Beranda / BL / 血と束縛と / 第16話(8)

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第16話(8)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-02-11 14:00:53

 当の秦は、組員にしっかりコーヒーまで淹れてもらい、こちらも美味そうに啜っている。明らかに、和彦が食事を終えるのを待っている様子だ。

 最初は気づかないふりをして席を立とうかとも思ったが、和彦と秦はまだ、交わすべき会話を交わしていなかった。

 秦のせいで和彦は、不可解な衝動を胸の内に抱えてしまった。これはきっと、和彦の特別な男たちといくら会話を交わし、口づけをして、体を重ねたところで消えはしない。和彦自身、扱いかねている、欲情だ。

 この欲情と、早々に折り合いをつけてしまいたかった。理解するのはもちろん、どうやって〈散らす〉べきなのかということも。

 和彦が食べ終えると、お茶と一緒に出されたのは、グラスに入ったオレンジジュースだった。こんなときでも忘れないのだなと、密かに苦笑を洩らしてから、一気に飲み干す。

「――先生、よければ、近所を散歩しませんか?」

 絶妙のタイミングで秦が切り出し、和彦は頷いた。

「正月に、ヤクザの組長の本宅から、その組長のオンナを連れ出すなんて、

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  • 血と束縛と   第26話(7)

    「この調子なら、連休中にでも抜糸できそうだ」 連休、と小声で呟いた鷹津が、傷口の消毒を始めた和彦に問いかけてくる。「このクリニックも、連休があるのか?」「一週間ほど休むことになっている。ぼくはカレンダー通り開けていてもいいんだが、組長に言われると、何も言えない」「ヤクザは優雅なものだな。そのオンナも」 鷹津が左手を伸ばし、頬に触れてこようとしたので、咄嗟に払い除ける。触れられることが嫌だというより、賢吾から言われた言葉が蘇ったのだ。 鷹津に情を移すなと、賢吾は言った。それがどういうことなのか和彦にはよくわからない。鷹津は相変わらず嫌な男だし、好意的な感情を抱いていないつもりだ。だが、それだけで鷹津との関係は割り切れない。そう、単純なものではないのだ。「……治療中だ。邪魔するな」 あえて鷹津の顔を見ないで注意すると、和彦は黙々と手を動かす。治療とは言っても、傷の様子を診たかっただけで、あとは消毒をして、ガーゼと包帯を取り替えるだけだ。 手早く包帯を巻き終え、立ち上がった和彦は片付けを始める。「また何日かしたら連絡をする。そのとき、傷が化膿していなかったら抜糸をする。――用は済んだから帰ってくれ」 鷹津に背を向けて素っ気なく告げると、突然、肩に手がかかる。驚いて振り返ると、いつの間にか鷹津が目の前に立っていた。怖いほど真剣な顔で見つめられ、察するものがあった和彦は後退ろうとしたが、うなじに手がかかって反対に引き寄せられる。「おいっ――」「長嶺に、何か言われたか? えらくピリピリしているな」 和彦は思わず視線を逸らしたが、肯定したも同然だ。鷹津は鼻先で笑い、顔を寄せてきた。「〈あれ〉で、餌を食わせ終えたなんて思ってないだろうな? 俺はお前の命を助けたんだぜ。せめて、この怪我が治るまで、好きなだけ食わせてもらうぞ」「そこまで恩着せがましいことを言うと、せっかくの善行も価値がなくなるぞ。助けられたほうも、うんざりしてくる」 睨みつけながら和彦が言うと、鷹津は意外なほどあっさりと身を引いた。「腹が減った。これからメシを食いにいくぞ」

  • 血と束縛と   第26話(6)

