로그인苦しさよりも、早く三田村を悦ばせたいという感情が上回っていた。腰を緩く揺らして和彦は、熱い欲望を少しずつ内奥に受け入れる。
パジャマの上着を脱がされて、興奮のため、これ以上なく尖った胸の突起を音を立てて吸われた。「あっ……ん」 和彦は恥知らずな声を上げると、三田村の頭を抱き締める。すると三田村も腰を抱き寄せてくれた。二人は、これ以上なくしっかりと繋がった。 性急に快感を追い求めるのがもったいなくなるほど、三田村との一体感は深い陶酔を和彦に与えてくれる。三田村も似たような感覚を味わってくれているのか、大きく息を吐き出し、そっと目を細めた。 自分がこの男に与えてやれるのは快感ぐらいだと思うと、その快感のために、いくらでも尽くしたくなる。それほど三田村は、和彦にとって特別だ。 和彦が腰を動かそうとすると、三田村に背を抱き寄せられる。「……もう少し、こうしていていいか? 先生の中を、よく感じたい。俺みたいな男を甘やかして、愛してくれる、特別な場所だ** 寝顔だけは無邪気すぎるほどなのだが、と心の中で嘆息した和彦は、隣で眠っている千尋の顔をまじまじと眺める。和彦を貪りつくして満足したのか、大きなあくびを二度、三度としたかと思うと、あっという間に寝息を立て始めたのだ。 無防備な姿を見ていると、自分の部屋に戻れと叩き起こす気にもなれない。 和彦は、千尋の茶色の髪をそっと撫でてから、Tシャツの上から肩に触れる。行為の最中も、千尋は決してTシャツを脱ぎ捨てることはなかったため、背に一体どんな刺青が彫られつつあるのか、片鱗をうかがい知ることすらできなかった。 今の状態の千尋なら、Tシャツを少し捲ったところで気づかないかもしれないが、それはそれで千尋のプライドを傷つけそうでもあり、疼きそうになる好奇心は抑えておく。 和彦は慎重に起き上がると、肌掛け布団を千尋の体にかけてやる。ドロドロに汚れた状態で眠るわけにもいかず、簡単にシャワーを浴びてこようと、浴衣を引き寄せて着込む。さすがに、枕元に丸まっていた帯を解いていたときは、顔が熱くなった。 覚束ない足取りで寝室を出た和彦は、ギョッとして立ち竦む。「――……帰って、いたのか……」 ようやく和彦が声を発すると、悠然と座椅子に座っている賢吾が、ニヤリと笑いかけてくる。「俺の部屋だからな」 これは当てこすりだなと、さすがに和彦でもわかる。しかも、かなりこちらの分は悪い。襖を開けたままにしていたため、すべての声も、衣擦れの音すら聞かれていただろう。 賢吾がいつからいたのかは知らないが、布団に横になっていると、隣室の座卓はまったく視界に入らないため、気づかなかった。物音でも立ててくれたなら、和彦よりも鋭い千尋が反応していたはずだが、その様子がなかったということは、賢吾もあえて、気配を殺していたということだ。 いろいろと言いたいことはあったが、ここで賢吾を責めては、完全に八つ当たりだ。 よほど苦い顔をしていたらしく、賢吾が機嫌を取るように、和彦に向かって優しい仕種で手招きする。仕方なく和彦は歩み寄り、賢吾の傍らに座り込んだ。「俺の部屋で、俺の息
そう呟いた千尋が上体を伏せ、和彦の胸元をペロリと舐め上げてくる。このとき微妙な角度で内奥を突き上げられ、痺れるような快感が一気に体の奥から湧き起こる。和彦が背を弓形に反らして反応すると、千尋が歓喜に目を輝かせた。「いい? 中が、すげー締まった」 擦りつけるようにして腰を動かしながら、千尋が胸の突起を口腔に含む。その刺激にも和彦は反応し、もどかしく体を揺する。千尋にしがみつきたくて仕方ないのに、両手首を縛められているため、それができない。 穏やかな律動を繰り返されているうちに、和彦の欲望は再び身を起こし、千尋の引き締まった下腹部に擦り上げられるようになる。和彦は伸びやかな悦びの声を溢れさせていた。「あっ、あっ、あっ……ん、ああっ――」「気持ちいい?」 