Masuk「ヤクザの言うことは、頭から疑うことにしている。そのぼくが、あんたを一目見て感じたんだ。嫌な奴だと。実際、ヤクザより嫌な奴だ……」
「口には気をつけろよ。このまま警察署に連行してやってもいいんだぞ」「……なんの罪で?」 ここで鷹津はニヤリと笑った。「お茶をご馳走してやるためだ」 ちょうど信号待ちで車が停まる。迷わず和彦はバックルに手をかけようとしたが、鷹津に手首を掴まれて止められた。和彦は一瞬怯えてしまい、目を見開いたまま粗野な男の顔を見つめる。鷹津は煙草を指に挟み、こちらに煙をふっと吹きかけてきた。「――俺は悪党で嫌な奴だろうが、少なくとも、お前からヤクザという疫病神を引き離すことはできる」 この瞬間、和彦の気持ちは大きく揺れた。救われたとすら思ったかもしれない。 すぐに我に返ったが、そんな和彦に鷹津は、口元には笑みを浮かべながら、しかし怖いほど鋭い眼差しを向けていた。車のライトで浮かび上がる鷹津の目は、冷たい光を湛えながら、ドロ** ひどい脱力感に苛まれながら和彦は、なんとか体の向きを変えると、隣に横たわっている玲を見る。 しなやかな手足を投げ出してはいるものの、和彦のようにぐったりしているというより、充足感に満ち満ちているという様子で、これが一回り以上の年齢差というものなのだろうなと、妙に納得させられる。 息も絶え絶えという状態からようやくわずかに回復し、和彦は口を開く。「夜が明けたら、夢は終わりだ。朝、ダイニングで顔を合わせても、何もなかったふりをするんだ」「――……佐伯さん、冷静ですね」 そう言って玲もごろりと寝返りを打ち、体の正面をこちらに向ける。胸元に散る愛撫の痕跡を目の当たりにして、まだ上気している頬がさらに熱くなる。自分がやったこととはいえ、大胆なことをしたものだと自省する。一方の玲は、和彦の体に残るものを見て、表情を和らげた。 体温が感じられるほど身を寄せ、和彦の肌に指先を這わせてくる。 まだ、夜が明けるには早い――。和彦は自分に言い聞かせながら、そっと玲の頭を引き寄せる。玲は素直に胸元に顔を埋めてきた。「君が着ていた浴衣、いつの間にか体の下に敷き込んでいて、汚してしまったんだ。朝のうちに洗濯するから、すまないが今夜は、Tシャツでも着て休んでくれ。……ああ、シーツも洗わないと」「体も拭かないと。とりあえず後で、俺が濡らしたタオルを持ってきます。俺より、佐伯さんのほうが大変だと思うし……」 玲の手が腰から背へと回され、さらに下へと移動する。好奇心の強い指が、熱を持って疼いている部分をまさぐってきた。簡単な後始末はしたものの、触れられると、玲が残した精が奥から滴り出てくる。 情欲の嵐が去り、和彦の気持ちは落ち着きを取り戻しているが、玲は違うようだ。何かの拍子にまた猛々しさを取り戻しそうな激しさを、肌に触れる息遣いや指先から感じる。「玲くん」 声をかけると、玲が顔を上げる。和彦は後ろ髪を撫でながら、優しく唇を重ねる。すぐに玲が口づけに応え、唇を吸い返してきた。激しく求めてこようとする玲を、和彦はなだめる。丹
末恐ろしい高校生だなと思いながら、ちらりと笑った和彦は玲の胸元に唇を押し当てる。舌先でくすぐり、柔らかく肌を吸い上げ、確認しながら小さな鬱血を残していく。 引き締まった腹部から胸元に舌を這わせてから、自分がされたように腕の内側に吸い付く。軽く歯を立てると、玲がビクリと身を震わせた。 切ない声で呼ばれ、口づけを交わす。腰を抱き寄せられ、擦りつけられたので、男を甘やかしたいという和彦の本能が疼く。舌を絡ませながら、手探りで玲の欲望を掴むと、精を溢れさせる内奥に呑み込んでいく。玲の息遣いが弾み、同時に、内奥深くまで受け入れた欲望が震えた。 体を繋げる快感を知ったばかりの玲を驚かせないよう、ゆっくりと腰を動かす。