さないまま、手だけを伸ばしてカップを受け取った。

 テーブルに置いた。

 また本に戻った。

 一階に上がった。台所の片付けを始めた。先週の分で少し溜まっていた作業を片付けながら、棚の整理をして、冷蔵庫の中を確認した。

 三十分ほどして、書庫を覗いた。

 灯はまだ同じ椅子に座って、本を読んでいた。

 テーブルのカップを見た。

 一口も減っていなかった。

 テーブルの上でそのままになっていた。カップの外側に水滴がついていた。冷えている証拠だった。灯はカップの存在に気づいていなかったのか、気づいていて後回しにしたのか、どちらか分からなかった。たぶん気づいていなかった。

「冷めますよ」

 灯が顔を上げた。カップを見た。

「あ」

「飲んでいなかったんですか」

「すみませ
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