汗を滴らせながら千尋が顔を覗き込んできて、軽く唇を吸い上げてくる。このとき内奥深くを抉るように突かれ、和彦の意識は舞い上がる。「……気持ち、いい……」「俺も。先生が悦んでくれると、もっと気持ちいい」 和彦は思わず顔を背け、ぼそぼそと応じる。「恥ずかしいことを、こういうときに言うな。反応に困るだろ」「嬉しいなら、素直に喜んでくれれば――」「だから、恥ずかしいんだっ」「こんなことしてるのに?」 千尋に両足を抱え直され、繋がっている部分がよく見えるよう腰の位置を高くされる。腰の下に枕を入れられているせいもあり、和彦の目にも、浅ましい部分がよく見える。ひくつきながら、必死に千尋のものを呑み込み、締め付けているのだ。さらに千尋は、和彦に見せ付けるように内奥からわずかに欲望を引き抜き、すぐにまた挿入してくる。 和彦が唇を引き結び、強い視線を向けると、千尋は笑みをこぼした。「いいな。先生にそういう顔されると、ゾクゾクする」「お前、性質が悪い――……」 千尋が再び欲望を引き抜く。今度は完全に引き抜かれ、閉じきれない内奥の入り口が物欲しげに蠢く。あまりに生々しい光景に、和彦は眩暈に襲われる。こんな光景を、和彦
すべてを見透かしたような千尋の目で見つめられ、和彦は露骨に顔をしかめる。「そんな厄介な性質、ぼくは持ってない」「えー、本当に?」 返事を避ける和彦の顔を、おもしろがった千尋が覗き込んでくる。ムキになって顔を背けようとしたが、その前に千尋に唇を塞がれていた。 油断すると、すぐに千尋の背に両腕を回しそうになる。我に返って自重しようとするが、口づけが熱を帯びると、つい腕が動いてしまう。それを二度、三度と繰り返したところで、千尋が悪戯っぽい表情で提案してきた。「手、縛ってあげようか?」「……聞くまでもなく、すでにやる気満々だろ」 そう答えた次の瞬間には、和彦の体はひっくり返され、浴衣の帯で後ろ手に縛られる。すぐにまた仰向けにされると、いきなり両足を抱え上げられ、腰の下に枕を突っ込まれた。「千尋っ……」 制止する間もなく、両足を左右に大きく開かされ、千尋が顔を埋めてくる。内腿に熱い息遣いを感じ、和彦は身を竦めた。 羞恥を感じる部分をじっくりと千尋に観察され、それだけで体が熱くなってくる。千尋は、和彦の反応を楽しむように、欲望にフッと息を吹きかけてきた。反射的に和彦は腰を震わせるが、しっかりと両膝を掴まれているため、足を閉じることもできない。当然、縛められている両手も動かせない。 相手が千尋であるせいか、怖さはない。むしろ緩やかな拘束は、官能を高める刺激となっている。「反応いいね、先生」 そう言って千尋が、身を起こしかけている和彦の欲望に唇を這わせ始める。先端を舌先でくすぐるように舐められてから、括れを唇で締め付けられる。欲望の付け根から指の輪で扱き上げられながら、欲望を口腔深くまで呑み込まれていた。「うっ、うっ……。あっ、い、ぃ――」 浅ましく腰が揺れる。もっと興奮しろと言わんばかりに、千尋の片手が柔らかな膨らみにかかり、優しい手つきで揉みしだかれる。和彦は上体を仰け反らせて反応していたが、そんな和彦の反応に煽られたように、千尋の愛撫が激しさを増す。「うあっ」 柔らかな膨らみにも舌が這
布団に押し倒された和彦の上に、千尋がのしかかってくる。この部屋で、いつも和彦に覆い被さってきて、顔を覗き込んでくるのは賢吾だが、こういう形で千尋を見上げるのは、違和感よりも後ろめたさを感じる。そして、抗い難い高揚感も。 浴衣の帯を解かれて前を開かれる。二日ほど前に賢吾から与えられた愛撫の痕跡が、ようやく薄くなりかけていたところだが、まだ完全に消えてはいない。千尋は、和彦の体を見下ろしながら、それを確認しているようだった。「こうして見ると、オヤジってやっぱり、先生のこと大事にしてるよね。優しく撫で回すんじゃなく、大蛇らしく、ギリギリと締め上げてる感じ。