     しっかりと腰を抱え込まれて、内奥で賢吾の欲望が脈打ち、爆ぜる。熱い精をたっぷりと注ぎ込まれ、その感触に和彦は軽い絶頂状態に陥る。きつく目を閉じ、眩暈に耐える。 内奥から賢吾のものが引き抜かれ、体をひっくり返される。手荒く頬を撫でられて、ようやく和彦は目を開けることができた。顔を覗き込んできた賢吾に唇を吸われ、ぎこちなく応える。優しい声で問われた。「俺が今言ったこと、しっかりと頭に叩き込んだか?」 頭がぼうっとしているが、それでも和彦は頷く。「お前は、俺の大事で可愛いオンナだ」「あ、あ……。ぼくは、あんたのオンナだ。ぼくは、あんたには逆らえないし、逆らうつもりもない」「そういう言われ方をすると、俺がまるで暴君みたいだな」 声同様、優しい表情を見せた賢吾にもう一度唇を吸われ、そのまま舌を絡め合う。その間に、賢吾の指が内奥に挿入され、注ぎ込まれたばかりの精を掻き出される。発情している和彦の内奥は、物欲しげにその指を締め付けていた。「本当に、お前はいいオンナだ……」 指が引き抜かれ、まだ硬さを失っていない賢吾の欲望が、閉じきっていない内奥の入り口に押し当てられる。すぐにまた挿入されるのだと思って喉を鳴らした和彦に、怜悧な笑みを浮かべた賢吾はこう囁いた。「欲しかったら、俺の見ている前で――漏らしてみろ」 ハッとして和彦は顔を強張らせる。〈何を〉漏らしてみろと言っているのか、問い返すまでもない。求められるのは初めてではないが、だからといって慣れることはない行為だ。「……ここ、で……?」「心配するな。二人分の浴衣があれば、吸い取ってくれるだろ。お前一人の――」 耳元に露骨な単語を注ぎ込まれ、和彦は羞恥と屈辱を覚えると同時に、異常な高ぶりを感じていた。 賢吾に両足を広げた格好を取らされ、手慰みのように柔らかな膨らみを揉まれる。ときおり弱みを指先で刺激され、早くしろと無言で急かされる。 何度目かの攻めで、和彦の理性は陥落した。 賢吾が見ている前で『漏らした』のだ。

  • 血と束縛と   第26話(5)

     微かに濡れた音を立てながら先端を吸われ、熱い吐息をこぼして和彦は身悶える。欲望の形を舌先でなぞられ、さらに柔らかな膨らみも舐られる。「うっ、うっ、うあっ、あっ――」「今度鷹津に教えてやれ。長嶺組の組長は、自分のオンナのこんなところまでしゃぶって、感じさせてくれると。あいつは、どうするだろうな」 賢吾の言葉は、見えない執着の炎となって和彦の全身を炙る。不意打ちのように内奥の浅い部分をぐっと指の腹で押し上げられ、呆気なく和彦は絶頂を迎えた。精を迸らせ、下腹部を濡らしていた。 そんな和彦を見下ろし、唇の端に笑みを刻んだ賢吾は、あっさりと内奥から指を引き抜く。浴衣を剥ぎ取られた和彦はうつ伏せの姿勢を取らされ、高々と腰を抱え上げられる。身構える間もなく、背後から貫かれた。「んううっ」 力を漲らせた賢吾の欲望は、容赦なく内奥を押し広げ、襞と粘膜を強く擦り上げてくる。背後から突かれるたびに和彦は畳に爪を立て、衝撃に耐える。重苦しい痛みが下腹部に広がるが、それ以上に、内から焼かれそうなほど賢吾の欲望が熱い。尻を鷲掴んでくる手も。「待っ……、賢吾、さ……、もう少し、ゆっくり……」 和彦の切れ切れの訴えは、乱暴に内奥を突き上げられることで応じられる。賢吾の逞しい欲望が、根元まで捻じ込まれていた。 奥深くまで呑み込んでいるものの存在を、呼吸を繰り返すたびに強く意識する。賢吾は内奥の収縮を堪能するように動きを止め、その代わり、両手を駆使して和彦の体をまさぐってくる。 和彦の肌は、嫌になるほど賢吾の手の感触に馴染んでいる。てのひらで撫で回されているだけで肌はざわつき、汗ばみ、官能を生み出す。和彦のその従順さを、背後から貫きながら賢吾は堪能していた。「……惚れ惚れするほどの、いいオンナっぷりだな、先生。こうして眺めているだけでわかる。俺を欲しがっているってな。もっとも――」 軽く腰を揺すられ、内奥で欲望が蠢く。意識しないまま、食い千切らんばかりに欲望を締め付けていた。「尻のほうはさっきから、グイグイ締まりまくってるがな。突

  • 血と束縛と   第26話(4)

