第527話

玉巳はいつも通り、まるで何もなかったかのように悠良に挨拶した。

「悠良さん......」

悠良と葉はその声を聞いて、一瞬驚いた。

その甘ったるくて、わざとらしい声は彼女たちの周りには他にいない。

その声は彼女たちにとって、まさに悪夢そのものだ。

葉が悠良の服を引っ張り、小声で言った。

「どうする？無視して行こうか」

悠良は葉に軽く首を振った。

「大丈夫よ」

どうせ、もう史弥と玉巳とは完全に関係が壊れている。

玉巳が何かしようとすれば、今度は自分が黙っていないつもりだった。

二人は足を止め、玉巳が近づいてきた。

玉巳はすぐに葉が持っている買い物袋に目をつけた。

「葉さんもショッピングに来たのね。この買い物、高そう」

葉は特に気にせず、口を開いた。

「これは私のじゃなくて、悠良のよ」

「ご老人に買ったものかな。でも、悠良さんはもう小林家との縁を切ったって聞いたよ」

悠良は眉をひそめた。

悪いことは広く伝わると言うが、これでやっと実感した。

そして、玉巳はどうしてそのことを知っているのか。

以前、悠良は玉巳に対して冷静に答えていた。

仕事上、顔を合わせることが多いため、無理に衝突を避けていた。

しかし今、誰に対しても遠慮はしない。

悠良は冷ややかな視線で玉巳を見た。

「それが石川さんに何の関係が？」

玉巳はその言葉に驚いて固まった。

自分がこんなに無礼な対応をされるとは思っていなかったのだろう。

耳たぶが赤くなり、すぐに顔をうつむかせ、まるで自分が悪いことをしたように見えた。

「心配しているのに......そんなにきつく言わなくてもいいじゃない......」

悠良は再び玉巳に言い返した。

「石川さんは心配する資格があると思ってるの？厳しく言わせてもらうけど、もしあなたが史弥に余計なことをしていなければ、こんなことにならなかった。

心配するって言うけど、それはただの浮気相手の自慢でしょ？」

「浮気相手」この言葉は小さな声で言ったが、周りの人々にはしっかりと聞こえた。

玉巳は泣き虫だ。

涙はすぐに溢れ、目の周りが赤くなった。

まるで子供のように泣きながら史弥にしがみついた。

「史弥、悠良さんがどうしてそんなことを言うの？私、悪気はないのに......」

史弥は優しく彼女の肩を叩きながら言った。

「大丈