何かの拍子に先生を抱き殺しそう」「……楽しそうな声で、不吉なことを言うな」「でも、オヤジにそこまで想われるって、嬉しくない?」 この場合、どう答えればいいのか、和彦には咄嗟に判断がつかなかった。顔を背けると、千尋の唇が耳に押し当てられる。「俺も、先生のことを想ってる」 熱い舌に耳朶を舐られたあと、チクリと痛みが走る。千尋が耳朶に噛みついたのだ。身震いしたくなるような疼きが背筋を駆け抜け、和彦はうろたえていた。「――噛み付いて、先生の血も肉も味わいたいぐらい」 首筋を舐め上げられて呻き声を洩らす。すでに興奮している千尋を煽るのは容易く、和彦の体の上で獣が猛る。 浴衣と下着を剥ぎ取られ、肌に千尋が食らいついてくる。もちろん、血が出るほど噛み付いてくるわけではなく、強く肌を吸い上げ、自分の痕跡を残し始めたのだ。「お前……、この部屋だから、興奮しているのか?」 千尋の髪を撫でながら和彦が問いかけると、上目遣いに見上げてきた千尋が、恨みがましい口調で応じる。「俺は必死なのに、先生は余裕たっぷり……」「びっくりしてるんだ。お前が……必死だから」 千尋は大きく息を吐き出すと、和彦の唇を軽く吸い上げてくる。「俺はいつでも必死だよ。先生に触れるときは、頭がカアッとして、難しいことは考えられなくなる」「…&h
この家で過ごしながら、生活パターンの違いから、何かとすれ違うことの多い千尋だが、やはり何かを感じ取っているらしい。 千尋が軽くため息をつき、畳を片手で叩く。和彦は座椅子から下り、畳の上に座り直すと、待ちかねていたように千尋が胸元に抱きついてきた。本当に行動が犬だなと思いながら、苦笑しつつも和彦は、千尋の頭に手を置いた。「……先生がここにいるって、すげー実感できる」「大げさだな。食事時には、けっこう顔を合わせていただろ」「でも、ゆっくり話せてないじゃん。……俺、先生に知ってもらいたいこと、いっぱいあったんだ。先生が、自分の兄貴に会いに行くって知ったときは、ものすごく切羽詰ってたこととか。先生がもう二度と、俺――俺たちのところに戻ってこないんじゃないかって、本気で心配してたことも」 殊勝なことを言う千尋が、先日自分に何をしたのか思い出し、和彦は複雑な心境になる。 まるで体に呪詛でも刻みつけるように、千尋は守光とともに、和彦の体を貪り、嬲ってきたのだ。賢吾の執着心の強さを知っている和彦だが、千尋もまた、強い。若くて純粋で無謀な分、怖いとさえいえる。 ただ、守光については、執着心と表現していいのだろうかと、判断がつきかねていた。「それに、仮に無事に戻ってきても、先生が……、精神的に参って、別人みたいになってたらってこととかさ。俺、先生の様子を、ちょっとだけ観察してた。――大丈夫、だよね?」 強い輝きを放つ目に、うかがうように見つめられて、和彦の胸は締め付けられる。長嶺の男の本質にあるのは、間違いなく傲慢さだ。同時に、毒のように強烈な甘さも併せ持っている。だから和彦は、簡単に翻弄されるのだ。 千尋の引き締まった頬を撫でながら、柔らかな声で応じる。「生憎だがぼくは、お前が思っているよりずっと、ふてぶてしいみたいだ。というより、ぼくが落ち込むことを許さないように、周りの男たちがかまってくれるからな」「……何、先生。俺のことは放ったらかしのくせに、もうそんなに、いろんな男たちとは会ってたわけ?」「変なことを想像
「あの家が、ぼくを必要としていると知ったところで、少しも嬉しくないんだ。きっともう、ぼくとあの家が歩み寄ることはできない。それが確認できただけでも、会ってよかったと思う。間に入った里見さんには、申し訳ないけど」 座卓に置いた文庫本の表紙を、手慰みに撫でる。そうしながら和彦の脳裏に蘇るのは、英俊と会ったときの光景だ。 思い返すたびに息苦しい感覚に襲われていたが、自分を駆り立てるように仕事をこなし、すっかり慣れ親しんだ男たちと顔を合わせていくうちに、その感覚も薄れつつある。だから、里見に連絡を取ることにしたのだ。