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第33話(27)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-06-05 11:00:41

「あんたの、いかにも清潔そうなきれいなうなじは、こうして日焼けすると、色気が増すな。そう思っているのは、俺だけじゃないだろ。鬱血の跡が残っている。昨夜誰かが吸い付いたんだな」

 そんなことを言いながら、うなじをベロリと舐め上げられる。さらに首筋にも唇が這わされ、耳朶に軽く歯が立てられていた。足元がふらつき、堪らず和彦は窓に手を突く。

「髪はもう少し短くして、しっかりと耳を出したらどうだ。着物がもっと映える。あんたが自分で思っているより、あんたは着物が似合う。もっと着てほしい。色男がきちんとした格好をしているのは、見ていて気持ちいいしな」

 勝手なことを言う男の片手が、ポロシャツの上から和彦の体を撫で回してくる。昨夜、三人もの男たちに愛された体はまだ脆いままで、容易に肌がざわつく。ただ、この男は違うと、けたたましい警告音が頭の中で鳴り響くのだ。

「やめてください、南郷さんっ……」

 ようやく和彦が声を発すると、耳元で笑った気配がした。

「ヤりすぎて、ふらふらになっているあんたは、目の毒だ。今朝、
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  • 血と束縛と   第33話(27)

    「あんたの、いかにも清潔そうなきれいなうなじは、こうして日焼けすると、色気が増すな。そう思っているのは、俺だけじゃないだろ。鬱血の跡が残っている。昨夜誰かが吸い付いたんだな」 そんなことを言いながら、うなじをベロリと舐め上げられる。さらに首筋にも唇が這わされ、耳朶に軽く歯が立てられていた。足元がふらつき、堪らず和彦は窓に手を突く。「髪はもう少し短くして、しっかりと耳を出したらどうだ。着物がもっと映える。あんたが自分で思っているより、あんたは着物が似合う。もっと着てほしい。色男がきちんとした格好をしているのは、見ていて気持ちいいしな」 勝手なことを言う男の片手が、ポロシャツの上から和彦の体を撫で回してくる。昨夜、三人もの男たちに愛された体はまだ脆いままで、容易に肌がざわつく。ただ、この男は違うと、けたたましい警告音が頭の中で鳴り響くのだ。「やめてください、南郷さんっ……」 ようやく和彦が声を発すると、耳元で笑った気配がした。「ヤりすぎて、ふらふらになっているあんたは、目の毒だ。今朝、宿を出て行った長嶺の男たちは、対照的に精力が漲って、溌剌としていたがな。あんたを抱くと、何かしらありがたい効能があるのかもな」「……バカバカしい……」 吐き捨てるように応じて、南郷の腕の中から抜け出そうとしたが、それを許すほど甘い男ではない。肩を掴まれて体の向きを変えられていた。威圧的に南郷に迫られて後ずさろうとしたが、背に窓ガラスが触れる。 和彦の弱々しい抵抗を嘲笑うように、南郷は無遠慮な手つきでポロシャツの裾をたくし上げ、脇腹を撫で上げてくる。不快さばかりを訴える感触に、和彦は懸命に南郷を睨みつけるが、歯を剥き出すようにして笑いかけられ、反射的に目を逸らす。南郷の笑みは、まさに威嚇だった。 大きなてのひらが思わせぶりな動きで這い上がり、胸元をまさぐってくる。首筋に唇が押し当てられ、柔らかく歯が立てられたとき、和彦の足元から完全に力が抜けて崩れ込みそうになったが、逞しい片腕に支えられる。「い、やだ……」 南郷の顔が眼前に迫り、拒絶

  • 血と束縛と   第33話(26)