心地よさそうに玲が目を細め、掠れた声を上げた。 欲望を柔らかく締め付けながら和彦は、全身を使って玲を甘やかし、愛していく。玲は驚くほど柔軟に、貪欲に、快楽に馴染んでいく。もっと、もっとと欲していく。和彦の腰に両手をかけ、自らぎこちなく突き上げるようにして、律動を刻み始めていた。「あっ、あっ、い、ぃ……」 玲の眼差しが、律動に合わせて揺れる和彦の欲望へと向けられていた。反り返ったものは、先端から止めどなく透明なしずくを垂らしている。「佐伯さんがイクところ、見たいです。まだ一度も、イッてないですよね。俺ばかり気持ちよくなって、申し訳ないです」 玲の手が欲望にかかりそうになったが、和彦は柔らかく拒む。その代わり、自身のてのひらで包み込んだ。「んっ……」 欲望を扱き始めると、意識しないまま内奥を収縮させる。玲の欲望がゆっくりと膨らんでいくのを感じながら、そっと腰を上げ、すぐにまた下ろす。玲は、自分が何をやるべきか思い出したらしく、再び和彦の腰を掴んで、自ら動き始めた。 間欠的に喘ぎ声をこぼしていた和彦だが、激しさを増す玲の動きにバランスを保てなくなり、たまらず片手を布団に突く。「あうっ」 一際大きく下から突き上げられた拍子に、初めて絶頂を迎える。迸り出た精が、玲の腹部から胸元にかけて飛び散り、きれいな体を汚してしまったと思った途端、和彦は身を貫くような快美さ
背に玲が覆い被さってきて、ちろりと肌を舐められる。背後からきつく抱き締められながら、次にうなじに唇が押し当てられた。荒い息遣いが耳朶に触れ、和彦は甲高い声を上げる。 玲が夢中で腰を動かしているとわかる。内奥から欲望を出し入れされ、ぐちゅっ、ぐちゅっと淫靡な音を立てて濡れた粘膜が擦れ合い、その音が、一層欲情を煽り立てる。「んっ、んんっ、あっ、あっ、玲、く……」「その声も、いい――。んっ、また、出していいですか……? 出したい」 中に、と掠れた声で囁かれ、鳥肌が立った。 誘い込むように玲の欲望を締め付ける。内奥深くに、二度目の精を受け止めていた。 玲の額が背にぐりぐりと押し当てられ、和彦は息を喘がせながらも笑ってしまう。 玲は今度は、和彦の背に愛撫の痕跡を残し始める。肌にときおりチクリと走る小さな刺激だけではなく、微かに聞こえる濡れた音に鼓膜を刺激され、和彦は自分の両足の間にそっと片手を這わせる。まだ一度も絶頂を迎えてはいないが、中からの刺激に反応していないわけではなく、十分に熱くなり、反り返っていた。「はっ……ん、ふっ、は、あぁ――……」 玲の愛撫を受けながら、自らを慰めようとしたが、ふいに内奥から欲望が引き抜かれ、背から玲が退く。肩を掴まれて、なんとなく意図を察した和彦が仰向けとなると、勢いよくしがみつかれた。 汗で濡れた体をぴったりと重ね、擦りつけ合う。和彦は、いまだに力強さを漲らせている体をてのひらで愛撫する。しなかやな筋肉を覆う肌の感触も心地よかった。「こうしていると、よくわかる。本当に、きれいな体だ。……たまに考えるんだ。君たちぐらいのとき、ぼくはこんなふうに、圧倒されるぐらい眩しい存在だったんだろうか、って」「君たち?」 和彦は自分の失言に気づいたが、うろたえたりはしなかった。玲が知ろうと思えば、明日にでも耳に入ることだ。「ぼくをオンナにしている一人が、君とそう歳が違わない」「――……犬っころみたいな奴。昨