    「……この家の主が仕事をしているのに、その主の部屋でダラダラしているのは、気が引けるんだ」「仕事といっても、電話で片付くような用だ。だから、そう待たせなかっただろ」「気にせず、じっくりと話してくれてもよかったのに……」「俺が気にする」 和彦のすぐ背後に立った賢吾の手が、肩にかかる。浴衣の布越しに体温が伝わってきて、それだけで和彦は冷静ではいられなくなっていた。 慌てて正面を向くと、両肩をしっかりと掴まれ、力を込められた。「あっ」 絶妙な力加減で肩を揉まれて、思わず和彦は声を上げる。背後から笑いを含んだ声で言われた。「凝ってるな、先生。気疲れすることが多すぎるせいか?」「……あんたは、原因の一つだからな」「遠慮なく、俺が原因の大部分だと言っていいんだぞ」 返事の代わりに、和彦は笑い声を洩らす。 長嶺組組長に肩を揉んでもらうという贅沢を堪能できたのは、わずかな間だった。肩を揉んでいた賢吾の片手が前へと移動し、浴衣の合わせから入り込んできた。 大胆に蠢く手に胸元をまさぐられ、あっという間に凝った胸の突起を、捏ねるようにてのひらで転がされる。指先で捉えられて爪の先で弄られる頃には、和彦の呼吸は弾んでいた。「――鷹津にも、ここをたっぷり弄ってもらったか?」 突然、冷めた声で問われる。背後に立っているのは賢吾だと知っていながら、和彦は一瞬、別の男に入れ替わったのかと混乱した。それぐらい、賢吾の声音が一変したのだ。 本能的な怯えから、和彦は愛撫の手から離れようとしたが、賢吾は焦った素振りすら見せなかった。 立ち上がろうとしたが、いきなり座椅子を引かれてバランスを崩す。すかさず賢吾の腕に捕らえられて、畳の上に放り出された。 悠然とのしかかってきた賢吾を、顔を強張らせて見上げる。手荒な行動とは裏腹に、賢吾は薄い笑みを浮かべていた。「鷹津とのセックスはよかったようだな、先生。……鷹津のことを話すときの顔を見ていたら、いままでにない表情を浮かべてい

  • 血と束縛と   第26話(3)

    「聞くまでもないだろう。――返事は、ギリギリまで引っ張ればいい。オヤジの腹の内が、もしかすると読めるかもしれない」 それしか打てる手はないのかと、和彦は小さくため息をつく。すかさず賢吾に言われた。「物騒な男に気に入られると、物騒なことに事欠かないな、先生」「他人事だと思って……」 自棄酒というわけではないが、和彦はグラスのワインを飲み干す。『物騒なこと』という話題の流れから、秦の店を襲撃した男たちのことを聞いてみたい衝動に駆られたが、守光の話題が出たことで、軽々しい好奇心は慎むべきだと思い直した。三日前の秦との電話でのやり取りがなければ、危うく口に出していたかもしれない。 自らが踏み込めない領域について、あれこれと思索する和彦とは対照的に、秘密すら踏み散らすような無粋ぶりで賢吾が切り出した。「鷹津には、美味い餌を食わせてやったか?」 和彦は咄嗟に言葉が出なかった。激しい動揺と羞恥で一気に顔が熱くなったが、賢吾の向けてくる冴えた眼差しに首筋は冷たくなるという感覚を、同時に味わう。 賢吾は今日まで、怪我をした鷹津とどう過ごしたか、和彦に一切尋ねてはこなかった。二人の間に何があったかは想像するまでもなく、だからこそ賢吾は知る気がなかったのだろうと解釈していたが、どうやら違ったようだ。 和彦が逃げられない状況になるまで、虎視眈々と機会を狙っていたのだ。「――……餌はやった」「自分が切りつけられながらも、先生を守ったんだ。俺が思った通り、あいつは態度は悪いが、優秀な番犬だ」「何日かは利き手が使いにくくて、不便だろうな」「通って面倒を見るか?」 冗談めかした口調とは裏腹に、ヒヤリとするような感覚が和彦を襲う。賢吾が、鷹津のことを話す自分の反応を観察していると感じ取り、警戒していた。「ぼくはそこまで甲斐甲斐しくない。……ただ、傷の具合を診る必要があるから、夜、クリニックに足を運んでもらうことになる」 慎重に言葉を選んで話した和彦は、賢吾の反応をうかがう。「その顔は、俺の許可を求め

  • 血と束縛と   第26話(2)

