INICIAR SESIÓN守光とようやく唇を吸い合うようになり、舌先を触れ合わせる。引き出された舌を柔らかく吸われ、軽く歯を立てられた瞬間、和彦の中に無視できない疼きが生まれて、呼吸が弾む。守光の目元が笑みを滲ませた気がするが、何が潜んでいるかわからない両目を覗き込むこともできず、視線を伏せる。それが合図のように、守光の舌が口腔に入り込んできた。
口づけは情熱的で、官能的だった。緩やかに舌を絡めながら、同時に守光の唾液を与えられ、微かに喉を鳴らした和彦は、無意識のうちに鼻にかかった声を洩らす。そんな自分の姿に気づき、燃えそうなほど全身を熱くしたところで、守光に促されるまま布団の上へと移動し、押し倒された。 浴衣の帯を解かれ、下着を脱がされる。湯上がりのせいばかりではない熱を帯びた肌を、守光が両てのひらで撫でてくる。和彦は顔を背け、ゆっくりと深い呼吸を繰り返していた。 守光の片手が両足の間に入り込み、和彦の欲望をそっと握り締める。さらに、首筋には唇が這わされていた。穏やかな愛撫に晒されながら、和彦は目を閉じる。心地いいと思った次の瞬間には、その愛撫を加えているのが守光だ内奥深くにまで道具を突き込まれ、腰から下が甘く痺れる。自分でもわかるほど必死に、道具を締め付けていた。和彦は呻き声を洩らしながら、道具の蠢きに合わせて、妖しく腰をくねらせる。本当は何かにしがみつきたいが、両手首をしっかりと縛められているためそれができない。もどかしいが、そのもどかしさにすら、感じてしまう。「あっ、あっ、んうっ……、うあっ」「もう少し、武骨な形のオモチャも作らせよう。もう少し太く、もう少し長く――。それを味わうあんたを見てみたい」 ここで一度、内奥から道具が引き抜かれる。和彦は再び仰向けにされるが、両手首の縛めを解かれることはない。体の下に敷き込んだことでより拘束感が増し、和彦は半ば恐れながら守光を見上げる。当の守光は、端整な顔に笑みを浮かべ、上気して汗で濡れた和彦の体を眺めていた。しどけない和彦の姿とは対照的に、守光は浴衣の乱れすらすでに正している。和彦に、快感という責め苦を与える準備ができているということだ。 両足を広げられ、反り返って濡れそぼった欲望の形を確かめられる。先端を指の腹でそっと撫でられただけで、和彦は短く悲鳴を上げて感じていた。「この蜜は、あとでまた味わうとしよう。今は、オモチャ遊びだ」 和彦の欲望を緩く二度、三度と扱いた守光は、箱から鮮やかな朱色の組み紐を取り出した。一目見ただけで、その組み紐を何に使うか、和彦にはわかった。『オモチャ遊び』と守光は言ったが、漆塗りの箱は、さながらオモチャ箱だ。和彦を淫らに攻めるための道具が揃っている。「ふっ……」 興奮して震える欲望に組み紐が幾重にも巻きつき、根元をしっかりと締め上げられる。苦痛のため足掻こうとするが、肝心の両手は拘束されており、体を起こすのもままならない。そんな和彦の体を、守光は愛しげに撫で回し、唇を這わせてくる。「うっ、くうっ――ん」 柔らかな膨らみを片手で揉みしだかれながら、胸の突起を優しく吸い上げられる。和彦は甘い嗚咽を洩らして身悶えていた。これ以上ない痴態を守光に晒していると自覚はあるが、すでにもう自制がきかない。そもそも、和彦がそういう状態になることが、守光の望みだったはずだ。
守光の片手に、すでに精を放った欲望を掴まれる。緩く上下に扱かれただけで、和彦は放埓に声を上げて、守光に貫かれながら奔放に乱れていた。酔いのせいで箍が外れたと言う気はない。体が、守光に馴染み始めたのだ。 両足をしっかりと抱え上げられ、内奥深くまで守光の欲望を挿入される。大きくゆっくりと突き上げられて、和彦は上体を捩って悶える。他の男たちであれば、欲情をぶつけるように激しい律動を繰り返すのに、守光は違う。時間をかけ、責め苦のように快感で和彦を狂わせる。 浴衣を完全に脱がされ、胸元に愛撫の跡を散らされる。胸の突起を吸われて喉を震わせると、何度目かの口づけとともに、日本酒を流し込まれる。