    **** 和彦がようやく目を覚ましたのは、午前十時を少し過ぎた頃だった。 全身の力を奪い取られたようなひどい脱力感と腰に残る疼痛に、昨夜の出来事が本当にわが身に起こったのだと実感し、しばし呆然としてしまう。 空恐ろしさと不安、強い羞恥といった感情にたっぷり苛まれていたが、いつまでも布団の中にいるわけにもいかず、苦労して布団から出て、なんとか着替えを済ませる。このとき気づいたが、誰かが丁寧に後始末をしてくれたらしく、行為のあと特有の肌に残る不快さはまったくなかった。それでも体の奥には、まだしっかりと、長嶺の男たちの残滓が感じられる。 守光に言われた言葉を思い返し、なぜだか胸の奥が疼いた。そんな自分の反応に、和彦は戸惑う。まるで、あの行為を喜んでいるようだと思ったからだ。 しかし、今はあれこれ考えるには、気力も体力もあまりに足りない。 深くため息をついてから、覚悟を決めて襖を開ける。隣の部屋を覗いてみたが、そこには誰の姿もなかった。 座卓に歩み寄ると、メモ用紙が置いてあり、そこに千尋の字で、賢吾とともに挨拶回りに行ってくると書かれていた。『ゆっくり休んで』という一言も添えられており、和彦としては苦笑を洩らすしかない。 ふらつく足取りで窓に歩み寄り、外の景色を眺める。 強い陽射しが降り注ぐ砂浜に人の姿はなく、海は穏やかだ。一昨日、海で泳いで楽しんだばかりだというのに、もう遠い日の出来事のように感じられる。一足先に、自分の中で夏が終わってしまったかのようだ。 ぼんやりしていた和彦だが、微かに携帯電話の着信音が聞こえて我に返る。自分の携帯電話だと気づき、反射的に室内を見回してから、慌てて隣の寝室に戻る。電話の相手は中嶋だった。『もしかして、まだお休みでしたか?』「いや、起きたところだ」『それはよかった。実は長嶺組長から、先生のお世話を頼まれたんです。本来なら三田村さんの役目なんでしょうけど、長嶺組長たちと一緒に出られたので、それで俺に』 内心、中嶋でよかったと安堵していた。ふらふらになっている自分の姿を、あまり三田村には晒したくなかったのだ。あらゆる痴態

  • 血と束縛と   第33話(25)

     欲望への愛撫に合わせて、ゆっくりと内奥を突かれる。「ふあっ……、あっ、あっ……ん、あぁっ――」 千尋にも賢吾にもない落ち着いた攻めに、和彦は静かに狂わされていく。自覚もないまま両足を大きく左右に開き、背をしならせるようにして、内奥深くで刻まれる守光の律動をよりしっかりと感じていた。「あんたはもう数えきれんほど、長嶺の男たちと交わり、精を受けてきた。こうして、じっくりと丹念に中にすり込まれていると、自分と長嶺の男たちと溶け合っているという感覚にならんかね」 守光の言葉に唆されたように、内奥を行き来する熱い欲望をきつく締め付ける。守光が抉るように内奥深くを突き上げてきた。「あんたのこの反応は、肯定と受け止めていいんだろう。――医者のあんたからすると、バカバカしいと嘲笑うかもしれんが、わしは、あんたが長嶺の血を受け入れてくれていると思っている。溢れるほどの精を受け入れ、情を受け入れ、子は成せんが、あんたは長嶺という家の繁栄のために欠かせない人間だ。宝だよ」 意識は朦朧としていても、守光がとんでもないことを言っているということはわかる。言葉が発せない代わりに和彦は必死に首を横に振るが、守光は薄い笑みを浮かべ、覆い被さってくる。唇を塞がれ、深い口づけを与えられていた。 内奥に深々と欲望を穿たれているうちに、肉の悦びの虜となる。浅ましく腰を揺らして、守光に応えていた。それを待っていたようにこう囁かれる。「この先もずっと、長嶺の男たちの側にいてくれ。よく尽くし、よく支え、よく愛してほしい。その見返りとして、わしらも、あんたに尽くし、支え、愛す。今晩のこれは、その契約を交わすためだ。決して裏切ることのない、裏切ることを許さない、血の契約だ」 守光の言葉は、恫喝だ。この状況で和彦が逆らえるはずもなく、否という返事を、長嶺の男たちは最初から聞き入れる気はない。 恐怖に押し潰されても不思議ではないのに、和彦の体は歓喜していた。頭上に伸ばした両手を、それぞれ賢吾と千尋に握り締められ、反射的に握り返してしまう。「ぼ、くは――、何も、できな……」「あんたは、あん

  • 血と束縛と   第33話(24)