     気にしないでくれと、和彦は苦笑を洩らす。大変な騒動と、その後の鷹津とのこともあり、自分が背負っていた事柄について、今この瞬間まで考えることすらしていなかった。秦の思惑とは違ったところで、和彦の機嫌は直りつつあるといえるのかもしれない。 あくまで、問題の先延ばしでしかないのだが――。 電話を切った和彦はぼんやりとしていたが、ふと、バスタブに湯を溜めていることを思い出し、慌てて浴室へと駆け込んだ。****「――ここのところ大忙しだな、先生」 窓の外に広がる夜景に見惚れていた和彦は、どこか皮肉げな賢吾の言葉にハッとする。 ホテル上階からの夜景を和彦によく見せてやろうという配慮なのか、賢吾は窓を背にしてテーブルについている。 しかし和彦は、一旦賢吾に視線を移してしまうと、もう夜景を眺める気にはなれない。 賢吾は、夜の街のきらびやかさも霞む濃い闇を背負っているように見え、禍々しさすら漂っている。普通の感覚を持った人間ならば、この男を一目で危険な存在だと判断するだろうが、困ったことに和彦の目には、非常に魅力的に映るのだ。怖いほどに。「ぼくが忙しいのは、ぼくのせいじゃない。……暖かくなってくると、この世界の連中は血が滾るのか? 物騒なことが多すぎる」 賢吾は低く喉を鳴らして笑い、鉄板の上で焼けたヒレステーキを一切れ、和彦の前の小皿に置いた。 クリニックを終えてから途中で賢吾と合流し、外で夕食をとることにしたのだが、肉が食べたいと希望したのは賢吾だ。疲れ気味の和彦に精をつけさせようと考えた――のかどうかは知らないが、鉄板焼きのコースディナーの他に、さらにサーロインステーキを別メニューで頼んだ賢吾は、和彦の倍の速度で肉を焼き、口に運んでいる。「物騒といえば、総和会からの申し出も、ある意味じゃ物騒だな」 賢吾が言っているのは、総和会から、和彦にクリニックを任せたいと提案された件だ。移動中の車内で簡単に説明をしたのだが、とっくに千尋から、賢吾の耳に入っていただろう。驚いた様子もなく、薄く笑っただけだった。もっとも和彦自身、賢吾の反応をある程度予

  • 血と束縛と   第11話(24)

     内奥深くを小刻みに突き上げながら、ふいに賢吾がそんなことを言う。和彦は賢吾の逞しい腰に両足を絡ませながら、頭上の枕を握り締めて嬌声を堪える。大きく呼吸を繰り返してやっと、言葉を紡ぐことができた。「どういう、意味だ……」「心底嫌いな男に感じさせられて、悔しい反面、ひどく興奮しているんじゃないのか。脅されて言うことを聞かされたはずなのに、体はしっかり、その嫌な男から与えられた快感で悦ぶ。淫奔な体と、下手なヤクザより肝が据わって、したたかな性質を持った先生らしい色気だ」 賢吾には当然、レストルームの個室で鷹津に何をされたのかすら

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第11話(21)

    **** 座卓に頬杖をついた和彦は、ぼんやりと考え込む。ただ、考えることが多すぎて、思考は散漫だ。 結婚披露宴で和彦に話しかけてきた父親の同僚のことを考えると、必然的にその父親のことを――自分の家族のことにまで考えが及ぶ。和彦にとって家族とは、この世でもっとも関わりたくない存在なので、正直、戸惑っていた。 戸惑うといえば、もう一人の存在を忘れてはいけない。 意識しないまま顔が熱くなってきて、一人うろたえた和彦は慌ててグラスを取り上げ、残っているワインを飲み干す。その勢いで、肩にかけていた羽

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第11話(32)

     飲むことばかり話しているなと思いながら、和彦は炭酸水のボトルもカゴに入れる。「あっ、チーズも欲しい」 和彦がぽつりと洩らすと、心得たとばかりに三田村は足早に行ってしまう。地味な色のスーツをしっくりと着こなした男の、あまりに堂々とした足取りに、他の客が何事かといった視線を向け、つい和彦は顔を伏せて笑う。 生活臭のない男二人が、平日の午後、スーパーでのんびりと買い物をしているというのは、妙な感じだ。他の買い物客の目には、友人同士か、似ていない兄弟とでも映っているのかもしれない。 ヤクザの組長のオンナと、そのオンナを護衛するヤクザとは、万が一に

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第11話(4)

    「……見た目はともかく、中嶋は中身は、筋金入りのヤクザですよ。自分が身を置く組織への忠義と野心が程よくバランスが取れて、情なんていくらでも切り売りできる。そういう人種です。――と、わたしはいままで思っていたんですが……」「教えてやればいいじゃないか。本当の名前ぐらい。君は謎が多い人間なんだろ。だったら、いくつかの秘密を中嶋くんに話したところで、惜しくもないんじゃないか」「先生は、中嶋の味方なんですね」 思わず咳払いした和彦は、ムキになって言い返した。「違うっ。君がどんな男だろうが、慕っ

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