さらには今度は、柔らかな膨らみを、思いがけず手荒な手つきで揉みしだかれる。「ひっ……、あっ、あぁっ――」 刺激の強さに腰が跳ねそうになるが、体の奥深くまでしっかりと欲望を埋め込まれているためそれが叶わず、空しく震わせる。そこを容赦なく、守光に腰を揺すられ攻められていた。「よほどここが、いいようだ。あんたの尻が、しゃぶりつくように締まる。〈これ〉を仕込んだ男は、この具合が気に入ったんだろう」 守光の指に弱みをまさぐられ、弄られる。優しいが、残酷でもある手つきは、賢吾とそっくりだった。「うっ、うっ、もう、許し、て、ください……、そこは……」「だが、あんたは悦んでいる」 子供のように首を振る和彦の仕草に心惹かれたように、守光がじっと見下ろしてくる。眼差しの強さに羞恥した和彦だが、追い討ちをかけるように問われた。「ここがいいのか、先生?」 守光の指が妖しく蠢き、和彦の意識は危うく飛びかける。なんとか繋ぎ止めはしたものの、代わりに理性は蕩けきっていた。「は、い……」「もっと弄ってほしいか?」「……お願い、します」 守光の唇が緩み、感嘆するように言葉を洩らした。「賢吾や千尋が、あんたに骨抜きになるはずだ。見た目は品のいい青年が、こうも容易く体を開いて、淫奔ぶりを晒け出す
守光とようやく唇を吸い合うようになり、舌先を触れ合わせる。引き出された舌を柔らかく吸われ、軽く歯を立てられた瞬間、和彦の中に無視できない疼きが生まれて、呼吸が弾む。守光の目元が笑みを滲ませた気がするが、何が潜んでいるかわからない両目を覗き込むこともできず、視線を伏せる。それが合図のように、守光の舌が口腔に入り込んできた。 口づけは情熱的で、官能的だった。緩やかに舌を絡めながら、同時に守光の唾液を与えられ、微かに喉を鳴らした和彦は、無意識のうちに鼻にかかった声を洩らす。そんな自分の姿に気づき、燃えそうなほど全身を熱くしたところで、守光に促されるまま布団の上へと移動し、押し倒された。 浴衣の帯を解かれ、下着を脱がされる。湯上がりのせいばかりではない熱を帯びた肌を、守光が両てのひらで撫でてくる。和彦は顔を背け、ゆっくりと深い呼吸を繰り返していた。 守光の片手が両足の間に入り込み、和彦の欲望をそっと握り締める。さらに、首筋には唇が這わされていた。穏やかな愛撫に晒されながら、和彦は目を閉じる。心地いいと思った次の瞬間には、その愛撫を加えているのが守光だという現実にすぐに我に返り、心が揺れる。そんな和彦の反応すら見透かしているかのように、唐突に守光が両膝を掴み、足を思いきり左右に開かされた。「あっ」 動揺した和彦は反射的に目を開け、声を上げる。その拍子に、守光と目が合った。ここでもう、守光の行動すべてを目で追わずにはいられなくなる。 守光は、開いた両足の間に頭を伏せる。さきほどまで、てのひらに包み込まれて扱かれていた和彦の欲望に熱い息遣いがかかった。「んうっ……」 守光の口腔に欲望を含まれた瞬間、強烈な感覚が背筋を駆け抜ける。和彦は布団の上で大きく背を反らし、息を詰める。 守光の愛撫は激しさとは無縁だった。和彦の欲望を優しく吸引し、舌を絡ませながら、じっくりと口腔で育てていくのだ。和彦は速い呼吸を繰り返しながら、次第に下肢から力を抜き、望まれるまま自ら大きく足を開く。 感じやすい先端にくすぐるように舌先が触れ、そのたびに下腹部を震わせる。和彦の欲望は、守光の口腔で熟しきっていた。「――この味が、恋しかったんだ。あ
