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第19話(22)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2026-03-13 11:00:46

 一人でタクシーに乗って、ふらりと夜遊びに出かける――はずもなく、目的地は、近所のコンビニだ。誰にも知らせず和彦ができる冒険は、せいぜいこれぐらいだ。それを窮屈だと感じないのは、見事に今の生活に順応しきったということだろう。

 コンビニまで数分ほどの道のりを歩きながら、白い息を吐き出す。二月の夜の空気は切りつけてくるように冷たく、和彦はマフラーと手袋をしてこなかったことをすでに後悔していた。

 熱い缶コーヒーだけを買うと、コンビニ前に置かれたベンチに腰掛ける。すっかり冷たくなった手を温めながら、ぼんやりと目の前の通りを眺める。

 本当はすぐに帰るつもりだったが、たまに通りかかる人や車を眺めているうちに、立ち上がるきっかけを失っていた。部屋に戻ったところで、またメッセージカードを取り出して、思い出に浸ることを思えば、こうして寒さに身を晒しているほうがマシだ。

 だが、さすがに体が冷えきってきた。

 ダウンジャケットを着ていても体温がどんどん奪われていくようで、和彦は強張った息を吐き出す。

 身震いした拍子に、足元に置いた空
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     ここで和彦は、この寝室にはまだ盗聴器は仕掛けられているのだろうかと思い至り、布団に頭まで潜り込む。いつでも意識するのは、賢吾の存在だ。「少し引っかかっている。穏便に済ませたいという気持ちは、確かにあるんだ。だけど、当事者のぼくに相談する前に、穏便に済ませるためのお膳立てが、会長と組長の間ですでにできていているようだった。ぼくは、上手く誘導されて頷いただけのようで――違うな。そうじゃない。こういうやり方で回っている世界だと知っているし、理解もしているんだ」 そもそも、自分のことで揉めないでほしいと望んでいたのは、和彦だ。長嶺の男たちの行動は、組織同士の無用な対立を避けるためであるだろうが、和彦の望みも叶えてくれている。それでも釈然としないのは、きっと自分のわがままなのだろう。「組長が何を考えているか、まったくわからない。南郷さんのことで、ぼくのことを迂闊だとか、隙がありすぎるとか、そんなふうに責められてもないんだ。……仕事の一つとして、南郷さんとのことを淡々と処理されたように感じる」 ここまで話したところで三田村は、和彦自身ですら輪郭を掴みかねている気持ちを、しっかりと言葉で掬い上げてくれた。『――先生は、組長の感情的な姿を見たかったんだな』「えっ」『俺の〈オンナ〉に何をしやがる、と言ってほしかったと、今の先生の言葉を聞いていたら、そんな心の声も聞こえてきた。……もしかして俺は、自分が思っているより酔っているのかもしれないから、そんなことと、笑ってくれてもいい』 真っ暗な布団の中で、和彦はゆっくりと目を瞬く。三田村の指摘に、自分でも驚くほど納得していた。「……そう、なんだろうな。ぼくは、自分でも呆れるほど、図太い神経をしているかもしれない。人を脅迫して、職場どころか、普通の生活まで奪った男に、そういうことを望むなんて」『組長は本当は、激情家なんじゃないかと、感じるときがある。背負うものがあって、危険な立場に身を置いているから、常に感情を律しているが。先生に直接意見を求めなかったのは、組長なりに危惧したからじゃないか』「危惧?」『先生が怯

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  • 血と束縛と   第12話(26)

     あえて考えないようにしているが、意識すればするほど、中嶋とキスしたときの光景が蘇る。だからといって、露骨に中嶋を警戒しているわけではない。むしろ和彦が警戒しているのは、自分と秦とのセクシャルな出来事はもちろん、賢吾によって秦が、〈遊び相手〉となったという事実を知られることだ。  中嶋自身は有能で頭が切れ、損得を考えられる男だが、そこに秦が絡むと様子が変わる。和彦は、できることなら中嶋を傷つけたくなかった。中嶋からされたキスによって、この青年が抱え持つ柔らかな部分を知った気がするからだ。  こう思うこと自体、傲慢なのかもしれないが――。  ふっと息を吐き出し

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  • 血と束縛と   第12話(22)

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  • 血と束縛と   第12話(5)

     もう片方の突起には指がかかり、きつく摘まれ引っ張られる。交互に同じ愛撫を与えられ、胸の突起は鮮やかに赤く色づいた。その色合いに満足したように目を細めた鷹津は、次にどの場所を攻めるか、すでに決めているようだった。「ううっ」 片足を抱え上げられて、唾液で濡れた指に内奥の入り口を撫でられた途端、和彦は声を洩らして腰を揺する。頭上では、パイプと手錠がぶつかる音がした。「何人も男を咥え込んでいるくせに、どうしてこう、貞淑そうな形をしてるんだろうな。お前のここは――」 そんなことを言いながら、鷹津が内奥に指を挿入してくる。ここに、この男の指を受け入れ

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