和彦の内奥は、侵入者を見境なく締め付ける。玲はまだ快感を味わえてはいないだろう。 玲が緩く腰を突き上げながら、少しずつ侵入を深くしていく。和彦は浅い呼吸を繰り返し、なるべく下腹部に力を入れないよう努める。内奥の圧迫感と異物感が増していき、馴染みのある感覚に安堵する。 何度か出し入れを繰り返し、内奥の肉を押し広げていく。玲なりに、和彦に苦痛を与えまいと努力しているのが伝わってきて、じわりと胸の奥が温かくなる。「んうっ」 切羽詰った声を上げたのは玲だった。内奥に欲望を根元まで埋め込むと、和彦の胸元に倒れ込んでくる。熱くなった体からはすでに汗が噴き出し、濡れている。 繋がっているせいもあり、玲の力強い鼓動がこちらにまで伝わってくるようだった。一回り以上も年下の青年の生命力をこんな形で感じて、繋がった部分が疼く。 しがみついてくる玲の背を何度も撫でながら、和彦は低く囁く。「もう少し待ってくれ。中が柔らかくなって、具合がよくなる」 顔を覗き込んできた玲が笑った。「――エロいな、あなた。すごく」 ここで唇を重ね、貪るように唇と舌を吸い合う。短い間に、玲の口づけはどんどん和彦好みのものへと変化していた。 差し出した舌先を擦りつけ合い、唾液を交わす。それから舌を絡め合いながら、和彦は腰を揺らす。内奥で息づく熱い欲望の存在を強く意識して、吐息を洩らしていた。玲がぎこちなく欲望を動かし、やはり吐息を洩らす。「本当だ。中、柔らかくなってきました。でも、締まってます」「痛くない?」 和彦は息を詰め、内奥を収縮させる。玲が呻き声を洩らし、欲望が小刻みに震えた。「気持ちいい……。すげー、いい。腰が溶けそうです」 玲が腰を揺すり、和彦は小さく喘ぐ。意外にがっしりしている腰に両腕を回して抱き寄せると、玲は呻き声を洩らす。 あっ、と和彦が声を洩らしたときには、玲は内奥で達していた。 ビクビクと震える欲望の蠢きに、和彦は快感にも似た愛しさを感じる。相手が誰であろうが、自分が快感を与えられたと強く実感できるこの瞬間は、好きだった。 ポタポタと汗
まったく経験したことのない触れられ方に、心臓の鼓動が速くなっていく。愛撫とはまったく違うからこそ、玲の手の動きを意識してしまう。 飽きることなく和彦の体をてのひらで撫で続けていた玲が、ふと思い出したように顔を寄せてくる。何を求めているのか即座に察した和彦は、玲の首の後ろに手をかけ、口づけを受け入れた。 唇を吸い合い、舌先を擦りつけ合ってから、互いの口腔をまさぐる。露骨に濡れた音を立てながら舌を絡め合うようになった頃、和彦は片手を玲の腰の辺りに這わせ、指先で探り当てた帯を解いた。玲が帯を抜き取り、浴衣を脱ぎ落とす。 すがりつくように玲が抱きついてきたので、和彦は両腕で受け止めながら、厳かな気持ちで熱く滑らかな肌にてのひらを這わせた。すると玲がまるで何かに急き立てられるように、もどかしげに下着を引き下ろしながら、腰を密着させてきた。「――……君、やっぱりおかしい」 今にも破裂しそうなほど高ぶった欲望を擦りつけられ、和彦は小声で洩らす。玲が笑ったような気配がしたが、表情を確かめることはできなかった。和彦の体を撫で回したあとで、新たな興味に移ったらしく、さっそく実行に移したのだ。 肩に強く吸い付いた玲が顔を上げる。どうやら、肌に跡が残るか確かめたらしい。 微かに濡れた音をさせながら、強弱をつけ、ときにはそっと歯を立てられて、肩だけではなく、腕の内側や胸元、脇腹へと吸い付かれる。最初はくすぐったさに声を堪えていた和彦だが、いつの間にか息が弾み、肌に触れる硬い歯の感触にゾクリとするような疼きを感じるようになっていた。 玲が、肌に残った鬱血の跡を満足げに眺める。「これ、キスマーク……、初めてつけました」「嬉しそうだな」 和彦は、玲の髪に手荒く指を差し込む。何かの儀式のようにまた口づけを求めてきたので、今度は玲の好きなようにさせる。口腔に入り込んできた舌に隈なく舐め回され、流し込まれる唾液を喉を鳴らして飲んでやると、興奮したように強く腰をすり寄せてきた。「……入れたい、です」 口づけの合間に、苦しげな声で玲が言う。一瞬、このまま続けていい
