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第6話「平和は誰がために①」

Auteur: 4時間移動
last update Dernière mise à jour: 2025-11-11 17:54:15

湖より奥の森の中でバルガは悩んでいた。

香箱座りの前足を何度も何度も出し入れしてはいつまでも決断が出来ずにいた。

 娘の居所は怨塊目玉の報告により掴んだ。

確かに生きていた。与えた傷すらまるで無かったかの如くピンピンしていた。

 重度の火傷と凍傷。人間の治癒力で元通りに治る怪我ではない。

 我が主ヘドロスライム様は娘を生け捕りにして来いと命じられた。

 今度失敗すれば無事ですむはずがなく、恐らく命はない。

 主様のお考えは恐らく自らがスライムとして初の魔王となる事。

 だがいかに我が主様でも他の幹部と正面から戦って勝ち目は一分もない。主様自身そう話されていた。

 幹部たちの戦闘を一度だけ見たことがあるが、あの方々はそれぞれが魔王を名乗るに足る力を持っている。

 主様にはいかなる魔法も効かない。

 外見だけは可愛らしいスライムなので一時的に人間側につくことも考えられる。

 自分だけが何も知らず利用されている。

 この場合は、もはや逃げるしかない。

 そして逃げるタイミングは今しかない。

 事情を話して泣きついたところで保護して頂けるような、幹部はそんな甘い方々ではない。

 生き残る手段は他にないではないか。

 バルガは香箱座りからすくっと立ち上がり、裏返った声で呟いた。

「逃げよう」

 一行はミラを出て東へ向かっていた。

 故郷のアルメリアが襲われた夜、大勢の魔物たちが東へ飛んで行くのを見たと、ミラで聞いたからである。

「このまままっすぐ行っても海しかないぞ。回り道してブランドール城へ行こう」

 地図を見ていたカイが提案する。

 一行はブランドールに向かうことにした。

 途中に湖があり、一行は一休みする。

 セーラは水遊びを始めた。

 他の三人はそれを見て話をしている。

「セーラは本当に明るくなったわね」

「明るくっていうかあれじゃ天然だぞ」

「俺は別に問題ないと思うが」

「ところでセーラって天使様だと思う?」

「わからん。天界のものと言われる武具が装備できるか、人間には使えないような専用の呪文を使えるか、どちらも不明だ」

「でも攻撃魔法、回復魔法、それに斧が使えるぞ」

「それだけなら魔法戦士も同じだろう」

「相変わらずアレフは夢がないんだから。もしセーラが天使様なら、あたしたちも選ばれし者になるんじゃない?」

「それはともかく、セーラが天使かどうかは、我々が決めることではない。様子を見るしかないだろう」

「まあそうだな」

 三人はセーラを呼び、再びブランドールへ向かった。

 ブランドール城につくと、兵隊が訓練をしている姿が見えた。

 聞くと最近魔物の被害が多いため、付近の魔物を退治し平和を守っているということである。

 この世界では魔物に襲われることはそれほど珍しいことではない。

 実際兵士の中にも、家族が魔物に襲われた者が何人もいた。

 途中、セーラたちを見かけて老人が話しかけてきた。

「お主たちは旅の一行じゃな。この国には、魔王甦りしとき碧き珠を持つ天使が地に降り立つ、という言い伝えがあるのじゃ。最近各地で街が魔物に襲われたと聞く。魔王が甦ろうとしておるのかもしれんのう」

「ところでお主たちは天界の装備を手に入れなさったか? 四つの武具を手に入れると神様に会うことができるそうじゃ。神様なら魔王のこともなんとかしてくれるかもしれんぞ」

 城に入りブランドール王の下に行くと、王が二人いる。

 セーラが目をこすっていると、一人は逃げ出した。

 王が話しだす。

「今のはわしに化けたメタモル・モルモルじゃ。いつごろからかあやつらがこの城に入り込んで、今のようないたずらをするようになったのじゃ。これまでのところは人に危害は加えておらぬが、いつどうなるかわからんからのう」

 王はさらに続ける。

「真実の姿を映し出すと言われる梵天の鏡があれば、マネモルどもを元の姿に戻せるんじゃが。そこでそなたらを碧き珠を持つ勇者一行と見込んで頼みがある。近くの王家の塔にある梵天の鏡を取ってきて欲しいのじゃ。あの塔は今や魔物の巣となっていて、この城の兵隊たちでは歯がたたんでのう。塔にはカギがかかっておるが、これで開くじゃろう」

 と言うと王はピッキングキーを渡した。

 セーラはピッキングのスキルを手に入れた。

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