     和彦は背を弓なりに反らして、意識が舞い上がるような感覚に襲われる。ほんのわずかな間だったのか、それとも何十秒も続いていたのか認識できなかったが、ふと息苦しさを感じて、大きく息を吸い込む。同時に、一気に体中の力が抜けた。「大丈夫か?」 そう問いかけてきた賢吾に、和彦は頷き返すこともできない。頭がふらつき、自分の体も支えられないのだ。見かねたように千尋が腕を伸ばしてきて、抱き寄せられる。賢吾との繋がりが解けた途端、内奥からドロリと二人分の精が溢れ出し、反射的に体を強張らせる。できることなら、こんな姿を見られたくないのに、長嶺の男たちは気にしないどころか、むしろ自分たちの成果として確認したがった。「嫌、だ……」 和彦は弱々しい声で訴えたが、当然のように聞き入れられない。今夜、できうる限りの淫らな行為に耽りたいという思いが、男たちにはあるようだ。 布団に仰向けで横たえられ、力をなくした両足を容赦なく賢吾に掴み上げられる。二人の男の欲望にこじ開けられ、擦り上げられた内奥は閉じることもかなわず、浅ましくひくついている。白濁とした精を垂らす一方で、組み紐で縛められた欲望は反り返ったまま、先端を透明なしずくで濡らしていた。和彦の淫奔さを雄弁に物語っている部分を、まるで視線で愛撫をするかのように、三人の男たちに凝視される。 快感で蕩けた頭でも、わずかながら羞恥を感じる思考力は残っていた。和彦はやめてくれるよう哀願していたが、当然のように無視された。「うあっ、あっ――……」 欲望に巻きつく組み紐をなぞるように、賢吾の舌先が卑猥に動く。欲望を舐めているようで、直に舌先が触れているわけではないもどかしい刺激に、和彦は腰を揺らす。呻き声を洩らすと、枕元に這い寄ってきた千尋が身を伏せ、和彦の唇をペロリと舐めてきた。 父子の舌が、同時に和彦の欲望と口腔を嬲り始める。快感による地獄だと思った。これまでも、賢吾と千尋と同時に交わったことはあるが、ここまで切迫した感覚には襲われなかった。今の和彦は、とにかく与えられる快感が怖い。抜け出せなくなりそうで。 和彦のすべてを貪り尽くす前に、ようやく賢吾と千尋が体を離す。このとき

  • 血と束縛と   第33話(23)

     淫らな蠕動を始めた内奥の感触を堪能するように、少しの間動きを止めていた千尋だが、ゆっくりと律動を再開する。背に重なる千尋の胸元から、激しい鼓動が伝わってくるようだった。もしかすると、内奥で動き回る欲望の脈動かもしれないが、和彦にはもう区別がつかない。自身の鼓動が、狂ったように鳴っているせいだ。 神聖な儀式に立ち合っているかのように、和彦と千尋が繋がってから、他の長嶺の男たちは口を開かなかった。いや、これは立派な儀式なのだ。和彦に、長嶺の男たち共有のオンナとしての、見えない刻印をつけるための。 自分はとっくに長嶺の男たちに所有されていると思っていたが、男たちにとって、和彦のその認識はまだ生ぬるかったようだ。「ううっ、あっ、はあっ、はあっ――……」 千尋の熱い欲望が、爆ぜる。もう何度も、千尋の精を内奥で受け止めてきたというのに、それでもやはり、この行為は特別な気がする。千尋の欲望を締め付けたまま、和彦は再び軽い絶頂状態に陥っていた。 余韻なく千尋が体を離したが、そのことを寂しいと感じる間もなく、喘ぐ内奥の入り口に逞しい感触が擦りつけられ、挿入される。衝撃に、声も出せなかった。 乱暴に背後から突き上げられ、逞しい欲望を根元まで捩じ込まれるが、たっぷり潤っている和彦の内奥は貪欲に呑み込み、淫らな襞と粘膜で包み、締め付ける。「――あれだけ美味そうに千尋のものを味わっていたのに、俺のことも欲しがってくれるのか、和彦」 笑いを含んだバリトンで意地悪な言葉を紡ぐのは、賢吾だった。しっかりと腰を掴まれたかと思うと、次の瞬間には、上体が浮き上がる。一体何が起こったのか、すぐには理解できなかった和彦だが、視線を上げると、正面に千尋がいた。傍らには守光が。「あっ」 繋がったまま賢吾の腰の上に座らされているのだと気づき、和彦は激しくうろたえる。腰を浮かせようとしたが、内奥深くまで賢吾の欲望に刺し貫かれていることを強く意識させられただけだった。「これ、嫌だ……」 和彦は弱々しく訴えたが、返事のつもりなのか賢吾が腰を揺すり、内奥を掻き回される。うなじに軽く噛みつかれて、全身が震えるほど感じて

  • 血と束縛と   第33話(22)

