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第12話:王都動乱と、最初の継承式

Author: fuu
last update Last Updated: 2025-07-11 12:00:56

「……エリシアは最近、“誰か”のことばかりだな。」

魔王領の旧兵舎跡。カイラムは一人、壊れた石柱に腰掛け、スープをすすっていた。

「料理?ユスティア。記録?リュシア。なんか忘れてないか……?俺のこと……。」

彼の背後で、リビアが気まずそうに翼をぱたつかせた。

「まぁ、その……閣下は“宰相”としても大忙しですし……。」

「俺だって宰相だし、魔王だったし、初期メンバーだし!ていうか、最初に木刀で吹っ飛ばされた被害者だし!」

「それは確かに……いや、ちょっと誇れる内容ではないのでは?」

「くそっ……!エリシアの奴、今頃“継承式”の準備とかで浮かれてるんだろうな……!」

そう、現在グランフォードでは“王家による正式な国家承認”の是非をかけて、“最初の継承式”を開催する準備が進められていた。

王都からの使者も到着し、“新たな王位継承者”としてエリシアの名前が取り沙汰されている。

◆◆◆

その頃、グランフォード本城・会議室。

「ねぇこれ、“王位”って言っても形式上だけよね?」

「今さら何を言うか。もう継承式の招待状、王都に送っちゃったぞ。」

「え、あの金ピカのやつ!?冗談のつもりだったのに!」

「……エリシア様、それ冗談で国政動かしてたんですね……。」

ユスティアがこめかみを押さえ、クレインが真顔でメモを取る中、ネフィラは厳しい声を上げた。

「でも気になるのは、王都の“沈黙”よ。」

「使者は来たのに、本家からの返事がないってこと?」

「うん。しかもさっき、王都の一部で“爆発”があったって報告が――。」

その瞬間、部屋が揺れた。

「ッ、まさか……!」

王都・第一外郭城門。

煙が立ち上り、兵が混乱する中、ひとりの青年が現れた。

白銀の鎧に、血のように赤いマント。手には古代魔導具。

「“真なる継承者”は、我が家系にあり。偽りの記録に支配された王家など――排す!」

「……また新キャラ来たぁあああ!?」

リビアの叫びと共に、混沌の渦が王都を飲み込もうとしていた。

一方その頃、ふてくされ魔王カイラム。

「……俺、なんかもう一人だけ別作品みたいになってない?」

その時、使者が一通の封書を差し出した。

「カイラム様、“正式な招待状”です。“継承式の主賓として”とのことです。」

「……は?」

「さらに、“エリシア様より:『あんたがいなきゃ国じゃないでしょ、バカ!』と添えられておりました。」

「……!」

カイラムの頬がわずかに赤くなり、スープを飲む手が止まった。

「……あいつ、まったく……」

けれど、口元は――少しだけ、笑っていた。

王都・第二城壁前。

「王都の一部で“記録改竄装置”が作動している模様!継承式の記録自体を消そうとしてるわ!」

ネフィラが魔導具を手に叫ぶ。

「やっぱり来たか、“記録操作派閥”……!」

エリシアはドレスのまま走りながら、頭に王冠を抱えていた。

「ドレスで戦場走るって、どんな式なのよ!?これ絶対記録されるやつ!!」

「むしろ記録から消されるのでは……。」

クレインの冷静な突っ込みをよそに、前方では白銀の青年――“自称・真の継承者”アルゼル=ノルドが待ち構えていた。

「偽りの王、偽りの血筋、そして――記憶を弄ぶ異端国家よ。」

「異端はそっちよ!!スチーム爆破装置とか魔法で起動してんじゃないわよ!」

「ふむ、ならば証明せよ。我が“記録の剣”と、“記憶の国”の矛盾を」

そう言ってアルゼルは剣を構えた。

「来るよ、みんな!」

「国家防衛、全員で!」

◆◆◆

剣と魔法が交差し、記憶の幻影が王都を満たしていく。

「お前の剣、過去ばかり見ている!」

ユスティアが攻め込むと、アルゼルが返す。

「記録なくして未来はない!」

「記憶なくして人は生きられない!」

カイラムが飛び入りし、火焔を巻き起こす。

「……ふん、やっぱり、放ってはおけないんだよ。」

「カイラム君!!」

エリシアが手を振りながら飛び込んできた。

「遅れてごめん!」

「今さら!……いや、むしろ今こそだ!」

カイラムの火とクレインの料理魔法が融合し、“記憶スープ砲”が敵陣を一掃する。

「なんだこの戦術!?」「うちの国家では割と平常運転です!」

◆◆◆

そして戦いの果て、アルゼルの剣が砕けた。

「記録が……私を支えていたのに……。」

「なら、新しい記録を書けばいいじゃない」

エリシアが、彼に王冠を差し出す。

「誰だって、やり直せるのよ。“過去に縛られた王”だって、“未来に選ばれる王”になれるんだから。」

アルゼルは黙ってうなずき、その場を去った。

その夜、王都にて。

ついに“最初の継承式”が挙行された。

エリシアは正装で王冠を掲げ、グランフォードの独立国家としての姿を、全王家貴族の前で宣言した。

「私たちは、“記録されなかった者たち”と共に、“新しい歴史”を記します!」

拍手と歓声の中、ユスティアが小さく呟く。

「……お前が継いだのは、血でも冠でもない。“選ぶ勇気”だったんだな。」

エリシアは笑った。

「そうよ。“恋するために建てた国”だもの!みんなが笑えるようにしたいじゃない?」

そしてその夜、カイラムがひとり、彼女に囁く。

「……次は、俺のことも見てろよ。王も宰相も、全部超えてやるからな。」

「ふふ、期待してるわよ――カイラム君。」

——〈次話〉“失われた大地と、二番目の恋”

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