로그인『先生のためなら、わたしはなんでもしますよ。なんといっても、命の恩人であり、わたしと中嶋の仲を取り持ってくれた人でもありますから』
「仲を取り持ったというより、ダシに使われたんじゃないのか、ぼくは」 秦から返ってきたのは、意味ありげな笑い声だった。だがそれもわずかな間で、すぐにまじめな声が告げた。『せっかくですから、夕食を一緒にどうですか。わたしが今いる店の近くに、美味い寿司屋があるんです。ごちそうしますよ』「これから、すぐ行く……」 さっそく和彦は行き先の変更を組員に頼み、向かってもらう。 三十分後に、ある雑居ビルの前に到着すると、黒のロングコートを羽織った秦がすでに待っていた。すでに日が落ち、代わって周囲を照らす繁華街の明かりは、秦を舞台に立つ役者のように引き立てている。本人も、他人からどう見られているかよくわかっているのだろう。 こちらの存在に気づいた秦が艶やかな笑みを浮かべる。長い足でガードレールを跨いだかと思うと、颯爽とした足取りで車に近づいてきた。いくら両目を覆われているとはいえ、守光でないことはすぐにわかった。 のしかかってくる重みや、がっしりとした腰つき。それに、燃えそうに熱い肌。何もかもが寸前まで繋がっていた守光とは違うのだ。 膝を掴まれ、ごつごつとしたてのひらや、強い指の感触を意識した瞬間、和彦は相手の腕を押し退けようとする。だが無情にも、その手はあっさりと押さえつけられた。「――あんたはただ、身を任せていればいい。ひどい目には遭わせない」 傍らからそう声をかけてきたのは守光だった。 自分の身に何が起きようとしているのか、動揺を上回る恐怖のため、和彦は問い返すこともできなかった。その間にも、のしかかってきた相手の腰が密着してくる。「ううっ」 蕩けたままひくつく内奥の入り口に、熱の塊が擦りつけられた。ぐちゅりと濡れた音を立てて押し広げられ、和彦がまず感じたのは圧迫感だった。そして鈍痛が。 露骨な感想だが、やはり守光とは違うと、繋がりつつある部分で知る。 ようやく喉を突いて出たのは苦痛の声だった。和彦は、押さえつけられていない手を振り上げ、相手の肩を殴りつける。しかし、分厚く逞しい感触は、やすやすと和彦の拳を跳ね返した。それどころか、手首を掴まれた。 ゆっくりと布団の上に押さえつけられ、覆い被さられる。見えない相手を見上げながら和彦は、食われる、と心の中で呟いた。 さらに内奥をこじ開けられながら、この日初めて唇を塞がれる。唇の隙間から苦痛の声を洩らしていたが、かまわず舌先が押し込まれ、歯を食いしばる間もなく口腔に侵入された。 太い舌が蠢きながら、口腔の粘膜を舐め回してくる。唾液を流し込まれた和彦は、苦しさに耐えられず喉を鳴らして受け入れていた。舌を搦め捕られ、引き出されて、きつく吸われる。軽く歯を立てられたときは、このまま噛み千切られるのではないかと、和彦は本気で恐れていた。 一方的に唇と舌を貪られながら、緩慢に腰を揺すられ、長大な欲望を内奥に埋め込まれていく。守光を受け入れ、蕩けるほど犯されたばかりだというのに、それでも痛みが押し寄せてくる。自分の体の中を、肉で埋め尽くされていく苦しさもあった。「何も考えず、力を抜いて受け入れれば
内奥から道具が引き抜かれ、代わって指が挿入される。解れ具合を確かめるように、すっかり発情した襞と粘膜を撫で回されたあと、守光が小声で何事か呟く。和彦に話しかけたようでもあり、独り言のようでもあったが、ふと感じた違和感は、砂糖菓子のように淡く溶けていた。 言われるまま和彦は仰向けとなり、両足を自ら広げて守光を迎え入れる。 内奥に押し入ってくる熱や、全身で感じる重みに、ようやく肉で繋がっているのだと実感する。明け透けではあるが、そうとしか表現できなかった。 一息に内奥深くまで刺し貫かれて、一度、二度と突き上げられる。和彦は体をくねらせながら、抱えられた両足を揺らす。反り返った欲望をてのひらに包み込まれ、穏やかな律動に合わせて扱かれると、悦びの声が溢れ出すのはあっという間だった。「気持ちいいかね、先生?」 耳元で守光に囁かれ、こくりと頷く。そのまま耳朶に唇が這わされ、舌で舐られたあと、じわりと歯が立てられる。甘い痛みに無反応ではいられず、道具によって広げられた内奥が淫らな蠕動を始めていた。 乱れる一方の和彦とは対照的に、守光はいつものように浴衣を脱いではいなかった。見なくとも、端然とした佇まいが容易に瞼の裏に浮かぶ。前を寛げただけの格好で思う様、和彦を犯しているのだ。「あんたは本当にいやらしい」 笑いを含んだ言葉に対して感じたのは羞恥ではなく、疼きだった。