今回は、悲壮な覚悟は必要としなかった。「兄さんに、言いたいことは言えたと思う。そのことを、あの人たちは納得しないだろうけど、ぼくはこれ以上話をするつもりはない。また里見さんに何か頼んできたときは、そう伝えてもらえるかな。一生連絡を取らない――という決心まではしていないけど、当分、話をするつもりはない」 電話の向こうから聞こえてきたのは、深いため息だった。一瞬、里見を失望させただろうかと身構えた和彦だが、次に耳に届いたのは、鼓膜をくすぐるような笑い声だった。「……里見さん?」『ごめん。最初の頃は、君は誰かに脅されていると思っていたんだ。だけど直接君に会って、英俊くんからも話を聞いて、今の君の言葉を聞いて、ようやく受け入れるしかないと思った。――君は、今いる場所で必要とされて、それ以上に大事にされているんだって』 里見が想像しているのは、穏やかで優しくて、美しい環境なのだろうと思うと、現実とのギャップに和彦もつい声を洩らして笑ってしまう。だが、男たちの情や、複雑な事情に雁字搦めになりながらも、和彦にとってこの世界が心地いいのは間違いない。「そう……、単純なものじゃないけどね」 ほろ苦い気持ちを噛み締めながら和彦が呟いたとき、廊下を歩く足音が聞こえてくる。「それじゃあ、もう切るね」『和彦くんっ』 携帯電話を耳元から離そうとしたとき、突然里見が大きな声を発する。「何?」『この電話を切ったあと、携帯の番号を変えたりしないでくれ。英俊くんに番号を知
「頼むから、部屋の外でそんなことを冗談でも言わないでくれ。ここの組員たちに睨まれたくない」 ヤクザの組長からこんなことを言われると、冗談とわかっていながらも心臓に悪い。ただ、憂鬱さに捕らわれそうになった気持ちは、賢吾のその冗談でふっと軽くなっていた。 コーヒーを啜った和彦が何げなく視線を上げると、賢吾がこちらを見つめていた。そして、自分が腰掛けているソファを指さした。こちらに座り直せと言いたいのだ。わずかにうろたえた和彦だが、結局、賢吾の指示に従う。 案の定、賢吾の隣に座った途端、肩を抱かれて引き寄せられた。 賢吾の大きな手が、ワイシャツの
「これが、総和会会長と長嶺組組長が会うということだ。話した内容なんて関係ない。会ったという事実が、重いんだ。……俺が、ここに近づきたがらないのも納得できるだろ?」 車が走り出してすぐに、和彦の手を握った賢吾が、皮肉っぽい口調で言った。完全に気が抜けた和彦は、シートに深く身を預ける。「だったら、会長が長嶺の本宅を訪ねてくることは?」「帰ってくる、という表現のほうが正しいんだろうな。あの家を建てたのはオヤジだ。俺は、長嶺組を継いだと同時に、あの家も継いだ。……まあ、総和会会長の肩書きがある間は、オヤジ
突然のことに声も出せない和彦は、大きく目を見開く。南郷は、手荒な行動とは裏腹に、静かな表情で和彦を見つめていた。 こんなときに限って、マンション前には人はおろか、車すら通りかからない。 南郷の大きく分厚い手が眼前に迫ってくる。絞め殺されるかもしれないと、本気で危機を感じた和彦だが、仮にも総和会に身を置く男がそんなことをするはずもない。 南郷の手は、和彦の首ではなく、両頬にかかった。「これが、長嶺組長のオンナ……」 和彦の顔を覗き込みながら、ぽつりと南郷が呟く。淡々とした声の響きにゾッとして、和彦は手
「……それは、ぼくの実家のことを指しているのですか?」「わしは、難しい話に興味はないよ」 機嫌よさそうに話す守光の表情から、狡猾さは感じられない。しかし、本当に狡猾で、頭が切れる人間は、完璧に自分の本性を隠せるものだ。和彦の父親が、まさにそうだ。 急に警戒心を露にした和彦に向けて、守光はさらに言葉を続ける。「あるのは、長嶺の〈悪ガキ〉二人を骨抜きにしている先生への興味だ」「悪ガキ……」「わしにしてみれば、でかくなったつもりの賢吾はまだ悪ガキのままで、千尋はさらに