南郷に対して怒りはあるが、自ら罰を与えようと考えたことはなかった。守光が最善の手段へと導いてくれると、心のどこかで期待をしていた。しかし、これは――。 和彦の返事次第では、二つの組織だけではなく、父子関係の不和すら生みかねないと、言外に仄めかされているようだった。守光は、和彦から欲しい返事をもぎ取ろうとしているのだ。この場にはいない賢吾も。 ぐっと奥歯を噛み締めた和彦は、いまさらながら、自分がどれほど怖い男たちの〈オンナ〉であるのか、痛感していた。大事にしてくれてはいるが、一方で、自分たちが背負う組織のために、どこまでも傲慢で容赦なく振舞う。 それでも和彦は身を委ねるしかないのだ。「――……助言を、いただけないでしょうか。どうすれば、影響を最小限に抑えて、なおかつ、誰にも口出しをさせないほど、きちんとケリをつけられるのか。そんな方法があるのでしょうか?」「簡単だ。南郷を跪かせるといい」 事も無げに告げられ、静かな衝撃が胸に広がる。「ひざま、ずかせる……?」「あの男の土下座は、価値がある。――南郷が小さな組の組長代行を務めていた頃、その土下座で揉めに揉めてな。南郷は、親ともいえる組長の面子を潰した挙げ句、結局総和会が介入する話にまでなった。結果が、今の立場だ」 その今の立場を守るために、南郷は和彦の要求を呑むか否か、試せというのだ。しかし守光には確信があるのだろう。南郷は、和彦に詫びるために跪くと。それで、すべてケリがつくと。 頭が、考えることを放棄したがっていた。南郷にそこまでさせてしまうことで、どういう結果が生まれるのか、想像するのが怖かったのだ。不穏なものを感じながらも、しかし他に手段も思いつかない。 和彦は、守光に頭を下げた。「すべて、お任せします。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」「あんたが頭を下げる必要はない。今回の件は、こちらの不始末だ。それを円満に解決するために、あんたの手を借りる。面倒だと思うかもしれんが、この世界で円滑に物事を進めるには、取り繕うべき形が必要なんだ」「……そのことを
「ここでその酒を飲んで、あんたなら気に入ってくれるんじゃないかと思ってな。出してもらったんだ。その様子なら……」「ええ、すごく美味しいです。普段は無難に、日本酒よりワインを選んでしまうんですが、どうやらぼくが、口に合う日本酒を知らなかっただけのようですね」 喉の奥がじんわりと熱くなり、和彦はそっと吐息を洩らす。猪口一杯でこれでは、すぐに酔ってしまいそうだ。 食事が進み、器の大半が空いた頃になって、ようやく守光がこう切り出した。「南郷のことだが――」 和彦は反射的に背筋を伸ばした。「あんたには迷惑をかけた」 守光が頭を下げたため、慌てて制止する。「やめてくださいっ。会長が頭を下げられるなんてっ……」「そういうわけにもいかん。これはケジメだ。〈あれ〉は、わしの子飼いの部下だ。今の地位を与えた責任がある」 激しくうろたえ、困惑した和彦だが、思いきって守光に問いかけた。「……会長は、どこまでご存知なのですか?」 頭を上げた守光が一瞬見せた眼差しの鋭さに、息を呑む。しかし次の瞬間には、守光は穏やかな表情へと戻っていた。猪口を取り上げたので、和彦は酒を注ぐ。「賢吾が把握している程度のことは」「それは――……」 すべてを明け透けに打ち明けるかどうか、守光は自分を試しているのかもしれない。和彦は急にそんな不安に襲われる。同時に、耐え難いほどの羞恥にも。「南郷は今、自宅で謹慎させている。第二遊撃隊も、総本部に詰めさせて、外での活動を禁止している。――処分が決まるまで」「処分?」「処分は今日、あんたと相談して決めるつもりだ」 和彦は絶句して、ただ守光の顔を凝視する。沈黙している間、耳に心地いい水音が室内に響き渡る。窓のすぐ下を川が流れているのだろう。 感情の乱れをようやく抑えて発した言葉は、微かに震えを帯びていた。「……どうして、ぼくが……」「あんたが外部