守光の欲望をきつく締め付けると、乱暴に内奥を突き上げられる。 守光が上体を起こし、片手が胸元に這わされる。今日に限って意図したように触れられなかった突起を、不意打ちのように抓り上げられた。一瞬走った痛みは、やはり甘さを伴っており、快感との区別がつかなくなる。 まるで何かを確認するように、守光の手が体中に這わされる。その最中、和彦はこの日初めて精を放ち、自らの下腹部を濡らしていた。「また漏らしたかね」 息を喘がせる和彦にそう声をかけた守光は、下腹部に触れたあと、和彦の唇に指先を這わせてくる。口腔に指が押し込まれて、独特の味と風味を舌の上に感じる。それが自分の精だとわかったとき、また体が反応していた。「……思った通りだ。よく締まっている
まるで絶頂に達したあとのように、一気に脱力する。とてつもない痴態を晒したのだが、頭の中が真っ白となり何も考えられない。両目を覆ったスカーフに無意識に手をかけようとして、守光に穏やかな口調で窘められた。「まだそのままで。……あんたは気にしなくていい。今から片付けをさせるから」 えっ、と思ったときには、守光が誰かに呼びかけるように声を上げ、数拍の間を置いて襖が開き、人が部屋に入ってきた気配がした。抑え気味の足音ではあるが、一人ではない。 あられもない自分の姿を見られると、半ば恐慌状態に陥りながら和彦は体を起こそうとして、肩に大きな手がかかる。「落ち着きなさい。あんたの体をきれいにして、布団を入れ替えるだけだ」 守光にそう声をかけられはしたものの、だからといってすぐに身構えを解けるはずもない。和彦は居たたまれなさに泣き出しそうになる。 濡れたタオルを腰に当てられ、体を捻って逃げようとしたが、抵抗はあっさり封じられる。「あの……、自分でやり、ます……」 震えを帯びた和彦の言葉に応じる声はない。 一体何人が部屋に入ってきたのか懸命に気配を探ろうとするが、下肢の汚れを他人に後始末してもらうという状況に意識はすぐに散漫となる。 そもそも、一階に人の気配はなかったはずなのに、いつの間にか部屋の外に待機されていたのだ。自分が鈍いのか、もしくは、息を潜めて身を隠していた男たちが手練れなのか。いまさらながら、守光の手回しのよさが和彦には不気味だ。 あらかた下肢を拭われると、前触れもなく背と両膝の裏に腕が回される。何事かと思ったときには、強い力で抱え上げられていた。 咄嗟にしがみついて感じたのは、相手の分厚く逞しい胸板の感触だ。その瞬間、強烈な雄の匂いを嗅ぎ取った。 ハッとして相手を見上げる。もちろん、両目は覆われたままなので顔を見ることはできない。それでも感じるものがあった。 抱え上げられていた時間はわずかで、すぐに和彦は布団の上に下ろされる。新しいシーツの感触を指先で確かめていると、入ってきたとき同様、抑え気味の足音が部屋を出て行
賢吾によく似た太く艶のある声に囁かれ、和彦は返事ができなかった。それは、肯定したも同然だった。和彦自身に自覚はなかったが、そうなのかもしれないと、認めざるをえなかったのだ。 守光が一度布団を離れる気配がする。すぐに戻ってきたのは何かを取ってきただけらしく、物音が続いたあと、再び和彦に触れてきた。「あんたの〈ここ〉を苛めてみたくて、新しいおもちゃを前から準備しておいたんだ。なかなか使う機会がなかったが、ようやく――」 そんな言葉のあと、掴まれた和彦の欲望にひんやりとした液体が垂らされる。滑る感触から潤滑剤だとわかった。 先端をヌルヌルと撫でられ、異様な感覚にさすがに無反応ではいられない。和彦がわずかに腰を揺らしたとき、冷たい金属の感触が先端に触れた。「ひっ」 細く滑らかなものが、先端の小さな口を押し開くようにして、くっと押し込まれる。一気に腰が重くなったような感覚と鋭い痛みに襲われて、和彦は息を詰める。反射的に腰を動かしたくなったが、今の状況ではそれは危険だと理解できる程度には、まだ意識が保てていられた。 一度は賢吾に開かれた場所だ。どういう痛みがあるかは知っている。それでも、やはりつらかった。「うっ、うぅっ……」 おそらく金属製の細長い棒なのだろう。それがゆっくりと慎重に、欲望の先端から押し込まれてくる。痛みに喉が引き攣り、体が小刻みに震えてくる。「うあっ、あっ、い、や――」 自分でも驚くほど弱々しい声が出ていた。それでも挿入は少しずつだが続き、両目を覆われて不安なせいもあって和彦は片手を下肢に向けて伸ばす。すかさず優しく握り締められた。そこでゾッとするようなことを言われた。「思った通り、今のあんたの姿は大きな子供のようだ。とても嗜虐的なものを刺激される」 挿入された金属の棒を蠢かされ、むず痒いような感覚が生まれる。それはすぐに痛みを上回り、仰け反った和彦は布団の端を掴んでいた。 守光は時間をかけて、たった一度しか暴かれたことのない和彦の秘密の場所を犯していく。棒がどれほど深く挿入されたのか知る術はないが、強烈な感覚――快感にも似たものが腰から背筋へと何度も駆け抜け
