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第18話(29)

Author: 北川とも
last update Last Updated: 2026-03-08 17:00:39

 自分はこの男のオンナなのだと、和彦は本能で痛感させられる。自分が今いる世界の中心は、大蛇の刺青を背負ったこの男なのだとも。

 和彦の変化に気づいたのか、賢吾は牙を剥くように笑いながら、熱く高ぶった欲望を内奥の入り口に擦りつけてきた。

「あっ……」

 一気に内奥深くまで押し入ってきた賢吾は、自分の感触を刻みつけるように大胆に腰を使う。それでなくても感じやすくなっている部分には、強烈すぎる律動だった。

「うあっ、あっ、んああっ――」

「丹念に可愛がってもらったようだな。こんな奥までトロトロだ」

 果敢に奥深くを突き上げられ、抉られる。和彦は腰を弾ませながら賢吾の激しさを受け止め、じわじわと押し寄せてくる肉の愉悦に喉を鳴らす。

 いつの間にか和彦のものは反り返り、先端からはしたなく透明なしずくを滴らせていた。賢吾が指の腹で先端を撫で、鋭い快感に和彦は息を詰める。柔らかな膨らみすらも揉みしだかれ、たまらず腰を捩ろうとしたが、内奥深くにしっかりと欲望を埋め込まれているため、それすらできない。
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     自分はこの男のオンナなのだと、和彦は本能で痛感させられる。自分が今いる世界の中心は、大蛇の刺青を背負ったこの男なのだとも。 和彦の変化に気づいたのか、賢吾は牙を剥くように笑いながら、熱く高ぶった欲望を内奥の入り口に擦りつけてきた。「あっ……」 一気に内奥深くまで押し入ってきた賢吾は、自分の感触を刻みつけるように大胆に腰を使う。それでなくても感じやすくなっている部分には、強烈すぎる律動だった。「うあっ、あっ、んああっ――」「丹念に可愛がってもらったようだな。こんな奥までトロトロだ」 果敢に奥深くを突き上げられ、抉られる。和彦は腰を弾ませながら賢吾の激しさを受け止め、じわじわと押し寄せてくる肉の愉悦に喉を鳴らす。 いつの間にか和彦のものは反り返り、先端からはしたなく透明なしずくを滴らせていた。賢吾が指の腹で先端を撫で、鋭い快感に和彦は息を詰める。柔らかな膨らみすらも揉みしだかれ、たまらず腰を捩ろうとしたが、内奥深くにしっかりと欲望を埋め込まれているため、それすらできない。 和彦はすがるように賢吾を見上げる。このときの表情が、残酷な大蛇の性質を満足させたのか、賢吾は目元を和らげた。 唇を吸われ、そのまま余裕なく舌を絡め合う。和彦は夢中になって賢吾の背に両腕を回し、大蛇の刺青を忙しくまさぐる。褒美だといわんばかりに乱暴に腰を突き上げられ、身震いするほどの快感を与えられた。「んっ……、はあっ、あっ、あううっ……」 身悶える和彦の髪を、賢吾が荒っぽい手つきで鷲掴む。息もかかるほどの距離で、こう言われた。「先生に〈いいこと〉をしたのは、長嶺の守り神だとでも思っておけ。多分、凛々しくて美しい若武者の姿をしているぞ。先生は、そんな守り神に気に入られたんだ。俺や千尋のオンナだからというのもあるだろうが、先生自身の情の深さも多淫さも、したたかさすら、たまらなくよかったんだろうな。何より、惚れ惚れするような色男だ」 貪るような口づけを交わしてから、和彦は喘ぎながら問いかけた。「――……そういう理屈で、あんた