     長嶺の男たちの舌も指も、執拗に和彦の感じやすい部分をまさぐってくる。守光は、熱くなり始めている欲望の先端を繊細な指づかいで擦り、一方の賢吾は、左耳に唇を押し当てたあと、耳の穴に舌先を潜り込ませてきた。 三者三様の攻めに、男たちの愛撫に慣らされている和彦の体は、瞬く間に蕩けていく。そのため賢吾に、背後から抱えられるようにして膝を掴まれ両足を持ち上げられても、抵抗できなかった。 秘部と呼べる場所をすべて晒し、そこに守光と千尋の視線が注がれると、身を焼くような羞恥に息も止まりそうになる。「――昨日、触ってあげたばかりなのに、もうきつく窄まってる」 そう言って千尋が触れてきたのは、内奥の入り口だった。軽く擦られて、和彦は唇を噛む。「中身は淫奔だが、見た目は貞淑というのは、あんたの存在そのものだな」 これは、潤滑剤のチューブを手にした守光の言葉だ。 和彦のさらなる発情を促すように、内奥に潤滑剤を施される。襞と粘膜にたっぷりすり込まれながら、長い指を出し入れされる頃には、淫靡な湿った音が室内に響くようになる。それに、和彦の乱れた息遣いも。「うあっ、あっ、い、や――。あっ、ううっ……」 内側から官能を呼び起こされ、少し前までとりあえず貞淑さを保っていた部分は、もう真っ赤に熟し、喘ぐように綻んでいる。その様子を、守光は冷静に、千尋は食い入るように見つめていた。賢吾の表情を見ることはできないが、耳元に注ぎ込まれる息遣いは、さきほどより少し荒くなっていた。 内奥の浅い部分を特に念入りに擦られて、反り返った欲望の先端から透明なしずくを滴らせる。「蜜がこぼれ始めたな」 ぽつりと洩らした守光が内奥から指を引き抜く。続いて千尋が、新たに潤滑剤を指に取り、内奥に挿入してくる。和彦は呻き声を洩らしながら、意識しないまま指を締め付けていた。「先生の中、すごい締まってる。ねえ、気持ちいい?」 ゆっくりと円を描くように指を動かされて、和彦は腰を揺らす。千尋はもう一度潤滑剤をたっぷり指に取り、ヌルリと挿入してきた。ひんやりとした潤滑剤が、己の熱でじわじわと溶け出していく感覚がおぞましく、同時に異様な高ぶり

  • 血と束縛と   第15話(25)

     リビングのテーブルには、真っ赤なリボンが結ばれた箱が置いてあった。どうやら、クリスマスプレゼントらしい。 一度はテーブルの前を素通りして、コートとマフラーを置いてこようかとも思った和彦だが、コロンの残り香に搦め捕られたように足が止まり、結局、テーブルに引き返す。「……開けるのが怖いな」 じっと箱を見下ろしながら、ぼそりと呟く。 プレゼントの贈り主は、箱の上にしっかりとカードを残していた。『先生へ』という短い一言と、贈り主である男の名が記されている。 長嶺組組長という物騒すぎる肩書きを持ったサンタクロ

    last updateLast Updated : 2026-03-31
  • 血と束縛と   第14話(7)

     それでも今は、優しい錯覚に浸っていたい。 三田村に促され、サンドイッチを手に取る。和彦が眠っている間に、近くのファストフード店まで三田村が買いに行ってくれたものだ。具がたっぷりの大きなサンドイッチとスープは、和彦の普段の朝食としては十分すぎる量だ。「昼まで一緒にいられるんだろ?」 サンドイッチを頬張る合間に問いかけると、和彦を安心させるように三田村は目元を和らげる。「ああ。もうそんなに時間はないが、先生の行きたいところがあればつき合う」「別に今日、どうしても行きたいってところは……ないな。あんたこそ

    last updateLast Updated : 2026-03-30
  • 血と束縛と   第14話(29)

    「そのつもりだったが、元気そうだな。少し痩せたようには見えるが」「食欲は戻った。それに……安定剤を飲んででも、眠るようにしているしな」 鷹津から探るような眼差しを向けられ、和彦は逃げるようにキッチンに向かう。和彦に何があったのか、明らかに鷹津は知りたがっていた。 和彦の身近にいる男たちは、必要があれば情報を共有する。その中で、今回は鷹津がつま弾きにされたらしい。ここでいい気味だと思えないのは、自分自身のことだからだ。 二人分のコーヒーを淹れながら、仕方なく端的に事情を説明する。賢吾なら、先生は甘いなと、薄い笑みを

    last updateLast Updated : 2026-03-30
  • 血と束縛と   第14話(39)

    「呆れた。そんなことまで調べたのか」「大事なオンナのことは、なんでも知りたい性質なんだ」 そう言いながら賢吾の手が柔らかな膨らみにかかり、残酷なほど優しい手つきで揉みしだかれる。たまらず甲高い嬌声を上げた和彦は、両足を開いたまま仰け反る。腰が震えるほどの強烈な快感だった。「捜さないでくれと先生が言い張ったら、佐伯家は引き下がると思うか?」「あの家の人間は……、ぼくの意見になんて耳を貸さない。ぼくを、好きに扱える人形ぐらいに、思っている……」「憎まれ口を叩くくせに、いやらしく

    last updateLast Updated : 2026-03-30
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