守光は、浴衣に着替えてはいるものの、相変わらずの端然とした佇まいで待っていた。部屋に入った和彦を見るなり、頬を緩める。「髪がまだ濡れているな。慌てなくてもかまわないから、脱衣所で乾かしてくればいい」「……いえ」 入浴後すぐに部屋に来いと言われたわけではないのだが、ゆっくりと髪を乾かそうなどと思いつきもしなかった。 ふいに沈黙が訪れ、立ったままの和彦と、コタツに入ったままの守光との視線が交わる。柔らかな微笑を浮かべていた守光の表情が瞬きする間に変化した。 静かにコタツから出た守光が襖を開ける。奥は思ったとおり寝室となっており、すでに床が延べられていた。 振り返った守光に軽く手招きをされ、反射的に半歩だけ後退った和彦だが、自分がこの部屋に来た覚悟を思い出し、すぐに従う。 枕元には、見覚えのある文箱と折り畳まれたスカーフがあった。体を強張らせた和彦の背後で襖が閉まり、手を取られて布団の傍らに立つ。穏やかな声音で守光に言われた。「服を脱いで見せてくれないか。先生」 いまさら裸を見られたところで、という気持ちはある。しかし、脱がされるのと、自ら脱ぐのとでは心構えはまったく違う。和彦はすがるように守光を見たが、意に介した様子もなく守光は畳に正座する。 さあ、とでも言うように見上げられ、ぐっと喉が詰まる。できませんとは、口が裂けても言えなかった。 和彦は機械的にトレーナーを脱ぎ捨ててから、数秒のためらいのあと、パンツと下着を一気に下ろす。このときすでに、それでなくても熱くなっていた全身は、うっすらと汗ばんでいた。 脱いだものを畳もうとして、手首を掴まれる。引っ張られるまま膝をつくと、守光に顔を覗き込まれた。「そのままで」 そう言って守光がスカーフを取り上げる。薄い布をどう使うか、もちろん和彦は知っている。今の守光との関係では、もう必要としていない小道具であることも。 今晩は、いつもと何かが違う――。 本能的な怯えから、ざわりと肌が粟立った。頬にスカーフの滑らかな感触が触れ、和彦は顔を背けようとしたが、かまわず両目を覆われ、きつく後頭部で結ばれた。
そうだ、と守光が大きく頷く。「賢吾の将来を見据えるとき、同時に千尋の将来も考えなければならない。あれにはもっと経験を積ませ、知恵をつけさせ、自分の力で人望も得なければならない。賢吾がやってきたように。権力の移譲とは驕った言い方かもしれんが、わしからうまく賢吾に引き継げられれば、あとは千尋へと続くはずだ。そうやってあれこれ考えると、どうしても突きつけられる現実がある。何かわかるかね?」 口に出すのははばかられ、和彦は控えめに守光を見つめ返す。守光は、笑みを深くした。「優しいな、先生。今、わしに気をつかってくれたんだろう」「優しいなんて……」「――時間が足りない。正確には、わしの時間が。息子や孫のことを思い、総和会会長の地位に恋々とした感情を抱くが、一方で、耄碌したわしは、かつてわしがそうしたように、誰かに追い落とされるだろうとも思う。そういう惨めな姿は、身内の者に見せたくはない。自分の引き際は自分で決める」 一度唇を引き結んだ守光は、思い出したようにお茶を啜る。「そういうことをずっと考えていたわしにとって、あんたとの出会いは僥倖としか言いようがない。あんたもまた、わしの〈運命〉となるんだと確信している」「……ぼくを、どうしたいのですか?」「ただ、長嶺の男の側にいて、よく尽くし、よく支え、よく愛してほしい。あんたは喜んで、わしらの血を受け入れてくれるだろう。そうやって互いに生かし合う」 この言葉を聞くのは二度目だった。最初に守光から言われたとき、和彦は惑乱の中にあって真意を問うことはできなかったが、ただその重みだけは感じることができた。「不安がらずともいい。あんたならできる。これまでわしらから逃れる機会は幾度もあった。きつい選択もさせた。それでもあんたはここにいる。ただ強い力に身を委ねてきただけだと言うかもしれんが、そうできるのもまた、あんたの強さだ」 底知れぬ力を持った化け物に、拒否権のない選択を迫られていると思った。守光が和彦に突き付けてくるのは常にそういったものであったが、今は、秘密を共有し合っているような後ろ暗さも伴っている。 守