「……ぼくをオンナにしている人に、初めて抱かれたとき、部屋に、若武者の掛け軸がかかっていた。ぼくに似ていると言われたけど、自分ではまったくそんなふうに思えなかったんだ。ぼくとはあまりに違う。若く、凛々しいきれいな顔立ちをして。本当に君によく似ている。一目見て、惹かれた」「掛け軸の若武者に? それとも――」 ハッと我に返った和彦は、ここでやっと肝心なことを玲に尋ねる。「君はどうして、この部屋に……?」 それに、今の自分の格好だ。和彦は慌てて体を起こそうとしたが、玲の肩が手にかかり、動けない。玲は体重をかけないよう気遣いながらも、和彦の体の上にしっかりと馬乗りになっていた。「欲が出ました。父さんがしていたように、俺も――、オンナを抱きたいです」 大胆な告白に、今の状況も重なって、怒りを感じるべきなのかもしれないが、まず和彦は戸惑う。夕方交わした口づけで、自分が玲を煽ってしまったという自覚もあった。その自覚は、罪悪感とも呼べる。 これは、やはり年下である千尋と初めて口づけを交わし、体の関係を持ったときですら、抱かなかった感情だ。そもそも千尋との出会いは、あくまで後腐れのない享楽的なものから始まり、複雑な事情も、厄介な男たちの存在も、当時の和彦は一切関知していなかった。 今、体の上にいる青年は、個人としては普通の高校生かもしれないが、少なくともオンナの存在を把握している。それどころか、毒され、魅了されていると言ってもいい。 玲の父親である龍造は、どれほど〈オンナ〉を魅力的に語っていたのかと、内心で詰っていた。刺激が強すぎて、未成年に語っていい存在ではないはずなのだ。「……ダメ、だ……。それは、ダメだ。君は、これ以上ぼくに関わるべきじゃない。ぼくをオンナにしているのは、怖い男たちだ。君の父親の立場も考えたら、ぼくと君の手に負えない事態になる」「関係ないです。俺には、父さんの立場なんて。今、俺の目の前には、あなたしかいない」「子供のような屁理屈を言うなっ」 声を荒らげたところで、玲がその子供であることを思い出
「俺を潰したいからなんて理由で、こいつに近づくなよ。大事な大事な、俺たちのオンナだ。お前みたいな下衆が近づいていいような、安い人間じゃない」「蛇みたいな男が、薄ら寒くなるようなことを言うな。……お前は、弱みを晒すような男じゃねーだろ。それとも、弱みを隠し切れないほど、そいつに骨抜きにされたか? 俺を失望させるようなことを言うなよ、クズどもの親玉ともあろう男が」「しばらく辛酸を舐めたようだが、相変わらず口汚いな、鷹津。そんなんじゃ、誰にも好かれんだろ。それこそ、女だろうが、男だろうが――」 急に賢吾の腕が肩に回され、抱き寄せら
** 別れ際、玄関で秦に抱き締められてから、和彦は部屋をあとにした。 エレベーターの中で、もう二度と秦と会わないということはおそらく不可能だろうなと、ぼんやりと考える。秘密を共有してしまったということもあるが、秦との間に確かな結びつきができたことを実感していたのだ。 賢吾や千尋、三田村との間で生まれた結びつき――縁と、同種だ。肉欲と切っても切れない縁で、それはすぐに、情へと変化する。さすがに和彦も、それぐらいは学習していた。 複雑になった事態と人間関係を、自分はどうするつもりなのか、考えたくなかった。体も心も、秦から与え
「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく
「――先生」 呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」 泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」 賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する