**** 土曜日の午前中、自宅マンションで一人過ごしていた和彦は、突然の連絡を受け、急遽出かけることになった。こちらの予定も聞かず、自分につき合えと言うのは、口調の違いはあれど、長嶺の男に共通する特徴だ。 後部座席のシートに身を預けた和彦は、ウィンドーの外を流れる景色を眺めつつ、守光からかかってきた電話でのやり取りを思い返す。 美味い山魚を食べさせる店があるので、これから出てきなさいと、まず言われたのだ。面食らう和彦に、さらに守光は言葉を続けた。 一昨日の南郷の無礼について、詫びがしたい、と。 こう言われては、和彦には断る術はない。もとより、守光からの誘いを断られるはずもない。 マンション前に停まっていた車に乗り込んだのだが、肝心の守光の姿はなかった。運転手を務めている男によると、守光は昨日からある旅館に宿泊しており、そこに和彦はこれから向かうのだ。 一体何を言われるのだろうかと考えて、心がざわつく。 和彦を騙して呼び出した南郷の行為は、総和会と長嶺組に何かしらの波紋を起こしたようだ。 呼び出された当事者である和彦のもとには、情報がほとんどもたらされない中、唯一、中嶋から送られてきたメールのおかげで、自分の知らないところで事態が動いていることを知ったのだ。 それまで和彦はずっと、長嶺組の男たちに気遣われていた。南郷のせいで、和彦が激怒したままだと思われているためだ。それは事実ではないが、自分の精神状態を詳細に語ることを和彦は避けていた。 実は激怒どころか、南郷がもう一つの〈行為〉を明らかにすることを恐れていたとは、口が裂けても言えない。 自ら動きようがない中で、守光が連絡をくれたことに身構えつつも、正直和彦は安堵していた。 シートから身を乗り出して、ウィンドーに顔を近づける。道路の傍らを川が流れており、陽射しを反射してキラキラと輝いていた。しかし和彦が何より目を奪われたのは、川の向こうに広がる景色だった。 山の傾斜を利用して芝桜が植えられているのだ。まだ盛りを過ぎていないらしく、白や濃いピンクの花が満開となっており、あまりの鮮やかさに思わずため
「――今、先生の周りにいる男の中で、平気で甘えられる立場にいるのは自分しかいないとわかってるんだ、あいつは。その立場に優越感を持っていて、堪能している。可愛い外見に騙されるなよ。なんといってもあいつは、俺の息子だ」「……念を押されなくてもわかっている」 いまさら意外でもないが、賢吾は、千尋をよく見て、把握していた。 少し外を出歩いてこようかと考えながら、窓を叩く雨を漫然と目で追っていた和彦だが、背後に気配を感じてハッとする。窓ガラスには、和彦のすぐ側に這い寄ってきた賢吾の姿が映っていた。まるで、獲物に忍び寄る獣の所作だ。
三田村の行動が嬉しかった。澤村と会った余韻のせいか、夕方までとはいえ、部屋で一人で過ごしたくなかったのだ。 久しぶりに友人と会えて嬉しかった反面、自分の現状が痛いほど肩にのしかかってきて、少し胸が苦しい。「……久しぶりに友人と会うと言って楽しそうにしていたのに、今は複雑な表情をしているな」 ふいに三田村に指摘され、和彦はシートに座り直す。露骨に顔に出したつもりはなかったが、三田村の目を誤魔化すことはできなかったようだ。「いい奴なんだ、ぼくが今さっきまで会っていた友人は。だからこそ、今の暮らしについて何も言えない
賢吾が目を細め、ひどく酷薄そうな表情となる。このとき和彦の心臓は、確実に賢吾の見えない手に鷲掴みにされていた。 「そうしてほしいか? そうなる覚悟で、三田村と寝たんだろ」 「……だったら、順番はぼくが先だ。先にあの男を手にかけたら、金輪際、ヤクザに手を貸してやらない」 賢吾の目の中で、大蛇がゾロリと身をしならせたような気がする。巨大な体で和彦をギリギリと締め上げてくるのも時間の問題かと思われた。 本当は、賢吾に向けてこんなことを言う恐怖に、身も心も凍りついていた。些細な衝撃で砕け散っても不思議ではないほどだ。 しかし賢吾は、和彦を
**** 別に、やましいことはしていないのだ。 誰に対してなのか、和彦は心の中で言い訳する。やましいことはしていないはずなのに、どうしてこう、悪いことをしているような妙な罪悪感を覚えるのか――。 ガラス張りのショールームをぐるりと見回した和彦は、落ち着かない気分で髪を掻き上げる。自意識過剰のつもりはないが、この店に着いたときから、誰かに見られているような気がして仕方ない。 原因はわかっている。和彦についている、長嶺組の護衛のせいだ。「――佐伯先生、どうかしましたか?」