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    「秘密を抱えた先生の表情だ。俺にバレるのが怖くて、必死にそれを押し殺している。そのくせ、どんな〈いいこと〉をしてもらったのか知らねーが、目のやり場に困るような色気を振り撒いてやがる」 和彦は瞬きも忘れて、賢吾を見上げる。次の瞬間には握り潰されるのではないかと、切迫した危機感に息が止まりそうになるが、賢吾はくすぐるように優しく欲望を擦り上げてくる。和彦は顔を背けて唇を噛んだ。「たっぷり搾ってもらったようだな。俺が触ってやるとすぐに反応するのに、今朝は反応が鈍い」 あからさまな賢吾の物言いに、体が熱くなる。「性質の悪い男を片っ端から血迷わせて、まったく性質の悪いオンナだ……。そのくせ、こんなものをつけている、見た目だけは優しげな色男だからな」 和彦のものを緩く扱いてから、賢吾の指が秘裂をまさぐってくる。まだ熱をもって疼いている内奥の入り口を軽く擦られて、無意識に腰が揺れる。賢吾は唾液で指を濡らすと、躊躇なく内奥に挿入してきた。「ううっ」 丹念な愛撫を与えられた直後のように従順に、和彦の内奥は二本の指を受け入れ、ひくつく。すぐに指が蠢き、内奥の襞と粘膜を擦り始めた。 和彦は、疼痛と苦しさに小さく呻き声を洩らす。内奥をまさぐられることで、何が起こったかを言葉で説明する必要はない。賢吾の指の動きは、必要な事実を簡単に探り当ててしまう。「……熱くなって、蕩けそうに柔らかくなっている。奥は……滑っているな。じっくり愛されて、満足したのか? いつもの先生なら、物欲しそうに必死で締め付けてくるのに、今は、いやらしい襞が絡み付いてくるだけだ」 ここで賢吾が、やっと核心を突く質問をしてきた。「誰に、愛してもらった?」 誤魔化すことは許さないと、冷ややかな眼差しが言っていた。大蛇の化身のような男は、和彦を試しているのだ。何もかもわかっていながら。いや、何もかもわかっているからこそ――。 内奥からゆっくりと指を出し入れされ、鈍くなっていた感覚がゆっくりと研ぎ澄まされていく。和彦は、体の内どころか、心の内すら賢吾に暴かれていく錯覚を覚えながら、深く息を

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    「これが、総和会会長と長嶺組組長が会うということだ。話した内容なんて関係ない。会ったという事実が、重いんだ。……俺が、ここに近づきたがらないのも納得できるだろ?」 車が走り出してすぐに、和彦の手を握った賢吾が、皮肉っぽい口調で言った。完全に気が抜けた和彦は、シートに深く身を預ける。「だったら、会長が長嶺の本宅を訪ねてくることは?」「帰ってくる、という表現のほうが正しいんだろうな。あの家を建てたのはオヤジだ。俺は、長嶺組を継いだと同時に、あの家も継いだ。……まあ、総和会会長の肩書きがある間は、オヤジは本宅の敷居は跨がないだろう。決め事というわけじゃないが、ケジメというやつだ」「……ぼくはヤクザじゃないが、なんとなく、わかる気がする。背負っているものに対して、責任があるということだろ」「そうだ。総和会と長嶺組の位置は近いが、まったく違う組織だ。何か事が起これば、この二つの組織が反目し合うこともありうる――」 賢吾の言葉に例えようもなく不吉なものを感じ、思わず和彦は身震いする。そんな和彦を、賢吾はやけに楽しげな表情で見つめていた。「怖いか、先生?」 肩を抱き寄せられ、素直に賢吾に身を預ける。「怖い……。あまり、物騒なことは言わないでくれ」「心配するな。俺は、臆病で慎重な蛇だ。総和会とは上手くつき合っていくつもりだし、オヤジが会長であるという旨みを最大限利用するつもりだ。俺が蛇でいる限り、組は安泰だ」 よかった、と意識しないまま洩らした自分に、和彦は驚く。口元に手をやり、一人でうろたえていると、わざわざ賢吾が顔を覗き込んできた。「どうやら、俺が思っている以上に、先生は長嶺組の将来を考えてくれているようだな」「……別に、そんなつもりは……。ただ、身内同士の揉め事は見たくないだけだ」「先生が言うと、ヤクザ同士の腹の探り合いも、微笑ましく感じられる」 バカにされているのだろうかと思い、そっと眉をひそめると、ふいに賢吾が表情を消した。

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